入職すると私は、特別養護老人ホームに配属されました。最初はやっぱり、仕事を覚えるのに必死でしたが、その頃私が感じていたのは、「オムツ交換などスピードが早い人が仕事がデキる人なんだな」ということでした。もっと早くできるようにならなきゃと、そういうことばかり考えていましたね。現場を早く回すためにどうするか、最初はそのことだけをやりがいにしていたような気がします。

でも、そうした考えもだんだんと変わっていきました。その一つのきっかけは、初めて人を看取った時に「これでいいんだろうか」と思ったことでした。その人が亡くなった時に私が感じたのは、「もっと自分がしてあげられたことがあったはず」ということ。本人が何をしたいとか、何かを食べたいと言っても、ただ「できない」で済ますのではなくて、難しいかも知れないけど、何かやってあげられたことが無かったのか考えられたはずだ、と思ったんです。

この経験から、介護の仕事は、何十年と歩んできたその方の人生の最期に寄り添う仕事なのではと思いました。あの時の私にもっと知識と技術があれば、もっと考えて、その人の希望を何らかの形で叶えられたかも知れない。私は、利用者の気持ちにもっと寄り添える介護ができるようになりたい、と思うようになっていきました。

ある時、職場の仲間から「おむつフィッター」という資格があることを聞きました。日頃から私は、利用者さんがおむつをしている時の尿意への対応について疑問に感じていたこともあったので、すぐにその講習会に参加してみました。するとそこで衝撃を受けました。

おむつ交換の基礎に当たる部分をそこで改めて学び直すと、びっくりするほどたくさんの気付きが得られたんです。そして「ああ、あの人が皮膚を損傷していたのは、もしかしたら私のせいだったのかも知れない」「私は今までひどいことをしてたのかも知れないな」と、反省しました。

それから私は、興味のある研修に出掛け、介護技術はもちろんですが、尊厳や倫理的なことも学びました。研修内容に食事の要素が出てくると、今度は食事についても学びたくなってきますし、興味は次々と繋がっていき、向学心は深まる一方でした。

介護の現場ってどうしても、排泄、食事など一つひとつの要素を「点」で見てしまいがちです。でもそれらを全部繋がった「線」で捉え、それをサービスに生かすことができたら、素晴らしい介護になるなと思いました。同時に、介護の楽しさ、奥深さを改めて再認識しました。この時には、研修で学んだことを現場に導入するのがやりがいで自分にも自信が湧いてきていました。