日本にバーベキュー文化を根付かせたい!肉を食べるのではなく、社交するための場。

日本バーベキュー協会の会長として、日本にバーベキュー文化を根付かせる活動を行う下城さん。海外と日本のバーベキュー文化の違いとは?イベント会社、大手広告代理店に勤め、アウトドア専門事業で独立した下城さんが感じる、バーベキューの可能性とは?お話を伺いました。

下城 民夫

しもじょう たみお|日本にバーベキュー文化を根付かせる
日本バーベキュー協会会長、バーベキューファンデーション株式会社の代表取締役を務める。

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小さな頃からアウトドアに触れて育つ


私は兵庫県で生まれました。
父親の趣味が野鳥狩りだったので、小さい頃から山奥に連れて行かれることが多く、自然を身近に感じながら育ちました。

小学生になると「芦屋市立少年団」というボーイスカウトと似たような組織に入ることにしました。
入団式で、団長である市長が「君たちは、これから同じ釜の飯を食べる仲間なんだ」と訓示していたのが印象的でしたね。
飯盒炊爨(はんごうすいさん)をしたり、手旗やロープワーク、火起こしなどの技術を学んでいきましたが、
根本的には、みんなと一緒に生活しながら仲間になることを学んだのです。

ただ、少年団は小学校卒業と同時に退団し、
中学、高校、大学ではアウトドアは趣味では続けるものの、仕事になるとは思っていませんでした。
将来は、テレビの旅番組のリポーターのように色々な国に行き、様々な人と出会って現地の食べ物を食べる、そんな生活に憧れていたのです。

大学時代はキャラクターショーのアルバイトをしていて、きぐるみに入って殺陣を行っていて、
これが面白かったので仲間と一緒に劇団を作り、孤児院などを回って公演をするようになりました。

そして大学卒業後、周りの友達は役者としての道に進む中、私は運営に興味があったため、
アルバイト先の繋がりでイベントを企画する会社に入社することにしました。

自分で判断する仕事をするため、独立へ


イベント会社では3年程働いた後は、音楽プロモーションを専門で行う会社に転職し、
そこでも3年程働くと引き抜きの話をもらい、大手広告代理店で契約社員として働き始めました。
会社を変わる合間には少し長めに休暇を取り、バックパッカーとして世界を旅しつつ、
日々ウインドサーフィンなどのアウトドアの趣味は続けていましたね。

広告代理店ではラテ局に配属となり、メディアとの関係を築いて放送枠を抑える仕事をしていき、4年程で契約更新の時期に。
そのまま正社員になる道もあったのですが、広告代理店で働き続けることには違和感を感じていました。

業務自体にやりがいは感じていたのですが、上司やスポンサー、メディアなど、様々な人の判断が入り、
最終的な判断を自分ですることができなかったんです。
そのため、成功しても失敗してもどこか自分には関係ないという気持ちもあり、成功の法則を自分の中で持てていない感覚がありました。
そこで、規模は小さくとも自分で判断する仕事をしたいと考え、独立を決意したのです。

そして、昔から趣味で続けていたアウトドアの領域だったら体験を基に語ることができると考えていたので、
「通信社」のビジネスモデルを参考にして、アウトドア情報に特化した情報供給源となって各種メディアに情報提供する、
「アウトドア情報センター」を立ち上げました。

アウトドア・レジャー産業は世界的に大きな産業でしたが、
日本で事業として成立しない分野も多かったので、確実に成長する産業だと感じていましたね。
その中で、既に各レジャーに興味を持っている人向けには専門誌などもあったので、
私は深い専門知識を発信するのではなく、一般的な人向けにアウトドアに興味を持つきっかけとなるような情報を発信することにしました。

海外と日本のバーベキューへの考え方の違い


ただ、様々な情報は集まるものの、関西では発信先のメディアは限られていたので、すぐに限界を感じるようになりました。
そこで、3次元の空間メディアを活用しようと、イベントを開催することにしたのです。

このイベント事業で収益は安定していき、
私個人としてもテレビでアウトドア番組のリポーターになったり、様々な国に取材に行ったりするようになりました。

すると、海外では気球に乗ったり、馬に乗ったりと様々なアウトドア体験をしたのですが、どんな時でも必ず食事はバーベキューだったのです。
日本とはバーベキューの身近さが違うと感じましたね。

また、特にオーストラリアのバーベキューは革新的でした。
バーベキューすることを「バービー」と呼び、いたるところで「バービーしようぜ」とバーベキューが始まるのですが、
みんなすごく力を抜いて、準備などに労力を割かずにスマートに楽しんでいたのですよね。
日本だと、汗をかきながら炭から火を起こして一生懸命肉を焼くのが一般的でしたが、
オーストラリアでは人が集まるところにはバーベキューセットが備え付けられているし、電気式の鉄板で火を起こさずに手軽始められるのです。

そしてこの時、日本とはそもそもバーベキューの目的が違うと感じました。
本場のバーベキューでは、みんなお肉を食べた時には、
「おいしい」と1人で感想言うのではなく、「おいしいね」と必ず誰かに呼びかけるのです。
日本では気持ちの8割は肉を食べることに向いているけど、欧米では人と話すことに気持ちの8割が向いていると。
バーベキューはコミュニケーションツールの1つで、いかに楽しい場を作るかが重要なことだったので、
欧米では簡単にバーベキューを始めるための仕組みや機材、文化が進歩していたのです。

バーベキューの可能性に賭ける生き方


バーベキューに関して興味を持ち色々調べるようになると、
アメリカでは100万人以上集まるコンテストがあり、市場規模も数兆円を超えていること等知り、
バーベキューの可能性を強く感じるようになりました。
そこで、2006年に「日本バーベキュー協会」を立ち上げて、アウトドアの仕事と並行してバーベキューの講習会を始めました。

日本のバーベキューの課題として、「場に対するプライド」が足りないと感じていました。
海外のバーベキューは気軽でゆったり楽しみながらも、ミキサーと呼ばれる主催者は場に対する気遣いを常に忘れずに、
次々に参加者同士を紹介していくなど、パーティーとして成り立たせるためのプライドを持っていたのです。

日本でもそのプライドを醸成してもらうため、講習会ではただ肉を焼く知識だけでなく、
バーベキューの歴史や成り立ち、目的など座学も必修とすることで、
何のためにバーベキューを行うのか、その考え方も伝えていきました。
問題となっているゴミの持ち帰り問題なども、場に対してのプライドが醸成されれば解決されると考えていたのです。
自分が主催するパーティーだったら、ゴミを放置する人なんていないですから。

また、プライドを持つためには自信が必要なので、学んだことを認定する検定試験も始めることにしました。
東京で第1回の試験を告知すると申し込みの電話が鳴りっぱなしで、想像以上に求められていることに気がつきましたね。

そして次第にバーベキューの活動も忙しくなり、アウトドアイベントとの並行が難しくなっていきました。
アウトドアイベントと比べると、バーベキュー事業は収益的には安定していませんでした。
しかし、他国と比べて遅れているからこその成長性を感じていたので、
2010年頃にはイベントを止め、バーベキューに賭けるため、一本に絞ることにしたんです。
そして拠点も東京に移すことにしました。

バーベキューを通じてレジャーへの価値観を変えたい


今は、日本のバーベキュー文化を変えていくため、一般の人向けに講習会や検定試験を行うだけでなく、
企業も巻き込んで様々な企画を行っています。
海外ではバーベキューは産業としてもかなり大きく、アメリカではバーベキューソースだけでも1兆円規模の市場です。
そのため、バーベキューの文化が日本にも根付けば、食材や飲料、機械の市場も広まっていくので、
この考え方に賛同してもらえる企業をスポンサーとしてイベントを開催しています。

また、私たちが提唱しているスマートバーベキューは、人にも環境にも優しいバーベキューを目指していて、
オフグリッドバーベキューと言って、太陽光発電を用いてその場で生み出されるエネルギーのみで完結できるバーベキューを行っていました。
すると、バーベキューをするための専用電気自動車を企画していた日産自動車の人が訪れてくれたのです。
同じことを別の方向から考えていたことに驚きましたが、意気投合して一緒に企画を進めていき、
今は「スマートバーベキューカー」製造のため、クラウドファンディングで支援も募っています。

また、日本でだけではなくバーベキューの本場アメリカでの活動もしています。
食品メーカーと、バーベキューソースや下味を付けるためのスパイス「RUB(ラブ)」の開発を行いアメリカへの輸出したり、
現地のバーベキューコンテストに出場したりするんです。
コンテストは自分たちがロールモデルになるという意味合いと、仕組みを学び日本に持ち帰ろうという意図があります。

これからも様々な方向から、日本のバーベキュー文化・社会を変革していきたいですね。
アメリカではバーベキュー協会は、「アソシエイト」ではなく「ソサエティ」と表記されるように、1つの社会なんです。
バーベキュー社会を日本に作ることで、コミュニケーションのあり方を変えたり、新しい市場を立ち上げたりと、色々なことを考えていますが、
最終的には日本人のレジャーや遊びに対する価値観を変えたいと考えています。

日本では仕事が大切で「遊び」は軽視されがちですが、
実際に世界中でお金が使われる場所は「遊び」であり、観光・レジャー産業はかなり大きい市場です。
この遊びに対する考え方を変え、仕事に活用できるような文化をバーベキューの側面から作りたいんです。

文化を育てるには、ひたすら同じことを繰り返していく必要があるので、
これからもバーベキュー文化が根付くように、日々普及を続けていきます。

2015.03.22

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