憧れの美容師になってから早20年。目の前の一日を楽しみ、大切にする私の生き方。

神奈川県で美容室「BLISS of life」を経営する小田島さん。小さい頃から美容師に憧れ、美容師歴20年のキャリアを持ちますが、今に至るまでには様々な紆余曲折がありました。結果を出すために仕事に取り憑かれていた時代から、「目の前の人との時間を大事にしたい」と考えるようになるまでには、どんなストーリーがあったのか。お話を伺いました。

小田島 加奈子

おだじま かなこ|美容室経営
東神奈川・東白楽駅から徒歩3分の美容室「BLISS of life」を経営する。

BLISS of life
 

美容室という空間に憧れる


私は神奈川県で生まれました。

小さい頃から美容室の非日常でキラキラした雰囲気が好きで、母が髪を切るときはいつもついて行っていました。
中学生になり、自分の髪も美容院で切ってもらうと、
次の日学校でみんなから声をかけてもらうことがあり、ますます美容院が好きになっていきました。
髪を切れば心が変わる、そんな魔法をかけてくれるような空間だったんです。

その後、高校生になると美容室でアルバイトをするようになり、
自分で使えるお金も増えたので、2週間に1回はカットやパーマをするほど好きでした。
ただ、自分に自信がなくて人前に出るのが苦手だったので、
憧れの美容師になれるなんて思っていなく、将来はピアノの先生になりたいと思っていました。

しかし、ある時、ピアノも教える程の実力ではないことに気づいてしまいました。
そして進路を悩んでいる時に、アルバイト先の美容師さんに、
「美容師になるのって難しいですよね?」と聞いてみたんです。
すると、「誰でもなれるよ、もちろん君だって」と言われ、
「私でもなれるんだ!」と素直に感じて、美容師になることを決めました。

親は最初は心配していたけど、私が「やりたい」と言い張ることが珍しかったこともあり、応援してくれました。
そして、アルバイト先でシャンプーやパーマのワインディングなどを少しずつ教えてもらい、高校卒業後は専門学校に進みました。
最初からできることが多かった私は、成績はいつも一番で、天狗になっていきました。

現場で感じた美容師の楽しさ


そんなある時、風邪を引いて授業を休むことがありました。
すると、授業のスピードがかなり早かったこもあり、次の日から全く内容が分からなくなってしまったんです。

そして、できないことが増えると成績はガタ落ちし、勝手にいじけて学校も休みがちになりました。
その状況がつらく、そのまま学校を辞めてしまおうかとも考えました。
しかし、「自分で決めたことなんだから、辞めるにしても免許を取ってから考えたら」と親に言われ、
私も中途半端にしたくない気持ちはあったので、美容師免許を取るまでは続けることにしたんです。

美容師になるためには、専門学校で1年学んだ後に美容室で1年の実務経験を積んでから試験を受ける必要があったので、
卒業後は研修生として働き始めました。
最初は、新しいことをどんどん覚えるのが大変だし、できる仕事も掃除などの雑務ばかりで大変な仕事だと感じました。
しかし、自分が大好きだった美容室に、働く側として立てたのは嬉しく、
アシスタントながらお客様に喜んでもらえる瞬間もあって、学校では感じられなかった楽しさに気づけたんです。

そのため、やっぱりこのまま美容師を続けることにしました。
そして資格も取り、4年程同じ店舗で働いた後、別の環境でも働いてみたいと考え、
転職して新しくできる店舗でオープニングスタッフとして働き始めました。

1店舗目は昔ながらの美容室で、常連さんや年配のお客様も多く伝統を大切にする場所でしたが、
2店舗目は若いお客様向けにデジタルパーマやエクステンションなど、新しいことに挑戦する風土があり、
どちらも違った意味での良さを学べました。
また、2店舗目ではお客様との距離がすごく近いコミュニケーションスタイルで、
「美容師とお客様」ではなく人と人が直接繋がる関係性があり、個人的にはそれが肌に合うと感じていました。

すべてを決めるのは自分の心次第


昔から、「自分のお店を持つ」という目標を持つことが美容師として正しいと考えていたので、
将来は独立を考えていました。
しかし、本当に自分の意志で独立したいと思っているのか曖昧な部分もあり、
30歳という年齢が少しリアルに感じられるようになってきた時に、改めて考えるようになっていきました。
すると、気づけば自分の作りたいお店の細部までイメージしている自分がいて、
私はやっぱり独立したいと、心の底から思っていたんです。

そして、世間では低価格のチェーン店が流行っていたこともあり、
経営という観点で独立前に学びたいと思い、横浜市で12店舗展開するチェーン店に移ることにしました。

ところが、新しいお店はすぐに合わないと感じてしまったんです。
それまで個人店で価格も高いお店でのサービスをしてきた自分としては、
心のどこかで見下してい部分もあったのか、ネガティブな部分ばかり目につくようになっていったんです。
そして、今までのやり方をしても指名のお客様もつかず、
3ヶ月程でオーナーに「辞めます」と宣言してしまいました。

ただ、そこから辞めるまでの1ヶ月の間は、悔いが残らないように気持ちを入れ替えて働くようにしたんです。
すると、辞める直前に少しずつ指名してくれるお客様が出てきたんですよね。
この時、自分の心の持ち方が間違っていたんだと気づきました。
自分がそれまでとは違う環境を求めて転職したのに、勝手に不満ばかり募らせていて、
それじゃお客様にも喜ばれなくて当然だったんです。

結局は自分がどういう気持で仕事をするか次第だったことと気づき、
「辞めるのを止めます」とオーナーにお願いして、引き続き働かせてもらうことにしました。

初心者経営者として、何かが足りない


2年目になると店長も務めるようになり、将来は店を任せるとも言ってもらえ、
成果を出すために一生懸命働くようになりました。

しかし、逆に結果を出すことに取り憑かれてしまい、
休みもなく働くもので仕事はつらいのを我慢するものだと考えるようになっていきました。
どれだけ頑張って目標を達成しても、一瞬の達成感があるだけですぐに次の目標に追われる日々でした。

その後、店長として6年ほど働いたタイミングで、お店を引き継がせてもらうことになりました。
それも、フランチャイズ店なのに、私の頭にあるコンセプトのお店を実現させるために、
内装からサービスまで、全てを変えていいと言ってもらえたんです。

そして場所やお客さんはそのまま、かつフランチャイズ経営なのに、念願の自分のお店をすことができたんです。

それまで経営経験はないので準備期間は講演会に足を運んだり、本を読んだり、とにかくインプットをしていました。
また、自分の中では独立は大きいことだったので、とにかく意気込みを強く持ってスタートを切りました。

しかし、スタッフがついてきてくれませんでした。
それまでのお店とは全てがガラッと変わってしまうので事前に何度も話したけど、やはりオープン後に辞めてしまう人が多くいました。
自分のリーダー力のなさが不甲斐なく、うまくいかないことばかりで、
自分には何かが足りないと焦りもあって、ひたすらインプットを繰り返していきました。

そして、オープンから半年ほど経った頃、知り合いから紹介されて、元お笑い芸人てんつくマンの講演会に行きました。
すると、彼は「人のためになることが自分の幸せ」と語っていて、その姿が輝いて見えたし、衝撃を受けたんです。
私は結果や状況にばかりこだわって、人に「喜んでもらいたい」という心の部分を忘れていたと気づかされ、急に肩の力が抜けた気がしましたね。

南アフリカの植林ツアーで人生観が変わる


そして、この人と一緒に何かやてみたいと思い、
てんつくマン主催で南アフリカの植林ツアーに参加することに決めました。
もちろん経営がうまくいっていない状況で、10日間も店を抜けるのは不安も反対もありました。
しかし、「店は任せて下さい」と言うスタッフの言葉に後押しされ、ツアーに参加することができました。

私にとって初めての海外はなにもかも新鮮でした。
また、一緒に行った日本人のメンバーはみんなやりたいことを明確に持っている人や、
人が喜んでくれること自体に心から喜びを感じるピュアな人たちばかりで、
今までに会ったことがないような仲間ができたんです。
その仲間と植林をしながら深く現地の生活を知ることで、心が暖かくなったし、
それまでの結果にこだわる仕事や人生のスタンスが大きく変わるのを感じました。

そして、帰国後もそのメンバーで振り返りの会があり、
ある仲間がカンボジアへのボランティアツアーの参加を呼びかけました。
「一緒に何かやりたい人がいたら声をかけてください!」と言われ、「あ、私は髪を切れるな」と思ったんです。
そして、美容室のスタッフ全員で研修として行くことに決めました。

私自身、初めての海外だった南アフリカで、体験を通じて現地の暮らしに触れたからこそ心に突き刺さるものが大きかったし、
そんな人生観が変わる経験をみんなにも味わってもらいたかったんです。

実際カンボジアのスラム街でのカットは、子どもたちがキラキラな笑顔で喜んでくれました。
人に喜ばれる・・・美容師の原点を肌身で感じました。

また、お店ではカットをまだできないアシスタントの子たちにもカットを経験してもらうことで、
自分がスタイリストになった時のイメージを感じ美容師の楽しさを味わってもらえるのが青空美容室のいいところだと思いました。

毎日、目の前の人との時間を大事にする


それからも、研修としてほぼ毎年カンボジアやスリランカに行き、青空美容室を行うようになりました。
カンボジア人と日本人コラボレーションでヘアショーも行ったこともあります。

青空美容室の魅力は、言葉が通じなくても
喜んでるなとか、恥ずかしがってるなって、アイコンタクトや相手の表情でちゃんと伝わってくるんです。
「カットしたら喜んでもらえた!」そんな単純なことが私は嬉しいですね。

昔は、自分に劣等感があり、それを満たすために色々なインプットをしたり、人の役に立とうと無理していました。
結果という目に見えるものにこだわって、上手くいかない経験も沢山しました。
でも、人生を歩んで行く中で、経験や出会いによって価値観が変わってきたと思います。
自分自身が本当に楽しみながら生きていると、それが目の前のお客様やスタッフにも伝わる。

今まで色々なことがあったけど、やっと本質的な気持ちを思い出しながら仕事ができています。
今、自分の美容室での接客スタイルやお店の内装は、頭に描いていた「ワクワクする美容室」を実現できていて
「やりたかったことをやれているなぁ」と自分でも感じますね。

将来は、具体的に「これがしたい」というものはあえて描いていなくて、
毎日を大切にして、目の前にいる人との時間を楽しく過ごすことを心がけています。
そうやって歩んでいくことが、振り返った時に「楽しかったなぁ」と思える道をつくっていくんだと思います。

2015.02.22

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