100年後の人と地球が元氣になるように!生きること自体が自己表現。
表現者として生きることを体現していくため、即興で言葉を書き下ろす「元氣アーティスト」として活動する宮田さん。料理や営業、オーガニック農業などこれまで様々なことに挑戦した背景には、人が「生きていることを実感している元氣な状態」でいるために模索していたとか。そんな宮田さんのこれまでの歩みを伺いました。
宮田 亮介
みやた りょうすけ|人と地球を元氣にする活動
元氣アーティストとして活動する。
見栄ではなく、好きなことを選択する生き方もある
私は埼玉県で生まれました。ゲームの『ドラゴンクエスト』のように、色々な経験を積みレベルを上げて大きな目標を達成する生き方に憧れがあり、将来は旅人のように生きたいと考えていました。そのため、高校も英語科に進み短期留学にも行きました。
元々家が裕福でなかったこともあり、高校卒業後は専門学校に行こうと考えており、料理だったら国境に縛られないで働けるし、人生でも役に立つし、何より食べるのが好きだったこともあり、調理の専門学校に行くこと決めたんです。
そして1年で専門学校を修了した後は、求人募集の中でも一番給料の高かった、ホテルのレストランに就職しました。しかし、働く時間も長かったし先輩にもよく怒られたので、すぐに精神的に追い詰められてしまったんです。飲食業界では若いうちに苦労するのはあたり前でしたが、私はそこまでして自分のお店を持ちたいとは思えませんでした。辛い思いをしながら働くことに、違和感があったんです。
そこで、半年程したある日の出勤途中に逃げてしまい、その後すぐに仕事は辞めることにしました。昔から劣等感が強く、調理師としては高い給料のホテルで働くことを誇っていたのに、結局逃げてしまった自分に対して、ますます劣等感を感じるようになっていきました。
そんな時、高橋歩さんの著書『毎日が冒険』を読んで、考え方がガラリと変わりました。本の中では自分よりも無茶なエピソードが並んでいて、「こんな生き方があるんだ、自分の好きなことをしていいんだ」と思えたんです。
そこで、昔兄が目指していた競艇選手を目指し始めたのですが、テストには合格できなかったし、減量で食べられない時期があるのが辛く、そんな思いをしてまでやりたい仕事ではなかったので、諦めることにしました。
未知のものと出会い続ける生き方をしたい
その後、とくにやりたいことは見つからなかったのですが、イタリアンレストランで働き始めました。イタリアンは昔から好きで、好きな料理を作る仕事だったら以前とは違うだろうと思ったんです。
実際、働き始めると、上司は厳しかったけど学べることは多かったし、以前よりも料理を作る仕事もでき、楽しく働くことができました。
働き始めて1年程経ったある時、WWOOF(ウーフ)という仕組みを使って、1週間程島根の田舎にボランティアツアーに行くことにしました。島根に行くのは初めてでしたが、そこには想像もできなかったような大自然が広がっていて、食べ物も美味しくて純粋に驚いてしまったんです。
この時、小さい頃に持っていたような、自分が知らないことに出会った瞬間の感動が戻ってきた感覚があり、もっとこういう経験をしたいと思うようになったんです。
ただ、このままレストランで働き続け、将来自分のお店を持つことを考えると、未知と触れ合う体験をする時間は取れないと感じてしまい、レストランを辞めることにしたんです。
その後、何度か田舎にボランティアに行く生活を送っていくと、ふとインドに行きたいと思うことがありました。ただ、突然インドに行くお金なんて手元にありませんでした。この時、やりたいことができた時にお金に縛られるのは嫌だと感じ、お金を稼げる仕事は何かと模索するようになっていきました。
そして、SNSで知らない人とたくさん会い、話を聞くようになっていきましたが、ある経営者に、「稼げる仕事があるんじゃなくて、稼げる人間になることが大事だ」と話をしてもらうことがありました。この考え方は衝撃的で、自分が変わらなければならないこと、逆に稼げる人間になれば好きなことを仕事にできるんだと痛感したんです。
何もないと思っていた自分に、既にあったもの
そこで、その経営者の下で営業として働き始めました。コミュニケーション教材を個人に販売し、教材を使った成長のサポートをする仕事でした。
お客様に教材を使って能力を高めてもらう仕事なので、自分自身も成長していく必要があり、セミナーに参加したり独自に勉強したり、自己研鑚していきました。すると、それまで気づいていなかった自分の強みが見えるようになったし、営業としても力がつき、そこそこ稼げるようになっていきました。会社で働いていると言っても完全に歩合制だったので、自分の実力と給与は直結していたんです。
ただ、自分は根本的には自信を持てていないことに気づきました。自分には何もないと思っていて自信がないから、お金や住む場所、社会的ステータスなど、周りから評価してもらえる何かを求めていたんです。
しかし、それでもお客様は何十万円もする教材を私から買ってくれていたので、一体自分に何があるのか、お客様に聞いていくことにしました。すると、「宮田さんと話すと元氣になる」と、「元氣」というキーワードをもらえたんです。予想していなかった結果で最初は戸惑いましたが、徐々に「元氣」というテーマを自分のものとして考えるようになりました。
人が生きている充実感を一番感じるために必要なものとは?
営業の仕事を3年程続けたある時、知り合いに「泣くほど感動するから」と誘われ、アールグラージュアートを見に行く機会がありました。確かに綺麗だと思って絵を見ていると、隣で誘ってくれた人は号泣していて、「自分は感受性が低いのかな?」と思ってしまったんです。
お金があって、いい家に住んで、周りから信頼される豊かな生活を送っても、そもそもその豊かさに気づける感性を持っていないと、豊かとは言えないのではないかと。そして、人が生きる上で、「生きていること」を実感できる瞬間が大切なのではないかと思うようになり、そうであれば、その瞬間を作る仕事がしたいと考えるようになったんです。
ただ、そのために何が一番大事かは分からず、模索していくようになりました。まずは、自分に気づきを与えてくれたアールグラージュアートの販売を始めました。ただ、確かにアートで生を感じてくれる人はいて、販売も順調だったのですが、買ってくれる人は既にアートに興味を持っている人で、価値を伝えて営業するというよりもただ販売する感覚に近く、自分の力を出し切れないと感じてしまいました。
そこで次は、心とか感性はそもそも身体が感じていると考え、サプリや健康食品などに興味が湧き、まずは自分で色々な商品を試してみました。実際、ファスティングの商品など効果を感じられるものもありました。ただ、そもそもなぜデトックスしないといけない状態になっているのか、もっと根本的な解決策がないのかと目が向いて行きました。
そこで、より根本に立ち返り、身体を作っている食べ物や大地に目を向け、軽井沢で農業に携わることに決めました。
食以上に人生を変えるのに必要なもの
そして、オーガニックの野菜を作りながら、健康指導を行う施設で働き始めました。そこでは、多くの人の体調が回復していく姿を目の当たりにしました。実際、私の家族も病気が治ったし、私自身の身体も健康になり、生きている実感も強く感じてるようになり、この食の分野は人が生きることと密接に繋がっていると確信を持つことができました。
一方で、この分野を変えていくことの難しさも身に染みました。
オーガニックの野菜と一口に言ってもその製法や考え方は千差万別で、色々な人の考え方をまとめていくのも大変。また、食はライフスタイルに大きく結びついているので、現代社会の中で変えていくことはかなり難しいし、全ての食がオーガニックになったら供給が追いつかなくなるのは明白です。
そのため、「絶対にこれだ」と言えるベストな仕組みを、すぐには見つけられなかったんです。農業に関わる人たちの意見や考え方は人によって大きく分かれていて、自分の意見を言いたくても言えない状況も増えてきました。
すると、身体は元氣で非常に調子が良かったのに、心の窮屈さを感じるようになってしまったんです。その窮屈さを感じている状況は、目指していた「生を実感する」状態とはかけ離れていました。
この時、人は自分の内側にある想いやエネルギーを外に表現・発信することが大切だと考えるようになり、今度は「人が自分を表現する」領域に挑戦することに決めたんです。
あえて1つのことに絞らない選択
今は、「元氣アーティスト」と名乗り、即興の言葉の書き下ろしをする表現者として生きています。
表現者として生きている私の姿を見て、「自分も表現できるかもしれない」と思ってくれる人を増やせたらと思います。また、私は言葉と色を書き下ろすのですが、これは話す言葉や年齢に縛られず誰にでも普遍的に価値を提供できるので、この形を選びました。純粋に、目の前の人を元氣にできますからね。
生きること自体が表現だと考えているので、人々が自分自身の生き方を創造していける社会になるように、まずは私自身、自分らしい生き方や働き方を作っていきます。そして、自分の考え方を抑えずに生きられる人が増えせたらと思います。
ただ、私の使命は、「100年後の人と地球を元氣にする」ことなので、そのための手段は絞らずに生きていこうと思っています。ここ2年程は、どんな貢献方法が一番なのか絞ろうと模索していた期間でした。しかし、色々挑戦したことで、方法は1つでないと思うようになったし、自分の中に多様な側面を持つことができたので、あえて1つのことに絞らずに、色々な方法や人と接する状態でいることの方が大切だと思うようになったんです。中途半端を貫こうと。
人が生きていると強く実感できている「元氣」な状態でいられるため、これからも色んなことを提供していきたいです。
そして、多くの人が自分自身がどんな状態でいたいか、それを大切にできるようになると、身体のこと、食べ物のこと、自然のことなど、色々なことが自分と繋がっていることを認識できるようになり、社会問題に目が向くようになるし、自分を取り巻くものに対して感謝できるようになると思っています。
そのため、まずは私自身、常に生を感じて生きていきます。
2015.04.26