人と人をつないで、世界を変える。映画を通して実現する、今やりたいこと。

社会的メッセージ性のある映画の配給・宣伝事業などを主に行う、ユナイテッドピープル株式会社にて、主にプロモーションなどの仕事をされているアーヤさん。幼い頃から社会問題や世界で起きている課題に対して、とても関心が強かったそうですが、どのようにその思いを実行に移していき、なぜ現在の会社に勤めるようになったのか、その背景を伺いました。

アーヤ 藍

あーや あい|世界の課題を解決するための、映画配給・宣伝事業会社勤務
「人と人をつないで世界の課題解決をする」をミッションに、Webメディアの運営や、
社会的メッセージ性のあるドキュメンタリー映画の配給・宣伝事業を行うユナイテッドピープル株式会社にて、
主に広報活動や上映会などのイベントの運営を行っている。
また個人では、映画『ザ・デイ・アフター・ピース』を全国100の大学で上映する活動である「You Are the One Project」を主催する。

ユナイテッドピープル株式会社
映画の市民上映会(自主上映会)情報のポータルサイト『cinemo』
You Are the One Project

「ヒト」が描かれている演劇や舞台に熱中する毎日


長野県で生まれ育ち、現代美術に関心が強い両親の影響で、幼い頃からよく画廊や美術館へ連れられ、そうした影響もあってか演劇やミュージカル、映画を観るのが好きでした。

自由な校風である県立高校に通いはじめてからは、一層熱中して時間を費やすようになり、授業が終わるとすぐに家に帰って映画を見たり、休日には1人で東京に出て、立ち見で観劇したりしていました。

映画や演劇で世界を旅し、その中の人々と過ごす時間が楽しくて、あまり高校の友人とは遊ばず、軽い「ひきこもり」のような状態だったかもしれません(笑)

その頃は特に、ノンフィクションや戦争物など、重いテーマのものをよく観ていて、そのたびに自分も何かしなければという正義感に駆り立てられました。映画も演劇も「ヒト」が描かれているもの、ヒトの善と悪の二面性や、自分と違うものを排除しようとする心理、孤独感など、「ヒトってなんだろう」「生きるってなんだろう」と考えさせられる作品が好きでした。

そんな生活を送っていた高校1年の春休みに、1ヶ月カナダへ語学留学をしました。現地の語学学校でいろいろな国の人と出会い、とても楽しかったのですが、中でも私にとって大きな学びになったことがありました。

その頃、メディアを通して韓国で反日デモが起きていることなどを見聞きしていたので、語学学校にいた韓国人の人たちとも仲良くなれないのではないかと不安だったんです。

でもむしろ、クラスで最年少だった私を一番可愛がってくれて、仲良くなったのは、韓国の人たちだったんです。個人と個人の交流であれば、国や文化、宗教などの違いを越えて関係を築くことができる。この学びは、帰国後も自分のなかで息づいていきました。

目の前のことから、興味の赴くままに


このように自分の興味に没頭する一方で、学業の成績も悪くはなかったので、受験のときには周りの薦めるままに国立大学一本勝負で挑み、見事浪人しました(笑)。

浪人して初めて、「これから自分は何をして生きていきたいのか」を深く考えました。出た答えは、カナダへの短期留学で感じた「個人と個人の交流の場を増やし、様々な違いを越えた人間関係を築くこと」でした。

いわゆる「平和」の実現。それは先人たちも願ってきたにも関わらず、まだ実現していない。つまり、これまでの「文系・理系」や「専門」に分かれた教育で学んでいても、解決策を見つけ出すことはできないと思い、文理の垣根を越え、実践しながら学ぶ、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス、いわゆる「SFC」に進学したんです。

SFC在学中、5つのゼミを渡り歩きましたが、最終的には「アラブ・イスラーム」について継続的に学びました。自分が中学生のときに起きた米同時多発テロがずっと心に残っていて、「これから一番、草の根の交流が必要だ」と思ったのがイスラーム社会だったんです。

大学2年生の春休みにはアラビア語の研修で中東のシリアに1ヶ月滞在し、現地の人の温かさと人懐っこさに触れ、本当に楽しい時間を過ごしました。

「必ずまた再訪したい。」と思い帰国したのですが、帰国直後から、「アラブの春」の民主化運動が激化し、内戦状態となってしまいました。自分が訪れた場所が爆撃で粉々になっている映像を見たり、現地の友人が、SNSで悲惨な投稿をしているのを見て、他人事とは思えませんでした。

そんな経験をした後に、就職活動の時期を迎えました。当初は大学院に進むことを考えていましたが、継続的に社会課題の解決にあたるために、一度はビジネスを学ぶべきだと考え、一般企業に目を向ける中で、教育支援SNSを提供しているある会社に出会いました。

この会社の最終面接で、当時の社長が「この教育支援SNSを活用して、将来、世界のあらゆる地域の子どもたちが、質の高い教育を受けられるようにしたい」と話してくれたんです。

自分が実現したい、世界の人と人をつなげるための一歩になるのではないかと思い、入社を決意しました。

自分も「社会のため」に何かしていいんだ


入社当初は、自社サービスの勉強や、コールセンターでお客さま対応の仕事をしていました。しかし約半年間の研修後に、自分がやりたかった教育関連分野とは違う部署に配属されて以降、違和感が日々募っていきました。

そんな私に変化の一歩を与えてくれたのが、「グリーフケア」の活動を行なっている、ある団体の代表の方でした。「グリーフ」とは、大切な人やものなどを失うことにより生じる喪失感のことです。

この方は、19歳でお母さんを自殺で亡くし、その前後の家族との軋轢や、逆に、血縁関係以外の人たちから支えられた経験から、今の活動を始めていらっしゃいました。

実は、私も大学入学直後に、両親が別居し、それまで一番の心の拠り所であった「家族」を失いました。当初はそれでも一生懸命、家族をつなぎとめようとしたり、一番ダメージを受けていた母親を支えようとしたりしていたのですが、結局うまくいかず、自分自身に対する嫌悪感と自責の念が強くなり、生きていること自体が辛くなって、家族から距離を置くことにしました。

自分のなかでそのことをずっと「マイナス」なものとして引きずっていて、「家族も守れない自分が、社会のために何かするなんておこがましい。偽善だ」と、どこかで後ろ向きな思いがあったんです。

でもその方は、自分と似た経験をバネにして、社会にちゃんと向きあって生きていることに、強い感銘を受けました。また、私が家族を守れなかった事実を責めるのではなく、受けとめてくださったんです。

私も何かできるかもしれない、私だからできることがあるかもしれない。その方との出会いをキッカケに、今の仕事を辞め、自分が心から進みたい道に進もうと考え始めました。

「ピースデー」を広めたい


その出会いから2週間ほど後に、「ワールドシフトフォーラム」という、持続可能で平和な世界の実現のためにアクションを起こしている、様々な領域の人たちが集まるイベントに参加しました。

そのなかで登壇したパネラーの一人が、パレスチナを訪れたときの経験の話をしたんです。私は「大学時代に訪れたシリアのために何かしたい」という想いを持ち続けていたので、興味が湧き、イベント後にその方に挨拶をしにいきました。そしてお話をしたところ、翌月に開催される、『ザ・デイ・アフター・ピース』という映画の上映会に誘ってもらったのです。

この映画は、1人のイギリス人俳優が、「365日のなかの1日から、戦いや争いのない日をつくろう」と国連へ「ピースデー」の制定を訴えかけ、それを実現した後、実際に紛争地に行き、ピースデー当日に本当に戦いがとまるよう働きかけ続ける、約10年間を追ったドキュメンタリーです。

映画を観終わったとき、「ああこれだ!」と思いました。シリアをはじめ、内戦や紛争のニュースは、期間が長引けば長引くほど、みんなあまり注目しなくなります。でも、365日の1日だけでも世界で戦いが続いている地域に目が向けば、間接的ですが、シリアのような国々のためになるんじゃないかと思いました。また、まもなく終戦70年を迎える日本において、もう一度「平和」をみつめなおす機会になるんじゃないかと思ったんです。

そこで、この「ピースデー」の日本における認知度を高めるために、この映画『ザ・デイ・アフター・ピース』を、日本国内の大学100校の学生さんたちの手で上映してもらおう!というプロジェクト「You Are the One Project」を立ち上げました。

声をあげれば、仲間と出会える


それからしばらくは、会社で働きながらプライベートで「You Are the One Project」の活動をしていたのですが、そのなかで気づいたのは、自分がプロジェクトの活動をしているときは、「100%の自分」で話せているということでした。心から伝えたいこと、話したいことを言葉にできていて、だからこそ、“心が喜んでいる”感じがしました。

ちょうどそう思い始めた頃に、『ザ・デイ・アフター・ピース』の上映会に誘ってくれた人が代表を務めるユナイテッドピープル株式会社で、新たに社員を募集するという話を聞きました。

ユナイテッドピープルでは、「人と人をつないで世界の課題解決をする」というミッションのもとに、クリック募金のサイトを運営したり、社会的メッセージ性のある映画の配給・宣伝事業を行っています。小さい頃から演劇や映画に親しんできましたし、自分で進めていたプロジェクトと同じようなことを仕事としてやれるとしたらこれ以上の選択はないと思い、この会社への転職を決めました。

今は、映画の事業にメインで携わっていますが、小さな会社なので、上映用ディスクの作成から、プレス対応、イベントの運営など、本当に何でもやっています。

ここまで仕事やプロジェクトを続けてきて、一番実感しているのは、自分がやりたいと思うことを声に出して発信していると、近い想いをもっている仲間と出会えるし、人や情報を紹介、提供してくださる方もいるということです。

今後も、会社の仕事や自分のプロジェクトを通じて、世界の課題に関心を持ってもらい、さらにそれについて考えてもらうきっかけをつくることができれば嬉しいなと思っています。そしてそこから、共感してもらえる仲間とともに具体的なアクションを少しずつでも形作っていきたいです。

2015.02.28

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