誰でもできると言われても、乗り越えていきたい。
プロのライターとして、子育てと仕事の両立。

山梨県甲府市にて、子育てをしながらフリーライターとして働く高野さん。 社会人3年目で結婚・出産を機に、会社を退職。社会との繋がりがないことに焦りを感じてフリーランスを経てライターとして会社勤めに復帰。ライター業を通じて感じた、人の魅力や思いを伝えることのやりがい。フリーライターとしての独立を決めた背景とは?

高野 詩織

たかの しおり|フリーライター
山梨県甲府市を拠点にフリーライターとして活動する。

自分の好きなものを、自分の言葉で紹介したい


岐阜県瑞浪市に生まれました。小さい頃から要領が良くて、勉強は好きではなかったですが、試験で出る範囲を当てるのが得意で、成績は優良でした。唯一英語は苦手だったのですが、先生からの「勉強しようと思うからできないんだ」という言葉で、変わりました。洋楽を聴いたり、英文日記を書いたりということを始めてみて、興味を持てるようになりましたね。特に洋楽にはハマってしまい、歌詞の意味が知りたくてよく調べていました。

音楽が好きになり、高校時代にはライブハウスでお手伝いをすることもありました。親との約束で勉強を頑張ったこともあり、県内の進学校でしたが、成績はずっと上の方でした。

英語への興味もずっと変わらず、「英語が話せたらかっこいい」とか「『ハリーポッター』を原書で読みたい」と思い、大学受験では英語が学べる学部を受けて、山梨の都留文科大学英文学科に進学しました。

センター試験で失敗し、第一志望の学校ではなかったので、入学してすぐは受験の失敗を引きずっていましたが、友達と遊んでいるうちに、前向きになっていきました。アルバイトで貯めたお金で一人旅をしたり、国内のゲストハウスを回ったり、楽しく充実していましたね。

2年生のある時、アルバイト先のバーのオーナーから将来の夢を聞かれたことがありました。そんなこと初めて聞かれたので、焦りましたね。考えても何も浮かんでこない。たまたまカウンターにおいてあったリキュールに面白いキャッチコピーが書いてあるのを見て、「コピーライターになりたい」と答えました。元々、言葉や文章を書くことに関心があって、「自分が好きなものをこんな風に紹介できたらいいな」と思っていました。

オーナーから、『13歳のハローワーク』という本を紹介してもらい、コピーライターという職業に就くためには、広告代理店や制作会社に入るのが一般的だと知りました。広告代理店や制作会社は、就職しようにも面接で何もアピールするものがない。就職活動の面接の時に、何か学生時代にこれをやったという取り組みが欲しくて、たまたま見つけた交換留学プログラムに申し込みました。

なんとか選考を通過し、アメリカに留学しましたが、すぐのころは来たことを後悔していました。周りの参加者はみんな自分の夢を持って留学していて、「英語が話せるように」とか「就職活動のため」という人なんていませんでした。周りの学生への尊敬と焦りを感じながら、とにかく毎日勉強しましたが、周囲の優秀さに対して萎縮してしまって、辛く思う時もありましたね。

社会人3年目の結婚、出産、そして焦り


帰国後は就職活動を経て、広告・雑誌などの編集プロダクションに入社しました。アメリカでの経験から、伸び伸びと萎縮せずに自分のパフォーマンスが発揮できる環境で働きたいと思い、自由で明るい雰囲気の会社を選びました。ぼんやりとですが、若い社員が多く、独立する人も多いという点もプラスの要素でしたね。

編集プロダクションは、個性的で面白い人がたくさんいて、刺激的な環境でした。決められた服装はなく、自分より若い上司もいる、とても自由な会社でした。

一方で、仕事の内容には入社前とのギャップを感じました。広告記事の制作の仕事を担当していましたが、クライアントの意向や版元の制限などもあって自由に書くことはできません。入る前に想像していた、自由に創作するイメージとは、違いました。次第に、「ルールの中で工夫をして作っていこう」と楽しめるようになりましたが。

入社1年目は典型的なダメ社員でしたね。社内メールをクライアントに送ってしまったり、方向音痴で商談に遅れてしまったり。色々とダメダメでよく泣いていました。(笑)

それでも、2年目以降は、仕事の段取りが分かって、周りからの評価も変わっていきました。仕事の量をこなせるようになり、コミュニケーションの質も変わり、仕事を楽しんでいました。2年半ほど働いた後、結婚して子どもを授かり、会社を退職しました。

出産して、3ヶ月程経つ頃から、どこか焦りを感じるようになりました。3年目の仕事が楽しい時期に退職して、育児だけの状況になり、「このままでいいのか?」という感覚がありました。周りの仲間は、昇進の話も出てきたり仕事を楽しんでいるに思えました。大学に進学して、留学まで行かせてもらったのに、このままじゃまずい。そんな思いから、周りの方に協力をいただいて、フリーランスとして、空いた時間に制作の仕事をするようになりました。

一人でも選んでもらえるプロフェッショナルに


フリーランスとしてしばらく働き、子どもが2歳のときにフリーペーパーの制作会社で働き始めました。ずっと一人で働いていて、人との関わりが欲しかったことに加え、友人の活躍をSNS等で見て、会社勤めに戻りたいという思いもありました。子どもが生まれてから、子育てのために夫が働く山梨県に引っ越して、周りに知り合いがいなかったことも一つの理由でしたね。

久しぶりに会社で働き始めると、すぐに人との繋がりができました。フリーペーパーの取材で、地元で活躍する人にもお会いでき、非常にやりがいがありました。人の話を聞いて自分の言葉でその魅力を発信していく。自分がしたい仕事にとても近い内容でしたね。

ただ、環境という点では、苦労する部分もありました。役割を分担して働く組織だからこその悩みですが、「この時間にこの人がいなければいけない」という状況も起こります。パートという立場で発言や行動が制限されたり、何かあると「高野さんはお母さんだから」と言われたりすることに、もどかしさを感じていました。

「このままここにいていいのだろうか」とじっくり考え、自分の時間を全て自分でコントロールできるようにしようと、もう一度フリーランスとして働くことに決めました。子どもが生まれた直後と比べて、自分の中でフリーランスに対する考え方が変わった部分もありましたね。子どもが生まれた直後は、お小遣い稼ぎや、会社で働くほどの時間的な余裕は持てないけど社会とつながりを持ちたいという理由で、フリーランスで仕事をやりました。フリーランスを一度やった後に、再び組織で働いてみて、組織に属さなくても誰かに選んでもらえるプロフェッショナルとして、フリーランスで働きたいと感じました。

また、新卒の会社でやっていたディレクションに比べて、フリーペーパーの会社でやったライターの業務が自分にすんなりはまったことも大きかったですね。取材をして、自分の書いた記事が世の中に出て、記事を読んだ方から反響があったり、取材対象の方が喜んでくれる。「また、何かあったら高野さんに頼むね」と言われると、本当に嬉しい。人を対象にした取材やライティングにやりがいを見いだしました。

本当に自分1人でできることはあるのか、不安も抱えながらの挑戦でしたがフリーライターとして独立することに決めました。

誰でもできる時代に、自分だからできる仕事を


現在は、甲府を拠点にフリーライターとして活動しています。仕事を断らず、基本的にはどんな仕事でも受けること、一つ一つの仕事に時間をかけて丁寧に取り組むことをポリシーにしています。webメディアの記事やスポーツ誌、住宅誌、飲食店の制作物や書籍の編集業務など、仕事の幅は広いですが、「どこで誰が見ても恥ずかしくない文章にしたい」という思いは一貫して持っています。誰でも書ける文章ではなく、「この文章面白いな」と思ってもらえる。それがプロのライターだと思うので、その点にもこだわっています。

独立してすぐの頃は、不安も大きかったですね。周りから「業界を舐めている」と言われたこともありました。今は誰でも発信ができる時代、個人で仕事をしていく力があるのか、と。それでも、そういった時代だからこそ、「この人と仕事がしたい」と思ってもらえる人間になりたいと思うんです。取材される方も気づいていないような、魅力を上手く表現したい、伝えたい。ライターの仕事という枠にとらわれずに、自分の表現の力で、社会に伝えていくお手伝いができればと考えています。

「あなたがやっていることは、誰でもできる」と言われることもありますが、折れずに乗り越えていく覚悟を持って、仕事を続けていきます。まだ子どもが小さいので、時間は決して多くありません。でも、どちらかを諦めることはしたくないんです。ありがたいことに、私を指名して仕事を依頼してくださる方もいます。今はとにかくひとつひとつの仕事を丁寧に。「この人と仕事できてよかった」と思っていただけるようにしたいですね。

一つひとつは小さなことばかりかもしれません。でも、やることだらけ、やりたいことだらけです。目の前の仕事にしっかり向き合って、この先も少しずつ前に進んでいきたいです。

2016.01.20

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