雇われていることは最大のリスク!転職を繰り返し見出した、人生の歩み方。
企業向けに、育児や出産で会社を辞めたハイキャリア女性を活用した業務委託サービス、および企業向け研修サービスを運営する大石さん。海外の大学を卒業後、日本の企業に就職するも転職を繰り返し、その中で様々なことに気づいていったそうです。企業勤めから一転、起業に至るまでには、いったいどのような背景があったのかお話を伺いました。
大石 弥生
おおいし やよい|ハイキャリア女性によるBPO業務委託サービス運営
企業向けに、育児や出産で会社を辞めたハイキャリア女性を活用した業務委託サービス、
企業向け研修サービスを提供する、株式会社ヴィーヴの代表を務める。
株式会社ヴィーヴ
留学後、日本でキャリアをスタートする
私は教育熱心な母親のもと、自分自身に働くノウハウやスキルがなければ、やりたいことはできないと教えられて育ちました。
また、これからの時代は英語が話せなければダメだと言われ、高校時代にはホームステイにも参加しました。
正直、最初はやらされている感覚で、留学自体あまり気が進みませんでした。
しかし、いざ行ってみると意外にも楽しく、海外の生活にも慣れていったんです。
友達もたくさんできて、また大学入学時に再会することを誓い、
日本帰国後は、英語学校に通いながらアメリカの大学に入学するための勉強をするようになりました。
そして、高校卒業後、まず現地の語学学校に入学し、その後入学した大学では、経営学を学びました。
特に経営者になりたいなどという考えはなく、単に潰しがききそうな分野だと思っていましたね。
また、アメリカでは大学在学中から企業でインターンシップを行い、職業訓練を積むのが一般的であり、
私自身、卒業後はアメリカで働こうと考えていたため、
職場での人間関係などについてコンサルティングをする、人材コンサルティング会社でインターンも行いました。
その会社では、日本向けのビジネスを始める現地の方をクライアントに多く持っており、
そこで私は、アメリカから日本に輸入すれば人気が出るであろうものを探し、
実際に日本への輸出の交渉をしたり、そのプロジェクトを推進するための冊子作りをしたり、
様々な仕事を行っていました。
しかし、大学を卒業する時期を迎えると、アメリカはスキルが既にある人材を採用するのに対し、
日本の方がしっかりと入社後に育ててもらえる環境があるイメージがあり、アメリカで就職することを迷い始めたんです。
そして、最終的には、まずは日本の企業に入って社会を学んでみようという思いに至り、日本に帰国することを決めました。
波に乗っていたIT業界へ
日本帰国直後は、ちょうど就職氷河期であり、なかなか正社員として雇ってくれる会社はありませんでした。
そこで、やりたいことではないけれど、まずは自分の経験を活かして働いてみようと考えを改め、
名古屋にある語学学校にて、英語の講師として働き始めました。
その学校では、営業やマーケティングも担当させていただいたり、職場環境にも恵まれ、
一生働くつもりはなかったものの、充実して働くことができ、気づけば2年の月日が経っていました。
そんな頃、ちょうど東京ではITベンチャーがもてはやされ始めていました。
そして、ビジネスの世界で今波に乗っている業界に自分も関わってみなければ、
自分のキャリア上乗り遅れないか、と感じ
古い市場で働くより、新しい業界にいた方が、得られる経験やスキルが違うだろうと考え始めたんです。
そこで、2000年1月からITベンチャーを中心に転職活動を始めた私は、
最初に声をかけてもらった、メールマガジンのテキスト広告サービスを運営している会社に行くことを決め、
そこで広告を出稿してくれるメディアを獲得する営業の仕事をすることになりました。
ただ、もともとIT業界のことを何も知らず、営業経験も全くなかったためとても苦労し、
毎日社長の営業について行って売りポイントを習得したり、ITについては自分で勉強して知識をつけたりしていましたね。
大変なことばかりでしたが、新しいことを学ぶプロセス自体が自分にとっては楽しく、
日々の仕事の中で今あるものを改善し、ビジネスを成功に導いていく感覚があって、とても充実していたんです。
ところが、入社して3ヶ月経とうとしていた頃、突然社長が療養のため会社に来れなくなってしまいました。
そして社内が混乱しているうちに自分の試用期間が終わってしまったため、そこで働き続けることをやめ、他社に転職することにしました。
転職、買収され、また転職・・・
その後は、行くあてがなく途方に暮れていたところ、
たまたま前回の転職活動の際に声をかけてくれた他の会社に採用してもらうことができ、
2000年の7月、アナログデータをデジタル化する技術をベースとした商品を扱う会社に転職、
広範囲のマーケティングを行う仕事を始めました。
それはちょうど大学時代のインターンシップで行っていたことに近く、
市場調査を行ったり、効果的なマーケティングのためにカタログを作ったりして、自分の関心の強い仕事をすることができたんです。
ところがその年の年末に、COOから資金調達が難航したことにより、会社が厳しい状況であることを知らされ、
その後結局会社は、携帯電話・インターネット関連会社の大手グループに買収されることとなりました。
買収後間もなく、会社の大規模新規事業のため、
当時展開していたサービスからインターネット回線サービスの立ち上げを行う部署に事業内容が変わってしまいました。
マーケティングの仕事はあまりなく、毎日何もすることがないという状態になってしまったんです。
そこでさすがにこのままではまずい、「脳が溶ける!」と危機感を覚え、また転職活動を始めました。
今度は自分のバックグラウンドを活かし、外資系の企業で、さらにマーケティング関連の仕事ができる会社を探し、
外資系のハードディスクメーカーに転職することが決まったんです。
入社早々、仕事を引き継ぐはずであったマネージャーが他社に転職してしまい、
何もわからないままボストンへ出張に行かなければならない等のハプニングがありながらも、
他の社員に一から仕事の内容を聞いて回り、なんとか出張も乗り切ることができました。
そして、日本市場に新規で投入するBtoBtoC向け製品のプロジェクトマネージャーとしての仕事を始めることができました。
ここでは自社製品の日本での効果的な売り出し方などを考案しながら、実際に家電量販店の店頭に立って販売まで行い、
代理店開拓や営業活動、本社との価格決めや代理店との価格交渉や販売目標設定といったセールスの仕事など、
他にも幅広く手がけるようになっていったんです。
しかしそんな時、今度は会社が競合のハードディスクメーカーに買収されることが決まりました。
買収されると、今まで競合製品だったものを売らなければならず、
自社製品が1番だと思って今まで仕事をしてきたため、モヤモヤしながら仕事をしなければならなくなったんです。
こうして最終的に、この分野ではある程度仕事をやりきったという感覚もあったために、また転職活動を始めることにしたんです。
自分のクビをコントロールできないという不安
今度は同じストレージ業界ではありながら、
面白いソフトウェア技術をベースとしたストレージ製品を開発・販売する外資系ベンチャーに転職をしました。
ベンチャーであるため、マーケティングを含め、自分のやりたいことができそうだと思って入社をしましたが、
仕事はそれなりに楽しく忙しいものの、同じサイクルの繰り返しの中、やりきった感がまた自分を襲ってきました。
そして、そうしているうちにまた会社が競合に買収されてしまったんです。
こうして、転職をしては会社が買収され、また転職するということを繰り返していくうちに、
ふと、
「雇われていることとはある意味リスクなのではないか」
と考えるようになりました。
新しい仕事に就いたところで、またいつ買収され、外資特有のリストラに合うのかわからず、
自分のやりたいこともできないのであれば、このまま働いていても意味がないのではないかと思ったんです。
加えて、転職自体が40歳を過ぎると難しくなる現実があり、
そもそも自分の周りで50代60代まで会社に在籍し続ける女性はあまりおらず、今後も働き続けるイメージが持てずにいました。
そこで悩んだ結果、自身のクビをコントロールできない方が不安定だという考えに至り、
自分で生きていく力をつけるため仕事と並行して、2010年10月より経営学修士を取得するために大学院(MBA)に通い始めました。
実際に通い始めると、仕事をしながら勉強をするのはとても大変で、
自分のできないことに多く直面してくじけそうになったこともありましたが、
新しいことを学ぶ中で自分の成長を感じ、徐々に自信がついていきました。
また、3年半大学院に通う中で、早期退職者が増加しているという点に着目し、
経験値の高いアクティブ・シニア層を中小企業に紹介する事業の構想を立てたりもしました。
ただ最終的に、せっかくならば自分により身近で楽しいと思えることをやろうと考え、
女性がスキルや経験をいつまでも活かせるような人材サービスをやっていくことを決心し、
ついに勤めていた会社も退職することにしたんです。
女性がいつでもスキルや経験を活かせる世の中に
そして2014年1月、株式会社ヴィーヴを設立しハイキャリア女性によるBPO業務委託サービスの運営を開始しました。
現在は、様々なスキルや経験を持った女性が、その時々のライフイベントに合わせて、
いつでもどこでも自分の力を活かせるようにするための、プラットフォームを提供しています。
またその他にも、企業向け研修サービスを提供したり、ライフイベントに併せた働き方の啓蒙活動、
育児休暇中のワーキングマザー向けキャリアセミナーなども行っています。
様々な活動を通じて、私自身の経験を活かしながら、不安定な世の中で自分らしく生きていくにはどうすればいいかという視点を伝え、
それぞれがライフイベントと自分のキャリアを継続させ、人生を豊かにするための支援を行っています。
今後については、まず会社を黒字化させ、自分で始めたことをしっかりと成功させるということが目標です。
私の中で仕事は、雇われている時のように誰かが勝手に道を決めてくれるわけではなく、
自分でその一つ一つ全てを選択しなければならないものであるため、
「ビジネス、仕事=人生そのもの」であるととらえていますね。
将来のことは自分にもまだ何もわかりませんが、最終的には女性が困っている姿を世の中から減らしたいんです。
そんな世界を実現できるように、これからも尽力し続けます。
2015.03.05