孤独を感じない街をつくりたい。
LGBTの介護福祉士としてできること。

介護福祉士として働く傍ら、NPO団体の活動を通して、LGBTへの認識を広める活動を行う佐藤さん。自らがトランスジェンダーということで、大きな不安を抱えて生きてきた中で、 どのような背景で現在の活動を始めたのか、そして活動を通してどんな社会を目指すのか。お話を伺いました。

佐藤 悠祐

さとう ゆうすけ|介護福祉士・NPO団体Startline.net代表
介護福祉士として、老人ホームに勤務。Startline.netの代表を務め、LGBTの認識の普及や当事者の居場所づくりを行っている。

歳を重ねるにつれて大きくなった、性に対する悩み


幼い時から、身体的な性別と自分の認識している性別との間に違和感がありました。あまり記憶がなくて親から聞いた話ですが、スカートをはきたくなかったり、髪を伸ばしたり結んだりするということを嫌っていたらしいのです。

幼いころは、その違和感はあまり大きくなかったのですが、小学生の高学年から中学生にかけて、第二次性徴が始まると、自分の身体的な性別に対しての違和感は強くなり、自分に対しての嫌悪感が大きくなっていきました。

特に、中学生は、男性であること・女性であること、というものを強く意識させられる時期でした。たとえば体育の授業が男女別だったり、制服も女子はスカートをはかなければいけなかったり。そういう性別に対する一般的な認識に対しても嫌悪感がありました。

性同一性障害という言葉や、そういう人がいるという事実は、そのころ放送されていたドラマで知っていましたが、まさか自分は違うだろう、と思っていました。中学生の時期は携帯電話を持っていなかったこともあり、自分のように性別に違和感を持っている人のことについての情報があまりなかったので、性別による不安を感じ始めました。

そんな中で私の支えになってくれたものは音楽でした。小学生のころから姉の影響で吹奏楽を始め、中学高校と、吹奏楽部に入って部活に熱心に取り組んでいました。音楽に触れている時間だけが、性に対する不安を感じずにいられて、自分らしくいられる時間でした。

また、単純に家族が演奏に感動してくれたり、ほかの部員と一つの音楽を創ったりしていくことが楽しくて、部活に熱中しました。中学校では都大会で終わってしまい、部活の成績で姉に負けたことが悔しくて、高校進学も部活のレベルを考えて選びました。

高校でも部活に励んで、今度は全国大会に出場することができ、結果が得られたのでとても満足しました。とはいっても、性別による不安は解消されませんでした。高校生になって携帯電話を持つようになり、性同一性障害などについての情報などが得られるようになってからも、不安が肥大するばかりでした。ケータイで調べても、当事者たちが生きづらさを感じているネガティブなブログばかりで、他にもLGBTの人々に対する嫌悪のコメントも多くあったからです。高校3年生になって進路を考える中で、「自分は生きていけるのか」と自分の将来に対してとても大きな不安を抱いていました。

当事者の方の話を聞いて不安が晴れる


そんな時いつも通りケータイを使って当事者のブログを色々と見ていたら、今まで見た暗い印象のブログとは違って、とてもポジティブに生きていることが伝わるブログを書いている方を見つけました。その方は、身体的には女性だったのですが、衝撃的だったのは「今日彼女とデートしてきた」といった内容があったこと。また、乳房の切除や注射を行ったという内容もありました。

テレビで活躍するような人以外が、そういう生き方をしていることを知って驚いたのです。さっそくブログから連絡をとって、その方と直接お会いしてお話を伺うことができました。とてもポジティブに生きている様子やその人の生き方、またお知り合いの方の生き方を聞くことで、自分が今まで考えたこともなかった生き方を知ることができました。

そのお話をきっかけに、大きくなっていた不安がだいぶ晴れました。並行して福祉の道に進むことに進路を決めました。もともと福祉には興味がなかったのですが、母が補聴器をつけて生活をしなければならず、手話や点字に触れ合う機会が多かったことや、両親が共働きで、祖母が自分の世話をしてくれることが多かったこともあり、身体的障害を持つ人や、年配の方のお世話をできる介護について学ぼうかな、と思ったのです。

また、吹奏楽部の遠征などで親に金銭的に負担をかけてしまったので、大学ではなく福祉の専門学校を受験することに決めました。入学後は勉強や実習などで忙しい生活を送っていました。在学中に祖父が亡くなり、涙を流して悲しむ親を見て、介護士になる意思を固め、試験に合格して介護福祉士の資格を得ることができました。

介護福祉士として就職先を考えた時に、自分の中でテーマを持って働きたいな、と思いました。できるだけ利用者に寄り添って介護をしたいと考え、訪問介護ではなく老人ホームに勤めようと決めました。

また、祖父の死という経験がきっかけで、利用者の家族の介護への負担を減らして、純粋な気持ちで亡くなる方を送り出せるようにしてあげたいという考えもありました。そこで、老人ホームのなかでも入居者の方が亡くなるまでお世話をする「お看取り」まで行っているところへ就職することに決めました。

仕事をする中で感じた生きづらさ


就職後は、老人ホームで入居者様の食事や入浴の介助を行っています。実際仕事をやってみると、一般の人が持つ介護福祉士のイメージ通り、大変だと思うことが多かったです。

そんな風に仕事をする中で突然「自分が介護される側になったらどうしよう」と考えるようになりました。入浴や排せつ時の介助の時は、身体的な特徴があらわになります。もし性同一性障害である自分が介護された時に、介護する側もおどろくと思うし、介護される側としても恥ずかしいし、驚かれることに嫌な感じを抱いてしまうのではないか、と思ったのです。また、業務上、延命治療の同意など戸籍を扱う機会が多かったので、LGBTの人々が利用者側であったらどうなるのだろう、と思いました。

そんな中、ある日職場の人に「もし、自分のような性同一性障害の利用者様が来たらどうしますか」と聞きました。その人は「行う仕事は一緒だから、性別は気にしない。けどそう思えるのはあなたと同じ職場にいるからであって、他の職場の人は驚くと思う。」と言いました。私は、現在の福祉にはそういった意味での多様性がないのではないかと、感じるようになりました。

当時、LGBTの方をSNSなどで募って食事会を企画したりしていました。参加者の中には私と同じように福祉関係の仕事をしている方も多くいて、私が現在の福祉の課題について話したら共感してくれ、なにか認識の改善・向上につながる活動をしていこうということになりました。

そこで、任意団体としてStartline.netを結成し、代表を務めることにしました。

すべての人が居心地のいい福祉社会の実現へ


団体として現在は、講演会や交流会、ホームページからの問い合わせに応じた相談などを行っています。講演会では、私自身が福祉の多様性の不十分さを訴え、実際にあった相談内容をもとに具体的な事例の話をして、参加者の方のLGBTの方への認識が深まる活動を行います。交流会では、当事者の方々に居心地のいい場所を提供して、コミュニケーションの場とするための食事会などを開いています。

また、ホームページを通してLGBTとして不安や悩みを抱えた方々からの相談が寄せられるので、団体メンバーの当事者が相談に乗ったり、働き方で悩んでいるのであれば、私の仕事の関係で繋がっている福祉関係企業さんなどにも協力を仰いで、福祉関係の仕事を提案したりしています。

私自身、学生のころは性に関して悩みや不安、孤独感というものを感じていました。同じような生きづらさを感じている人がいるなら、力になりたいという思いが活動の根幹にあります。こういった活動を通して、まずは福祉業界から、LGBTに関する認識を広めていきたいと思っています。

任意団体ということもあって、学校での講演会など、実現し難いことも多くあったのですが、2015年の11月にNPO法人として認可を受けることができました。今後はより幅広い活動をしていくつもりです。

団体としての最終目標は、団体自体が運営する福祉施設や訪問事業所を設立することです。入居者の方がLGBTであっても、居心地のいいままいられるような、亡くなるまで過ごしたいと思えるような、また家族の方も介護の負担を感じずに純粋な気持ちでお見舞いに来たり、見送ったりできるような施設を立ち上げたいです。

ただ、私たちが東京に施設を作ったところで、現地の人しか利用できないですよね。全国の方が居心地よく施設を利用できるようになるためには、全国にLGBTに対する認識・配慮を十分持った方が働く入居施設がなければなりません。団体の活動をする中で福祉に関するLGBTの方への認識を広げていく活動をしていくつもりです。


インタビュー:倉沢 宏希

2016.01.18

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