個人がいきいきと活躍する社会へ。「レンタル移籍」で世に問う、自分の使命。

会社の出向制度を使って、人材を他社のプロジェクトに参加させる「企業間レンタル移籍プラットフォーム LoanDEAL」を運営する原田さん。写真家を目指した学生時代から一転、カメラマンとして入ったベンチャー企業でビジネスにのめり込み、上場も経験。そんな中、自らの伸びしろへの不安と、転職で得た、環境が人にもたらす大きさへの気づき。使命を感じて取り組む事業に込めた思いとは?

原田 未来

はらだ みらい|個人がいきいき活躍する社会を作る
会社の出向制度を使って、人材を他社のプロジェクトに参加させる、企業間レンタル移籍プラットフォーム「LoanDEAL(ローンディール)」を運営する、株式会社ローンディールの代表取締役を務める。

【2017年6月29日イベント登壇!】another life. Future Life Style 〜新しい時代の生き方〜 #3 「全く新しい環境に飛び込む」

将来は、写真家として生きていこう


千葉県市川市に生まれ、東京の中学を経て、大学付属の高校に進学しました。高校ではバレー部に入り、練習に打ち込んで過ごしました。残念ながら運動神経が悪くて万年補欠のくせに朝練は欠かさず参加して、声出しだけは一人前・・・みたいなキャラクターでした。

人と同じ選択をしたくないという変な抵抗感から、内部進学ではなく、他大を受験しようと考えました。選んだのは立教大学の文学部。校舎がかっこいいという単純な理由でした。

大学では史学科に所属し、比較文明学を学びました。映画監督が授業をしたり、ドヤ街でフィールドワークをしたり。感覚的なものが好きだったので、非常に面白かったですね。

大学2年生のとき、一人旅でオーストラリアへ行きました。パチンコで大勝ちをして、せっかくだから行ってみるか、というくらいのものでした。何をするか特に決めていたわけでもなく、オーストラリアの東海岸を転々としていました。

途中、たまたま立ち寄ったシドニーの現代美術館で、アンディ・ウォーホルという芸術家の回顧展が行われていました。衝撃を受けました。個別の作品というよりも、世界観に惹かれ、「こういう生き方ってあるんだ」ということが驚きでした。「自分がいいと思うものを発信して、生きることができるのか」と。

それからの道中、いろいろな街を転々としながら写真を撮りまくりました。帰国後に現像してみると、バイロンベイというオーストラリア最東端の町で撮った写真にものすごくハッとするものがありました。「これを多くの人に見てもらいたい」と思い、ポストカードを作り、表参道の同潤会アパート(※現在の表参道ヒルズの場所にあった古いアパートでギャラリーやショップが入っていた)前の路上で手売りを始めました。最初に自分の写真を広げる時はとにかくドキドキでした。お客さんに買ってもらい、お金をもらう。その経験がすごく嬉しくて、いつか、同潤会アパートの中にあるギャラリーで個展を開きたいと考えるようになりました。

学生時代はずっと写真が中心にあって、ニューヨークに行ってポストカードを販売したり、撮影旅行に行ったり・・・という活動をしていましたね。リクルートスーツを着るのが面倒で、「写真でやっていくからいいや」と思っていたので就職活動もしませんでした。大学卒業が近くなったころ、写真撮影のアルバイトとして見つけた、株式会社ラクーンという創業期のベンチャー企業で働き始めました。

人は誰しも輝ける場所がある


入社して3ヶ月くらい経って、周りの方から「こっちの仕事をやりなよ」と言われ、webの運営に携わるようになりました。写真の仕事ということしか考えていなかったので、「あれ?」と思いつつ、必要とされているのが嬉しかったです。荒削りなベンチャー企業で業務を作っていくことに楽しさを感じ、魅力的な上司との出会いもあり、正社員として働くことを決めました。写真は並行してやればいいと考えていました。

正社員になってからは、営業をしつつ商品の検品や出荷もするなど、とにかく目の前の仕事に奔走しました。出世欲はありませんでしたが、数字が立つことは嬉しかったですね。2004年に営業の責任者になり、2006年には営業部長として、東証マザーズへの上場も経験しました。とにかく仕事が忙しく、上場で東証の鐘を叩いた1時間後には、ゆっくりと上場祝いをする間もなく、商談をしているような具合でしたね。マネジメントの立場にありながら、部下の信頼を得られず、苦しい状況でもありました。

そんな私を支えてくれたのは、倉庫で検品や出荷をするアルバイトのスタッフたちでした。皆、音楽や写真などのプロとして活躍しながら、アルバイトをしていました。私自身、写真家を目指していたこともあって、すごく尊敬できる人がたくさんいました。彼らのライブを見に行って刺激を受け、俺も仕事で頑張ろう、と自分を奮い立たせる日々でした。

2007年、彼らの後押しもあって、写真展を開くことに決めました。場所は以前から思い入れの強かった表参道のギャラリー。会社の仲間や友人がたくさん見に来てくれたのですが、仕事でいつも揉めていた部下が見にきてくれて、ゲストが感想を書くノートに、彼が「感動した!」と書いてくれていたのを見た時は、本当に涙が出ました。

会社って面白いですよね。学生時代だったら付き合わなかったような人とも一緒に仕事をしなきゃいけない。でも、それが幅になったり、新しい発見があったりする。マネジメントの辛さを感じることもありましたが、だからこそ味わえる幸せな瞬間もたくさんあります。

そうやって多くの人と関わらせてもらって、少しずつ、一緒に働く人を尊重できるようになっていきました。そうしたら、一人ひとりの裏にあるストーリーが見えるようになった。みんながんばっていて、誰にだって輝ける場所があるんだということを強く思うようになりましたね。

転職を通じて、環境がもたらす影響を痛感


営業から、カスタマーサポートを経て、新規事業担当と、会社では良いポジションかつ高待遇で仕事をさせてもらっていましたが、自分の伸びしろへの不安は歳を重ねるごとに大きくなっていきました。振り切って何かに打ち込むイメージが湧かず、慢心もありました。周りの芸術家が独立して、人間的に分厚くなっていく姿を見てすごく焦りました。「この人たちに、人の厚みで勝てない」と思いましたね。

そんな時、たまたま友人に勧められてドラッガーの『プロフェッショナルの条件』を読みました。そこには・・・人材流動化はあたりまえになる。ただ、日本企業の良さは、その反対の終身雇用にある。流動化でスキルは上がるものの、コミュニティの絆が失われてはいけない。それを両立する必要がある・・・ということが書かれていました。変な話ですが、「これは自分に言われているのかな?」と感じました。同じ組織に所属しつづけていて、コミュニティとの絆を重視している。しかし、だからこそ自分自身のスキルの停滞も感じている。まさに、自分が感じている課題そのものでした。

自分の課題を考えていく中で、人材の流動化とコミュニティの絆を両立する手段として、サッカー選手のような「レンタル移籍」をビジネスにも持ち込めば良いのではないかと思いつきました。会社に所属しながら他の環境を経験できることで、両立ができるのではないか、と。

ただ、一社しか経験していない自分がその手法を提唱しても説得力がありません。家族がいるのに、気の迷いで起業という訳にもいかない。一度冷静になって決めようと考え、36歳の時に株式会社カカクコムへの転職を決めました。

人生で初めて転職をしてみて、企業と個人の関係において、文化や価値観・企業の成長フェーズといった部分の相性の重要さを痛感しました。カカクコムでは、O2O事業の開発に携わりましたが、自分のパフォーマンスに不満がありました。すごく視野は広がりましたが、前の会社と同じような価値を発揮できなかったと思います。「人のパフォーマンスは環境に依る部分があるんだな」ということに気づかされましたね。

身をもって体験してみて、レンタル移籍というアイデアで自分がやろうとしていたことは、価値がある、という想いが明確になりました。「40歳になる前に白黒つけないと」という気持ちも重なり、会社を退職し、2015年7月に株式会社ローンディールを立ち上げました。

個人がいきいきと活躍する社会に。やっと見つけた使命


現在は、企業間レンタル移籍プラットフォーム「LoanDEAL」をリリースし、新しい働き方の創出を目指しています。具体的には、会社の出向制度を使って、人材を他社のプロジェクトに参加させる仕組みを運営しています。出向先には、気鋭のベンチャー企業を中心に、いろいろな業界・職種を用意しています。

最初は恐怖感が大きく、会社を辞めなければ良かったと思うこともありました。でも、多くの方がこの事業に賛同してくれて、それを励みに突き進んでいます。1社目で新規事業を担当していた時は、「このメンバーで良い仕事がしたい」というのがモチベーションでした。事業自体に思いをぶつけるのは初めてで、大義や使命を見つけられたように感じます。イラストレーターにとっての筆、音楽家にとっての楽器を、やっと見つけられた気がするんです。食べていけるかはさておき、入り口に立てたのかな、と感じます。

芸術でも仕事でも、何かを本気でやっている人は魅力的で、キラキラしています。そういう人が周りにいたら楽しいし、そういう人を生み出す環境を作れたら最高ですね。この事業を通じて、個人が会社という舞台の上でいきいき活躍する社会を作りたいと思っています。人にはそれぞれのストーリーがあって、その人にしかない力や経験があります。その力や経験が企業や社会に還元されて循環する、そんな文化を作りたいと思っています。

2015.12.18

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