美容師・商社マンを経て、BBQで独立。本物のBBQで創る「3つのわ」とは?
「本物のBBQを日本に」というコンセプトのもと、手ぶらで本格的なBBQが楽しめる、BBQデリバリー事業等を行う井川さん。元々美容師だった井川さんが、BBQに可能性を感じた背景にはどのようなエピソードがあったのでしょうか?
井川 裕介
いかわ ゆうすけ|BBQデリバリー事業、BBQ場事業の運営
手ぶらで本格的なBBQが楽しめるREAL BBQ DELIVERY等を運営する、
Real BBQ incの代表取締役を務める。
REAL BBQ DELIVERY
転勤族の父の影響でオーストラリアに
転勤族の父を持つ私は、千葉県に生まれ、何度も引っ越しを繰り返し、小学2年生から5年生の間はオーストラリアにも移住しました。幼かったため、最初は海外に住むといっても、意味がよく分かりませんでしたね。現地では日本人学校に通っていたこともあり、比較的早く馴染むことができました。
オーストラリアの滞在で一番印象に残ったのは、生まれて初めてBBQをしたことでした。家で行うのはもちろん、公園等にコイン式のBBQグリルがあり、すごく身近に環境があったんです。家族や現地の友人達と、楽しみながら食事をしていました。
その後、日本に帰国し、中学生になると、段々とファッションに関心を抱くようになりました。漠然とですが、ファッションに関わる仕事がしたいと考えるようにもなり、高校生になってからは、「無給でも良いので」と頼み込み、美容院でアルバイトを始めたんです。
実際に働いてみても熱は全く冷めず、高校を卒業後は美容の専門学校に進学し、技術を身につけてからは、長く働いていた同じ店に、美容師として就職を決めました。
美容師から営業マンへ
しかし、いざ美容師になって働いてみると、段々とモヤモヤした悩みを抱くようになったんです。業界自体、独立しないと厳しいような構造の中、「このモチベーションでやっていけるのかな?」と不安に感じてしまったんです。
日々の仕事で精一杯で、閉鎖的な環境ということも重なり、ついに25歳の時に転職を考えるようになりました。
転職先は、給料や休みの水準も考え、いわゆる営業をするサラリーマンになろうと考えました。ただ、どうせなら自分の興味のあるものを扱いたいと思い、食品を扱う商社を受けてみることにしました。
元々、料理が好きで高校を卒業した時からずっと自炊をしており、調味料等にも関心を持っていたんです。正直、試しに受けようという思いもあった1社目でしたが、無事内定をいただくことができ、そのまま転職を決めました。初めての転職活動だったこともあり、ひとまず安心しましたね。
しかし、名刺交換の仕方も分からぬ状態からのスタートのため、最初の1・2年はひたすら数をこなすことで、慣れていくことに決めました。直接店舗を周る部隊に配属になったこともあり、とにかくたくさんお店に足を運ぶ毎日を過ごしました。
BBQの時にいつも聞いていた不満
その後、3年目になると、メーカー向けの提案部隊に異動することになりました。色々なことが分からぬまま営業をしていた1・2年目に比べ、その部署に配属するようになってからは、より業務に深く関わっているような認識を持つことが出来ました。
しかし、同時に、サラリーマン特有の毎日会社の愚痴をこぼしながら飲みに行くような雰囲気には、違和感を抱いていました。そこで、その時間に自分は別の何かをしようと、簡単な副業を考えてみることにしたんです。
まずは、海外から個人輸入した自転車のパーツやスポーツウェア等の販売を始めました。すると、それなりに利益は出るものの、作業が単調で面白みがなく、これをがっつりやるのは厳しいな、と思い在庫を売り切って途中で止めることにしました。
ちょうど、そんなことを試行錯誤していた折、友達とBBQをする機会があったんです。元々、料理が好きなことや、オーストラリアの経験もあってか、自分で機材を持っていたこともあり、友人とBBQをすることは多かったのですが、その中で、気づけばいつも同じような会話がされていることに気づきました。
1つ目は、準備や片付けが面倒だということ。2つ目は、毎回同じでつまらないということでした。
片付けに関しては納得したものの、2つ目に関しては、いわゆる「焼き肉スタイル」以外にも、色々なBBQのスタイルがあるため、そこに対して、潜在的なニーズがあるのではないか、と感じたんです。
そこで、試しに土日に自らBBQを主催し、予算・人数に合わせて準備をし、片付けまで全て提供する形で、BBQのデリバリーを運営してみました。そして、「焼き肉スタイル」以外のBBQを提供してみたんです。
すると、ゲストの方にすごく喜んでもらえたんですよね。手作りの簡易なネットショップのような形で申し込みを募ったので、面識の無い方だったのですが、それでもとても楽しんでもらうことができ、それまでにない、非日常感を提供できたんです。
それからは、より一層BBQについて研究をするようになりました。調べていくうちに感じたのは、日本の飲食のレベルは高いのに、BBQのレベルはとても低いということでした。飲食店だとお店に行く場合は、良いお店に行く人でも、BBQとなると、大学生と大きくは変わらない。だからこそ、ここにニーズがあると感じたんです。
そんな背景から、仕事の傍ら副業でBBQをやってみようと決めました。
いくつものタイミングが重なり、独立を決意
そんな風に活動に力を入れていくと、ある時、ブラジルスタイルのBBQを雑誌で紹介したいという話をいただいたんです。そこで、個人的な活動がメディアに掲載されることになりました。正直、会社への見え方の心配もありながらも、私服で眼鏡も帽子もあるし、大丈夫だろう、と考えていました。
しかし、後日会社の先輩にその誌面がばれてしまい、副業のことで呼び出されてしまったんです。会社の制度的に禁止はされていなかったものの、どちらに注力するのか選択した方が良いとの助言をいただきました。
ただ、時期が9月ということもあり、そこですぐ会社を辞めてBBQに力を入れる、というのは難しいタイミングでした。しかし、一方で、次の4月以降の展開に手応えを感じているのも事実でした。
また、約半年ほど個人の副業としてBBQを行う中で、500人ほどのお客さまと接し、その中には協力してくれるという仲間も現れたんです。それに、会社で呼び出しをうけるまでの直近の3ヶ月は収入が会社を超えるまでに至っていたんですよね。
そんな風に色々な要素が重なったこともあり、会社からの話を受けたあと、半年準備をして、独立することに決めたんです。
BBQを日本のカルチャーに
現在は、「本物のBBQを日本に」というコンセプトのもと、Real BBQ incという会社を立ち上げました。
この会社では、手ぶらで参加でき、普段は味わえないBBQを体験できる、REAL BBQ DELIVERYという事業や、千駄ヶ谷等で運営している、こちらも手ぶらで参加できるBBQパークの運営事業、TV、雑誌等のBBQ企画監修、フードデザイン等を展開しています。
お客様は会社のグループやママ会など幅広く、夏はもちろん、春・秋も最適な気温で多くの方に利用していただいています。まだまだ世界中の面白い文化がたくさんあるので、その辺りを提案したいという気持ちもありますね。
また、パークに関しても、地産地消を行う地方のパークや、日本酒に合わせたパーク等、ストーリー性のある「場」作りをしていきたいと考えています。
そしてこれらの事業を通して、「3つのわの創造」をしたいと考えているんです。
まずは、お客さん同士の輪。そして、新しい日本の和。最後に、非日常の“Wow”
ただの出張BBQ屋さんではなく、BBQを総合的に作っていくことで、これらの「3つのわ」を創造していきたいです。
最終的には、BBQを日本のストリートカルチャーとして根付かせたいという思いがあります。そのためにも、まずはインフラを整えることから始めていければと考えています。
2015.02.09