未来の自分に健康をプレゼントしませんか?母が感じた辛さに気づき、決めた道。

エクササイズと更年期の事前知識の提供、対話などを通じて、更年期をむかえる女性をサポートする「ちぇぶら」の代表を務める永田さん。 もとは役者として活動していましたが、仕事に生きるのではないかとピラティスを始め、様々なきっかけから現在のように更年期をサポートする活動を行うようになったそうです。 いったいどのような背景があったのか、お話を伺いました。

永田 京子

ながた きょうこ|更年期フィジカルケアインストラクター
更年期を迎える女性の心身を、体のケアや知識の提供などを通じてサポートする「ちぇぶら」の代表を務める。

ちぇぶら

上手くいかない、母親との関係


私は兵庫県の姫路市で生まれ育ち、小学校では手芸部に入って、
スポーツをすることもほとんどないような、とても内気な性格でした。

しかし、中学入学時に、活発な姉の影響を受けて、 姉と同じバレーボール部に入部を決めたんです。
それまでは身体を動かすなんてもっての他でしたが、練習だけでなく、
先輩後輩といった上下関係などの厳しさに耐えていくうちに、身体も心も強くなっていきました。

高校生になると、バレーボールは辞めて演劇部に入ることにしました。
表現することは楽しく、 みんなで何度も練習を重ねて一つのものを作り上げる達成感や喜びがあり、
演劇を好きになっていったんです。

一方、家庭では父が単身赴任、姉も独立していて、母と二人で生活していました。
この頃、母は毎日イライラしていて、私も反抗期を迎え、母とほとんど口を聞くこともなく良い関係性ではありませんでした。

一度、激しく言い合いになり、母が包丁を持って迫ってきました。
私はこのままこの家に住み続けることに限界を感じ、家を出て、友達の家で居候をする生活をするようになりました。

旅をする中で巡りあった、キラキラした世界


その頃ちょうど、テレビで芸人さんがヒッチハイクをする番組が流行っていて、
ちょうど家出もしていましたし、私もヒッチハイクをやってみようと思いついたんです。
そして、友達と一緒にヒッチハイクで四国を回り始めました。

最初はお金もないし、知り合いもいないし、不安を感じていましたが、道中で出会ったたくさんの方にお世話になり、
感謝するとともに、人生なんとかなるものだと度胸がつきました。

そんな旅の中で、お世話になった方に劇団の舞台に連れて行ってもらうことがありました。
高校で演劇部に所属していましたが、プロの舞台をしっかりと見るのはこれが初めてだったんです。

そして、私はその舞台の全てに釘付けにされてしまいました。

音響も照明もとにかく全部かっこいいし、役者さんたちがとてもキラキラして見えて、一瞬にして強烈なあこがれを抱きました。
高校は進学校だったこともあり、これまでは卒業後の進路は大学に行くことしか考えられませんでしたが、
違う世界を知ることができたような気がしたんです。

旅を終えてすぐ、高校の進路相談の先生に俳優になりたいと伝えました。
先生には「ムリに決まっている」と言われましたが、両親は心配するものの私の意思と選択を尊重してくれ、
私は高校卒業と同時に、俳優を目指して上京しました。

上京してからは、俳優養成所に所属して活動を始めました。
最初に受けたオーディションに合格することができ、 それは全国を巡業するミュージカル公演だったので、とても心が躍りました。

しかし、稽古が始まってみると、他の出演者たちは経験値の高い人ばかり。
経験の浅かった私は、ついていくのに必死で毎日泣きながら演技やダンスを練習していました。
結果的に公演は成功を収め、自分に自信をつけることができました。

その後もアルバイトをしながらオーディションを受ける日々を続け、舞台をメインに、
テレビドラマやレポーターなどの仕事をしていました。

インストラクターとしての一歩


しばらく俳優の活動をしていましたが、自分自身の今後について考えたとき、
このままのアルバイトと俳優の活動を並行した生活を続けるのではなく、何か手に職をつけようと思うようになりました。

そこで、私はピラティスのインストラクターになることにしました。
ピラティスは、身体と精神を同時に強化するエクササイズですが、解剖学なども学ぶ必要があり、
役者をやる上でも、自分の身体のことを知ることができるのはとても有意義だと感じたんです。

そして、その講習でたまたま産後ケアを行うNPO法人マドレボニータについての本を紹介され、読む機会がありました。
代表の吉岡さんの言葉や、「産後」を社会問題と捉えて、
それを市民の立場から解決しようとしていることがとてもおもしろいと感じ、興味を持ったんです。

そして、今度はマドレボニータのインストラクターの養成コースに通うようになり、
半年間、バランスボールやエクササイズなどの厳しい訓練を経て、 マドレボニータの認定インストラクターになりました。

今までの全てが繋がった感覚


ところが、インストラクターになってからが大変でした。

産後は子どもが生まれて幸せなイメージを持たれがちですが、
実際には心身ともにボロボロになるのでリハビリが必要です。

しかし、当時はまだ「産後ケア」自体がとてもマイナーで、
当事者である産後の女性ですら産後ケアの必要性を認知していない状態だったので、
まず知ってもらうことから始めることになりました。

地道に地域でチラシ配りをしたり、開催する会場を借りるのにも苦労しました。
しかし、1~2年、活動を続けていくうちに応援してくれる仲間ができて、
おかげで、1年間で約800人もの生徒さんが来てくれる人気の講座に成長していきました。

参加者してくださる方の「産後うつから脱却することができた」「母として、一人の女性として、自信が取り戻せた」という声を聞いたり、
彼女たちの気持ちに変化が起きている姿を見て、とてもやりがいを感じましたね。

そして2014年の1月、活動が順調になってきた頃、40~50代の女性に向けて講座をやってもらえないかと依頼を受けました。
以前からこの年代の更年期の方に向けたものをやってみたいという思いがあったため、引き受けることにしたんです。

講座を通して 凝り固まっていた彼女たちの心と身体がほぐれていくのを目の当たりにしました。
そんな姿を見るうちに、ふと思い出すことがありました。

それが、高校時代の母親の姿でした。

あの時、イライラしたり辛そうにしたりしていたのは、更年期障がいだったのではないかと思い、
今まで自分がやってきたことの全てが繋がった感覚があったんです。

そして、これからは、更年期をむかえる女性に向けたケアを行っていきたいと思い、
独自で調査を行ったり、更年期のことをひたすら勉強したり、講座をテスト開催したりと、
団体の立ち上げに向けて準備を進めていきました。

心身ともに、女性を健康に


そして2014年4月、更年期を迎える女性の心身をサポートする団体「ちぇぶら」を立ち上げました。
「ちぇぶら」という名前は、更年期を前向きに捉える「the change of life」です。

エクササイズと更年期の事前知識の普及を通じて、すべての女性が心とからだの「健康」を選択できる社会を目指して活動しています。

現在は事業として2つのことをやっています。
1つ目は、30代、40代の更年期の手前の女性を対象に、
「エクササイズ&ボディスタディ」というバランスボールエクササイズやピラティスメソッドを取り入れた体のケアと、
更年期の事前知識をつけるお教室の開催です。
最初は自主開催をしていたのですが、最近は開催の依頼が増えて、出張での開催が多くなってきています。

2つ目はイベント「ちぇぶらcafe」の実施です。
ゲストをお呼びして講演会やトークショー、テーマを設けた分科会などを行っています。
更年期に関して、当事者の女性に関心をもってもらうことはもちろん、
サポートする側の家族や男性にも知ってもらうこと、また地域でのつながり作りを目的としています。

先日、更年期に関するアンケートを実施し、1014名の女性の方に回答いただきました。
そこで9割の女性がこの時期に不調を感じるものの、大半の方がその症状を我慢してやりすごしており、
さらにその影響は本人だけではなく、家庭や職場にも影響していることが分かりました。
人生の節目でもある「更年期」を知って、心とからだの「健康」を選択できる女性が増えれば社会はもっとよくなります。

今後は、現在行っている教室やイベントの継続はもちろんですが、
働く女性に向けて企業や職場に出張して講座を開催したり、行政と協力をしていったり、もっともっと社会に広めていきたいです。
また、講座を提供できるインストラクター自体も増やしていければいいなと思っています。

そして、最終的には全国どこにいても心とからだの「健康」を選択できる仕組みをつくり、
「更年期」をきっかけに、健康で自分らしい人生をからだごと楽しめる人を増やしていきたいです。

2015.02.20

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