壁のように人の幸せな環境を守れる人でいたい!三井物産からスタートアップへの挑戦。

【共同創業の選択特集】第ニ弾は、強い想いを持つ人を包括的に支援する、株式会社ボーンレックスの室岡さんです。人の幸せを守れる人間でいたいと志し、「壁」「戦隊物のヒーロー」「時代劇の将軍」「弁護士」「金融マン」「商社マン」と少しずつ目標を変えながら、なぜ今の事業にたどり着いたのか?お話を伺いました。

室岡 拓也

むろおか たくや|人の幸せを守る環境づくり
株式会社ボーンレックスの代表取締役を務める。

人の幸せを守れる人間になりたい


私は東京の目黒区で生まれ育ちました。小さい頃、『ネズミの嫁入り』という絵本を読み聞かせてもらうことがありました。ネズミの「チュー子」が結婚相手を探す年頃となり、「世界で一番強くて私を守ってくれる人」を探すお話でした。

幼いながらにその生き方に憧れ、絵本の中で2番目に強かった「壁」になりたいと本気で思っていました。「1番は壁に穴を開けられるネズミ」という絵本の結末には違和感があり、個人的な1番は壁だったんです。

成長するに連れ、将来の夢は「壁」から「戦隊物のヒーロー」に変わり、「時代劇の将軍」へと徐々に変化していき、少しずつ「人」に近づいていきました。ただ、根底にあるものは変わらずに、「人の幸せや、その人の考え方を守れる強い存在でいること」でした。

そして、小学5年生の時、テレビで集団訴訟の特集を見た時に、弱者を救済するために立ち上がった「弁護士」の姿に感銘を受けました。この時、将来は弁護士になると、ようやくこの世で本当になれる夢を見つけた瞬間でした。(笑)

将来弁護士になるため、中学生の時から刑法を読み始め、高校生になると東京大学進学専門の塾に通い始めました。「東大以外は大学ではない」とうのが口癖の塾で、私もその通りしっかり教育され、東大文一以外には行く気がありませんでした。

ただ、親から浪人は許さないと言われ、慶應義塾大学経済学部も受けることにしました。経済学部であれば、万一、第一志望に落ちた場合でも、「慶應経済では法律の勉強はできないから行かない」と反抗できると思ったのです。

ところが、東大には手が届きませんでした。もちろん、当初の計画通り親に反抗したのですが、本当に浪人はさせてもらえず、慶應経済に進学することになってしまいました。私はふてくされ、大学にはほとんど行かずに、資格学校で法律の勉強ばかりするようになりました。

変えられない過去を嘆くよりも、今この瞬間から未来に進みたい


そんな生活を送っていたので、2年生の終わりに留年が決まりました。まさか留年なんて信じられず、人生で一番落ち込んだ瞬間でした。留年に対して強いコンプレックスがあり、「自分の人生は終わったんだ」と思うほどでした。

誰とも話したくもないので、大学も資格学校も行かなくなりました。毎日ひたすら映画を借りてきては繰り返し観る生活。一方で、この先も、もし人生が続くとしたら、自分が一人の時間をひたすらすごし、家にいる時間がここまでも長い時期は今くらいだろうと思い、こんな生活でしかできないことをやろうとプログラミングを独学で始めました。

ただ、そんな生活も半年もすると、「何をやっているんだろう」と思うようになっていきました。これまでの「人のために生きる」ことが人生の軸だったので、人と関われないのは面白くなかったんです。考えれば考える程、過去の自分が、今の自分を蟻地獄に引きこんでいる気分でした。

でも、そんなある日、ふと「過去は変えることができない」という事実に気づきました。私たちは1秒ごとに未来を迎え、「今」が「過去」になり、「未来」が「今」になっている。だとしたら、もう変えることができない過去に悩まされるよりも、今、この瞬間から「自分で創れる」未来にエネルギーを注いだほうがいいのではないかと。

そんな風に少し前向きに考えられるようになったこともあり、久しぶりにジムに身体を動かしに行きました。すると、たまたま大学で所属していた柔道部の先輩に会い、練習に来るように誘ってもらえたんです。私はプライドが非常に高く、留年したことを知られたくないと、大学内外問わず、友人との連絡を全て絶っていました。しかし、この時「もうバレてるんだなぁ」と、あたり前のことに気づき、突然気持ちが晴れるのを感じました。暗黒時代に終止符を打った瞬間でした。

幸せを積極的に作り出せる「経済」という世界への転向


しかし、半年のブランクは大きく、目標としていた大学3年次の司法試験は不合格でした。次の年の試験を目指したり、法科大学院を目指す道もありました。ただ、司法試験制度の変わり目だったことや、大学の友達は就職活動をしていたので、就職にも興味を持ち始めていました。

また、大学では金融・マクロ・計量経済のゼミに所属していて、人の幸せを守ることは「法律」だけでなく、「経済」でも実現できると考え始めていました。法律は弱者救済、害悪除去を行い、どちらかというと最低限の水準を守るもの。一方で、経済とは、思い描いたものを実現することで、主体的に幸せを「作りだす」活動だと思うようになっていました。さらに、自分をよく知る人からの後押しもあり、就職活動をしようと決心できました。

その頃、一番「幸せ」を生み出せる仕事は何か真剣に考えました。そして、それは、一番「お金」を動かせる仕事だと考えつきました。一般的に、100円の商品よりも、1万円の商品の方が、それを得た時感じられる幸せは大きいはずです。人は、その金額を支払ったことで得られる幸せの価値と、その金額そのものの価値を比較し、常に大きい価値を選択しようとします。

そうであれば、個人で一番大きなお金を動かせる仕事をすることが、そのお金以上の幸せを動かすことだと考え、外資系証券会社のマーケット部門を当初志望しました。無事内定をもらえ、そこに就職するつもりでしたが、結局、就活を終えた時、自分が就職を決めたのは、三井物産でした。

三井物産の面接では、いつものように、「人の幸せを作るというのは、お金を動かすことだ」という話をしました。すると「じゃあ、インフラの価値についてどう思うか考えてみて?」と言われたんです。電気代を毎月1万円払うとした時、電気から得られている価値は1万円だけなのか?と。電気のおかげで派生して得られている恩恵は大きく、1万円以上の幸せを得ていることは明らかでした。そして、そんな「無限大」の価値を生み続けるものを作るのが商社の仕事だと言われたんです。

就職活動を始めてから3ヵ月、OB訪問は120人以上行い、選考も合わせるとそれ以上の社会人と話してきました。しかし、「幸せの価値の測り方」に関して、「なるほど」と思える考え方を示してくれたのは、正直その人の話だけでした。自分とは明らかに目線、土俵が違うと。

こうして、将来的に無限大の幸せを生み出せるインフラの仕事をしたいと考え、三井物産に就職することを決めたのです。

挑戦する人が踏み出すための包括的なサポートを


入社後は、幸いなことに希望通りの部署に配属となり、発電プロジェクトに携われることになりました。人々の生活を支える仕事ができていることに、やりがいを感じていましたね。ただ、電力は無意識的に使うものなので、「電気を使えて本当にありがとう」と言われるものではありません。そのため、幸せを作り出し、守れている実感はあるものの、対象の人の笑顔を直接見られないことには、モヤモヤする気持ちもありました。

一方で、大学生の頃から「夢を語り合う会」を開催していました。そちらは直接人の人生観が現れる瞬間や、時に人の価値観が大きく変わる瞬間に立ち会えるので、自分がそこにいる価値を明確に感じることができました。

ただ、いくら夢を語っても実行しない人が多くいました。その理由を考えると、お金の問題が大きいと分かってきました。そこで、社会人2年目になった年に、「不動産投資」「フランチャイズ」「スモールビジネスでの起業」の3つを軸にお金というものを考え、運用の仕方を学びながら事業計画を作る勉強会を開くことにしました。

すると、徐々に、不動産を購入する人や、フランチャイズへの実践的な検討を開始する人、また、起業する人が出てきました。しかし、特に起業のテーマでは、どこかで大きな壁にぶつかり、なかなか実行に至るには難しいと感じていることが伝わってきました。結局、一番のハードルになっているお金を、直接集める仕組みが必要だったんです。そこで、想いに共感してお金を集める「クラウドファンディング」の仕組みを事業として立ち上げるために、勉強会からメンバーを募って準備を始めることにしました。

一方、お金だけでなく、踏みとどまっている人を引き上げていくための包括的なサポートが必要だとも感じていました。そこで、会社内で新規事業として提案するようになりました。ただ、想いは応援してくれるものの、やはり会社で事業化するには高いハードルがあり、現実的には難しいことが分かってきました。

そこで、独立してやることに決めたんです。


しかし、退職の意を伝えるタイミングでは、3日間も要しました。一生働き続けると思っていた大好きな会社だったので、辞めると言い出すには時間が必要だったんです。それでも、目の前の人が挑戦して、幸せになれる環境を作りたいと思っていましたし、一緒に立ち上げをする共同創業者から、「大丈夫、室岡さんがアクションすれば、必ず後からついていきますから」と背中を押してもらったこともあり、ようやく決断することができました。

強い想いを実現させるための環境をプロデュースする


三井物産を退職し、これまで準備を一緒にしてきたメンバーと一緒に、2013年10月、株式会社ボーンレックスを立ち上げました。ボーンレックス(Bornrex)には、「生まれたばかりのアイディア、チーム、想い」を「テラノサウルス(T-Rex)のような強靭な存在にする」という意味を込めています。

私たちは、「強い想い」を実現させるお手伝いをしています。何であれ、新しいことを始めると様々な困難に直面します。その時、もちろんスキルや能力も大切ですが、何よりも大切なのは「想い」だと考えています。

スキルやノウハウは、更にレベルの高い人が世の中にはいるので、代替可能だと考えていますが、何かに懸ける「強い想い」は、世界中どこをみても代替できるものではない。言い換えれば、地球のマグマのような存在だと。その強い想いに、スキルやノウハウで武装させることで、形にする環境を作れると考えています。

私たちはその強い想いを持つ人が困難を乗り越えるための「様々な武器」を提供し、挑戦する環境をプロデュースしています。最初に直接クラウドファンディングサイトを運営したからこそ、改めて自分たちのするべきことは、お金集めの支援だけでないと思えたのです。

クライアントに必要なことがあれば、新たなパートナーを開拓するので、どんな事業でも支援することができるように努力しています。また、クラウドソーシングのような紹介事業ではなく、クライアントが私たちに依頼することが複数あったとしても、それらの契約を私たちに一本化して頂く形態をとっております。クライアントとの契約を私たちに一本化することで、面倒な事務作業等もする必要がありません。これはまさに総合商社のビジネスモデル。現在のビジネスモデルの多くに、三井物産で学んだことが活きていますね。

今後は、支援メニューをより分かりやすく見せていき、クライアントが「自分だったらこう使えるのか」とイメージできるようにしたいと考えています。例えば、「店舗開業支援パック」などです。また、ものづくりサービスも、現在サポートしているプロトタイプの制作から量産、流通まで一括で支援するサービスを、さらに拡充すべく力を入れていきます。

ゆくゆくは、ボーンレックスグループが、総合商社のように、多くの事業領域を幅広く、深く、事業展開・支援出来る組織体となっていくことを目標としています。そして、想いを持つ人が挑戦できるための環境を築き、多くの人の幸せを守れる「壁」のような会社にしていきたいです。

共同創業者、谷川さんのanother life.はこちら

2015.05.28

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