食を通じて世界中の人をHappyに。世界の中で、日本で生まれた僕の生きる道。
月間600万人以上に使われている実名制グルメサービス「Retty(レッティ)」を運営する武田さん。日本に生きる身として、他の人を幸せにする人生を送りたいと語る背景には、学生時代に世界を見たことで日本人としての自分の立ち位置に気づいたと語ります。そんな武田さんのこれまでの歩みを伺いました。
武田 和也
たけだ かずや|実名制グルメサービス「Retty」の運営
Rettyを運営するRetty株式会社の代表取締役を務める。
Retty
大学に行くも、このままで良いのか?
私は愛媛県で生まれました。
私の家は経営者一家で、祖父も父も小さな会社を経営していてました。
マンション経営や、素材の卸売りをする事業を行っていたんです。
家の隣が事務所だったこともあり、家族が仕事をする姿をよく見ていて、
父がいつも「どこにマンションを建てたら良いか」と話しているのがうつったのか、
自然と私も同じようなことを考えるようになっていきました。
また、将来は自分で会社を経営するんだと、漠然と思うようになっていきました。
小中学校では活発な性格で、よく学校帰りにみんなと遊んだり、いたずらをしていましたね。
一方、勉強はできる方で、高校は国公立大学を目指すような学校に通っていました。
ただ、あまり地元から出る人は多くなく、みんな地方国公立大学を目指す中で、
私は東京に出たいと思うようになり、しかも私立の青山学院大学を受けようと思っていました。
なんとなく楽しそうな大学だと思っていて、そんな進路を考えているのは私だけでしたね。(笑)
そして受験を終え、無事に志望校に進学することができました。
大学に入ってからは、都会に出て嬉しかったこともあり、毎日友だちと遊んでばかりでした。
しかし、1年もすると遊ぶのにも飽きてきて、
「いったい自分は何をしているんだろう、このままで良いのか?」と思うようになっていったんです。
目的がなかったんですよね。
それからは自分がどう生きたいのか考え始め、考える材料として様々な経営者の本を読んだり、
人材系の企業でインターンシップを始めたりするようになりました。
自分の立ち位置を知り、するべきこと
その中で、より自分の視野を広げ、視点を変えてくれるきっかけになると考え、海外にも行くようになっていきました。
世界で一番経済が発展しているニューヨークに行ってみたり、
その全く逆の世界を見たいと、中国やインドなどにも行ってみたりしました。
私はすぐに感動してしまうので、海外に行くと何かしら感じるものがあり、視野が広がっていきました。
ただ、どこの国に行っても、感じることは結局いつも1つのことに集約していったんです。
それは、「日本はすごいな」ということでした。
例えば、確かにニューヨークは高層ビルが立ち並んでいて、経済がかなり発展していると感じます。
しかし、一般の人の生活レベルや電車などの公共機関などは、日本の方が圧倒的に整っていたんです。
逆に開発途上国では、もちろん顕著に日本の豊かさを感じられました。
そうやって、海外と日本を比較し、さらに日本の中にいる自分というものを考えていくことで、
この世界の中にいる「自分」という存在、その立ち位置を知ることができました。
日本に生まれた以上、自分は幸せであると。
だとしたら、自分はどうしたってそんなに不幸にはならないんだから、
自分以外の多くの人を幸せにする生き方をしたいと思ったんです。
その1つとして、最初は教育という分野を考えました。
日本は元気がないと言われることも多く、それならば教育を通じて人の意識を変えることで、
日本の元気を取り戻し、それが幸せにつながるんじゃないかと思ったんです。
そこで、様々な生き方を比較軸として提示して考えるきっかけをつくろうと、
大学での授業やNPOで講演を開催しようと、準備を進めていきました。
しかし、それだと大学の中だけ、NPOのコミュニティの中だけと限られた人にしか届かず、
多くの人に影響を与えることができないと感じてしまったんです。
どの市場にエネルギーを注ぐのか
そして、より多くの人にインパクトを与えられる方法を考えた時、それはビジネスであると考え、
まだビジネスアイディアはないものの、将来「起業」することを決めました。
そこで、まずは商売の全体観を学びたいと思い、
以前インターンしていた会社の社長に頼み、ネット通販事業を立ち上げさせてもらうことにしました。
ネット通販では、何を売るか、どうやって売るか、どこから仕入れるか、お金はどうやって回収するか等、
小さい規模ながら商売のサイクルを全てを学ぶことができると考えていたんです。
そして、最初に扱った商材は、大手ショッピングモールで冬になると一番売れていた、北海道のカニでした。
しかし、カニは北海道の業者から仕入れるので、その業者には勝てないことが分かったんです。
彼らは卸価格で販売できるし、もっと差別化して価格競争が起こらない商材にしないとダメだと気づき、
1ヶ月程で方向性を変え、チーズケーキを売ることにしました。
チーズケーキなら、都内の名店等を集めることで、自分の通販ショップでしか買えないという強みを持てると考えたんです。
その戦略自体はうまくいったものの、チーズケーキは配送の時に梱包が崩れてしまうことが多く、
どうしてもその問題が解決できませんでした。
それならばと、荷崩れもしない化粧品を扱ったところ、成果を出すことができました。
そうやって通販を通じて色々な商材を売る中で、
同じだけ時間を費やしても、何を売るか、どの土俵で戦うかで、売れる量は全然違うことに気づいたんです。
どの市場で商売するかが本当に重要なんだと。
逆に、参入する市場とタイミングを間違えると、どんなに優秀な人でも活躍できないんだと、痛いほど身にしみたんです。
日本が最先端の分野とは
そんな観点でものごとをみるようになり、それからはモバイル広告市場が急拡大するだろうと考えていたので、
就職もモバイル広告を扱える会社に入りたいと考えていました。
そして、モバイル広告専業の会社はまだなく、ネット広告を扱いモバイル広告の事業を持っていた、
ネットエイジというベンチャー企業に入社を決めました。
起業家輩出企業でもあったので、3年後に独立をすることを前提に、めいいっぱい力をつけるために働きたいと思ったんです。
予想通り、携帯ゲームやSNSの流行によりモバイル広告市場は急成長していき、
3年間非常に有意義な経験を積ませてもらった後、独立するために会社を辞めることにしました。
ただ、まだどんな市場で、どんなサービスで起業するかは明確ではありませんでした。
広告代理店や営業会社などをつくれば、起業自体はできます。
しかし、私の起業目的は、世の中の人を幸せにしていくことだったので、それだと規模が小さすぎたんです。
そこで、自分の視野が狭いことは分かっていたので、その後の数十年間をより価値あるものにするために1年を投資期間と決めて、
世界中で使われるサービスをつくるとはどういうことなのか肌で感じるために、シリコンバレーに行くことにしたんです。
シリコンバレーは世界の名だたる最先端企業の集まる土地。
それまでは漠然としか考えられなかった、「世界展開」という言葉も、具体的にどういうことなのか、身をもって感じられました。
アメリカ発のサービスが世界中に展開できるのは、アメリカが最先端をいくテクノロジー分野で事業をスタートするからなんです。
最先端のイノベーションを起こすと、それが他の国にも展開され、グローバルスタンダードになる。
私はビジネスのスタートは日本からと考えていたので、
それならば日本が最先端を走る分野でサービスをつくろうと考えるようになりました。
そして、40以上の事業アイディアを考え、その中でより多くの人を幸せにでき、市場機会があり、かつやりたいと思えたのが、
実名型のグルメサービスのビジネスモデルだったんです。
食を通じて世界中の人をHappyに
そして開始した「Retty」は、おすすめのお店の口コミや、行きたいと思っているお店のリスト作成などを、
FacebookなどのSNSと連携しつつ、実名で行うことができます。
実名なので、ユーザーは口コミ情報をより信頼できますし、
口コミを見て行きたいと思ったお店を、リストとして保存することもできます。
すると、行きたいリストに入れられている飲食店は、そのお客さんにクーポンを出すことができます。
行きたいと思っている人へのクーポンなので、より来店への訴求力が高まりますよね。
美味しい食べ物には人をハッピーにする力があるので、そうやってRettyを通じて美味しい食べ物との出会いを増やし、
関わった人を幸せにしていけたらと思います。
2011年に2人で始めたこのサービスは、
最初はエンジニアもいなかったのでプログラミングの入門書を買って勉強しながらのスタートだったのに、
今では月間600万人以上に使ってもらえるサービスに成長しました。
ただ、「食を通じて世界中の人をHappyに」というビジョンを達成するには、まだ道半ばです。
そのため、2015年からは海外展開もスタートさせます。
日本だけではなく世界中の人を幸せにしていくため、今後もサービスを拡大していきます。
そして、日本に生まれた身として、ひとりでも多くの人を幸せにする生き方をできればと思います。
2015.02.18