チャレンジできずにいる人への機会提供を。転職市場のルールを変える新規事業で目指す夢。

人を介した採用手法であるリファラル・リクルーティングを用いて、チャレンジできずに悩む転職潜在層への機会提供を行うサービスを立ち上げる鈴木さん。「何者かになりたい」と様々な分野で挑戦をした学生時代を経て、現状に悩みながらも行動を起こせずにいる仲間への課題感で人材系企業に。社内新規事業制度を利用して新たな挑戦に踏み切る背景にある思いとは?

鈴木 貴史

すずき たかふみ|リファラル・リクルーティング事業の運営
株式会社インテリジェンスにて、個人を介した採用方法であるリファラル・リクルーティングのサービス「MyRefer」の事業責任者を務める。

何者かになりたいという思いと器用貧乏への焦り


私は和歌山県和歌山市にある室町時代から続くお寺の家系に生まれました。600年以上続く寺ということもあり、他の家庭と比較するとルールに厳しい環境で、5歳から毎日1時間半は読み書きをして、テレビゲームは水曜日に1時間と決められていました。

一方で、家庭を離れた学校では自由を謳歌しており、何でも器用にこなせたため常に仲間の中心にいました。小学生から始めたサッカーでは初めて1年で市の選抜に選ばれ、高校から並行して始めたバンドでは、それまで文化部だけで行われていたライブに運動部から参加することで100人以上の方に来場してもらうことに。勉強も、好きではないものの、そつなくこなして成績は悪くない。根拠のない自信を持ちつつも、家庭で褒められることはほぼありませんでした。そんな影響もあってか漠然とではありますが、将来はルールに縛られず「人と違うことをしたい」「何者かになりたい」と考えていました

しかし、何か一つにコミットするという訳ではなく、これといった領域が定まらないない状況。高校を卒業後はなんとなくの流れで県外の国立大学に進学しました。大学では、部活に入ってそれしかできないことを恐れて、サークルやバイト・学生団体等を並行で掛け持ちし、様々な分野でチャレンジをすることに決めました。社会人サッカーに参加したり、音楽レーベルのヴォーカルのオーディションを受けたり、ニューヨークに語学留学をしたり、活動の幅を広げていき、いずれもそれなりの成果を残すことができました。

しかし、色々な領域に挑戦するも、自分が満足するフィールドが見つからず、将来の方向性を思い悩むようになりました。取り組んでいる大学の研究の意味も見出せず、徐々に出席しなくなり、ちょうどこのタイミングで留年が決定しました。何をやっても人並み以上にはできるものの、ただそれだけであり、何も生み出していない。「あれ、自分ってただの器用貧乏じゃないか」と感じてしまったんです。

周囲が抱える課題感から、インテリジェンスへ


そんな折に、自ら立ち上げた学生団体で経営者等のビジネスマンの方々にお話を伺うようになり、初めて社会と接点を持つようになりました。その中で、ビジネスという領域で自ら世の中に価値ある何か生み出したいと思い、同時に働くということに対して課題認識を持つようになりました。

ちょうど私自身が留学で1年遅れて就職活動の時期を迎えたということもあり、先に就職していた先輩や仲間から仕事の話を聞くことが多くありました。しかし、自分の想像していた社会人像とはかけ離れた、ネガティブな声を聴くことが多々あったんです。会社や仕事に不満を持ちながら何か行動を起こしているわけではない人が沢山いる、リアルな社会を知りました。特に、学生時代は尖っていた先輩が丸くなって「やりたいことだけはやってられない」・「仕事はつまらないものだ」と語ることに課題感を抱くようになりました。ネガティブで未来が無い会話をしていることに、「現状を変えたいと思うなら行動を起こせばいいのに」と思いつつも、終身雇用や年功序列という従来の日系企業の文化から、それが出来ない環境もあるのかもしれないと考えるようになっていきました。

そんな背景もあり、就職活動ではチャレンジを出来ずにいる人への機会提供ができる環境を志望し、人材業界等を見て回りました。そして、その中でベンチャースピリッツを持ちつつ、世の中を変えられるだけの体力がある会社、かつ若手に裁量を与えてもらえる環境を探し、最終的にはインテリジェンスに入社を決めました。サイバーエージェントの藤田社長を始め、多くの起業家を輩出しているということも興味の一つでした。社内には公募の新規事業制度もあったので、この制度を使って挑戦をしたいという思いもありましたね。

社会人1年目の苦悩


入社してからは法人向けに求人広告の営業を担当し、IT業界の中途採用に特化した営業を行いました。私はその中で自分が新人賞を穫ると宣言し、周りとは馴れ合わずに仕事に励もうと考えていました。先輩よりも自分の方ができるという自信もある尖った新人でした。

しかし、実際に仕事を進めていくといきなり大きな壁にぶちあたることに。今までやりたいことをやってきただけなので、ビジネスマナーもない。受注も出来なければ周りに仲間もできない、思わしい成果が出ず挫折を経験しました。

そんな背景もあり、再び自分への自信が揺らぐこともありました。まるで自分が学生の時に見ていた社会人の先輩や仲間のような状態でしたね。それでも、自分には公言しているビジョンがあったため、逃げられない状況におかれているのも事実でした。もう器用貧乏で終わりたくないと、生まれて初めて何か一つの領域にコミットするということをしました。

業務が終わり帰宅するまでの電車の中や、訪問活動の移動中も活用して振り返りをし、帰宅してからもPCに向かい提案書を再考する。どんな機会でも前のめりに手を挙げ、人の2倍多くの壁にぶち当たる。壁を経験で終わらせず、常に内省・持論化をすることで、人の2倍思考する。最速で成長のPDCAを回すことだけを常に意識していましたね。

すると、そんな取り組みが少しずつ成果に繋がっていきました。そして、1年目の終わりに、なんとか新人賞を受賞することができたんです。まず1つ目のマイルストーンを満たすことができたという達成感がありました。

歴代最年少で新規事業責任者へ


その後、2年目からは事業立ち上げの前に社外でも通用する圧倒的な営業力をつけたいという思いから、大手顧客を中心とした企画提案営業をすることになりました。新人賞は所詮、新人の中での比較。先輩含む他の全営業と比較してNo.1にならければ社外では通用しない、と言い聞かせていました。また、推進力はある一方で主観が強いという課題もあったため、自分と違う人材の多様性をリスペクトするという観点で、3年目からはマネジメントを経験させていただきました。これで事業を作るうえで重要な要素は経験できたと感じ、ついに3年目の後半から新規事業制度へのエントリーを決めたんです。

新規事業として起案したのは、「企業で選ぶ転職から人で選ぶ転職へ」というコンセプトの元、人との繋がりの中で転職が完結する「リファラル・リクルーティング」という分野のサービスでした。

元々、時代の流れとして個人が主体になっていることから、人材に関しても個人を介する方がより本質的なマッチングを生み出せるのではないかという思いに加え、自ら営業をしていて、自社採用力を強化するために社員を資産として活用したいという声を聞いていたんです。

また、何より、現状に不満を抱きながら環境を変えることに二の足を踏むような転職潜在層に、チャレンジのキッカケを提供したいという思いがありました。自分の仲間のように思い悩んでいる人に、既存の転職サービスは届かないかもしれないが、「知人・友人からの声かけ」なら届くのではないか、と。

社内の選考では役員の方々にボロボロに叩かれ、法制度の壁にぶつかることもありましたが、なんとか通過することができ、最年少での新規事業責任者として挑戦の機会を掴むことができました。

チャレンジをしたいけど出来ない人への機会提供を


現在は、自ら立案した新規事業「Myrefer」というサービスを2015年10月1日にリリースしました。日本の平均転職回数は1・2回で諸外国と比べても非常に少なく、課題はありながらも踏み出せない潜在層の方が多数いる状況です。しかし、既存のプロモーションではその訴求が出来ないため、信頼できる社員(知人・友人)の声かけによる転職手法としてのリファラル・リクルーティングのサービスを開発しています。

具体的には、サービスを導入した企業は、社員が友人の紹介を促進できる仕組み構築でき、社員を窓口に採用を行うことができます。転職を考えるユーザーから見ると、友人がいて社員紹介を行っている企業が閲覧でき、自ら友人を介して企業にコンタクトすることができます。

社内で実際にどのような人材が活躍するか、最もよく理解しているのは転職エージェントではなく、実際にそこで働く社員です。また、全く見当違いな人を推薦して自分の評価を下げたくないと思うことで採用の質を保つこともできます。この仕組みがあることで、企業はミスマッチのない採用が可能となります。また、転職者も入社前に社員の生の声を聞くことできるため、安心して意思決定を行うことができます。このような、社員のつながりを活かしたリファーラルリクルーティングを仕組み化し、促進することが「MyRefer」の提供価値です。

実際に新規事業を自らの責任で始めてみて、自らが実現したいことに対して営業のように進捗が見えにくいことや、自分が知見のない領域に対しても意思決定をしなければいけない機会が多く、大変さを感じています。 エンジニアの方々と仕事をする機会が増え、マーケティング、広報、財務経理といった領域まで携わらなければいけないため、新しい挑戦という感覚です。毎日が、事業の推進に関わる意思決定の連続なので責任がある一方でやりがいも感じています。

今後は、このサービスを通じて、チャレンジをしたいものの踏み出せていない人々に対して支援をしていきたいと考えています。自分たちが立ち上げた事業で市場に新たな概念を創る。転職をリスクではなく、前向きなチャレンジとして捉えられるような世界観を作りたいと考えています。

2015.10.26

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