その会社は、「起業塾」のような立てつけで、起業家志望の大学生を15人ほど一軒家に住まわせ、訪問販売の仕事をさせていました。「掃除片付けは仕事と同じで、段取りを組み立てることが大事だ。段取りができないやつが仕事ができる訳がない」「便所掃除を続けられるやつが尊敬される」と言われて、入って最初の1ヵ月は、ひたすら便所掃除や片づけをさせられました。

また、真面目なことからくだらないことまで話せることが人格だと教えられました。「大学に行く必要はない。大学院生が学ぶことぐらい全部自分で学問しろ」といわれ、政治や経済、生物、アインシュタインから宗教、歴史まで、全部自分で調べて学びました。

また、毎日7時半に起きて30分掃除、10キロのランニング、その後夜まで営業先に訪問し、1時間の筋トレ、雑用や勉強で深夜1時半に寝るという日々でした。日によっては朝まで飲み会でしたね。一流を知ることが大事だと言われて100万円の金魚を育てたり、億ションに住まわされたり、限界を作るなと言われて真冬に滝に飛び込ませられたり、めちゃくちゃなことも多かったですね。

それでも、「社長になるにはこういう経験が必要なんだ」と素直に思っていたので、苦ではありませんでした。

ただ、人前で喋るのが苦手だったので、訪問営業の成績はさっぱりでした。社長から、おまえは社長に向かないから就職したほうがいいんちゃうかと言われるほどでした。

「サラリーマン=負け組」だと起業塾で刷り込まれていたので、就職なんてしたくない。でも、社長には逆らえない。どうせ就職活動をするなら色々な話を聞いてみようと気持ちを切り替え、様々な会社の話を聞きました。

いくつかの会社からは内定をもらいましたが、就職するか悩みました。大学生が終わる3月31日、社長に、「社長になれる合格ラインには行かないし、かといってサラリーマンになるのも微妙だけど、お前が好きな方を選べ」と言われました。

訪問販売で売れる自信はない。でも、そのままサラリーマンになるのは悔しい。結果を出せるまで続けたいと考え、「もうちょっと修業します」と答えて、内定を辞退しました。