気軽な運動で、身体も心も健やかに。ママも、怪我をした人も、障がいがある人も。

千葉県で、リハビリ専門クリニックや障がいを持つ人の多機能型サービス事業所、子連れママ対象のレッスン等、様々な場所でエアロビクスのインストラクターを務める井尻さん。日々運動を続ける中で、根底に感じている「身体と心のつながり」とはどのようなものか、お話を伺いました。

井尻 花代

いじり はなよ|エアロビクスインストラクター
千葉県でエアロビクスインストラクターとして、様々な人に運動の大切さを教える。

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身体を動かすのが好き


私は千葉県で生まれ育ちました。小さな頃から弟や近所の子を従えてイタズラばかり、運動会ではリレーの選手、そんな活発な子どもで、陸上クラブにも入っていました。

しかし、身体が小さく、また木登りや逆立ちが得意だったこともあり、中学では器械体操部に入ることにしました。顧問の先生はママで子どももいるのに、たまに練習に来てはサッとバク転とかしていくカッコいい人で、私も、将来子どもができても運動できる状態でいたいと思いましたね。

中学時代は部活に打ち込み、部長も務めるほどでした。しかし、そこまで成績が良いわけではなかったので、体育科に進もうとは思わず、家の近くに新しくできた高校に進学することにしました。そこは新設校だったので器械体操部はなく、まずは同好会を立ち上げ、2年目からは部活として活動をしていました。

また、身体を動かすのと同じくらい絵を描くのが好きだったので、将来は絵本作家になるために美術系の学校に進みたいと考えていました。しかし、親からはそれでは食べていけないと反対されてしまったんです。

そこで、改めて自分が好きで得意なことは何かを考えた時、それは運動だったので、スポーツインストラクターになるために通う専門学校に行くことに決めました。大学生にはチャラチャラしたイメージを持っていて、親のお金を使って4年間遊ぶのは違うと感じ、それならしっかりと2年間勉強して社会に出ようと思っていたんです。

産後ママにとっての運動


学校では運動の他にコーチングや運動生理学なども学び、ゼミではエアロビクスを選択していました。そして2年を終えて卒業してからはスポーツクラブに就職しました。そこでは、苦手だった水泳の他、エアロビクスやマシンジムの指導をしながら4年程働き、結婚を機に神奈川県に引っ越しするため、24歳で仕事を辞めることにしました。

と言っても、スポーツインストラクターはフリーランスとしてレッスンを持つ働き方もできるので、仕事はしようと考えていました。しかし、妊娠や出産もあり、しばらくは働かずに過ごすことになり、運動もあまりできない生活は、自分の性には合わないと感じましたね。

その後、子どもが1歳になる位の時、ママ友だちからサークルでエアロビクスを教えて欲しいと言われたのをキッカケに、エアロビクスのレッスンを再開することにしました。そこはママが伸び伸びできる場所で、子連れで来て簡単なエアロビクスをすることで、身体と心どちらもほぐされていくんです。私も子どもを連れて行くし、メンバーのママたちも子どもを気兼ねなく連れて来れるので、子育てのちょっとしたリフレッシュになっていました。

しかし、夫の仕事の関係で千葉に戻ってからは、また子育てに専念するようになり、ストレスを感じるようになっていきました。

それまでは、自分と子どもはある種一体化した存在で、子どもは自分と同じ思いを共有してくれると思っていました。しかし、2歳頃になると自我が生まれ、反抗期がやってきたんです。思い通りにはならないし、言うことは聞いてくれない、そんな状況にまいってしまい、このままでは自分が子供に何をしでかすか分からず、心のバランスをとるために仕事も少しずつ再開することにしたんです。

身体と心のつながり


そして、2人目の子どもを妊娠したタイミングで仕事は一旦辞めることにしました。ただ、生まれた子どもはダウン症を持って生まれたこともあり、それからは子育てに必死でしたね。早期療育を行ったり、成長を促すことができそうな場所にはひたすら連れて行きました。

分からないことだらけだったし、1人目の子は成長が早かったこともあり、心配でたまりませんでした。ただ、自分がマイノリティの立場に立つことで、今までとは違った視点で物事を見られるようになったし、日々の生活がいかにありがたいものなのか、肌で感じることができました。

そんな風にとにかく必死に色々なことを模索していると、母子通園していた発達支援センターの先生から、この子は成長が順調だから様々な刺激のある保育園にも平行で通ったほうがいいと言われたんです。そこで、保育園に通うには両親が共働きでなければならないので、私も仕事を再開する必要が出てきました。

そして、リハビリ専門のクリニックでエアロビクス指導を始めました。このクリニックは、怪我をしたスポーツ選手のような人だけでなく、病気などで手術をした後、入院期間が終わってしまった人がリハビリをするために通っていました。そのため、スポーツクラブで教えるのとはまた違い、激しいエアロビクスをするわけでなく、自分のできるところから始め、みんな自分の身体の機能を確かめながら動いていくんです。

ここではずっと運動できなかった人が動けるようになると、身体だけででなく心まで元気になっていくのを目の当たりにすることができました。動けること自体が元気であることなんだって。逆に、元気がないと動く気はしないけど、身体を動かすことで頭はスッキリして気持ちも上がるんですよね。そんな身体と心のつながりを実感したんです。

様々な形での運動


子育てが少しずつ落ち着くとともに、色々な仕事が増えてきました。その1つが、知的障害や発達障害等を持つ人向けのエアロビクスのクラスでした。これは、多機能型福祉サービスの1つのアクティビティとして提供するもので、体力づくりのためのエアロビクスです。参加者の多くはもう弾けんばかりの笑顔を見せてくれ、カウントの掛け声もみんな一緒にしてくれるんです。

色んな人がいるので、楽しそうにしてないのかなと思う人もいるけど、レッスンに来てくれるというだけで、その人なりに楽しんでいると分かり嬉しかったですね。学校を卒業してしまうと、運動をする機会がほとんどなくなってしまうので、若い人は体力が有り余っているんですよね。

他にも、小学校で夏場に水泳を教えたり、スポーツクラブでのエアロビクスレッスンをしていました。ただ、レッスンを持つだけでなく、ジムでも働き始めることにしました。レッスンだけだと継続的に運動のサポートをしていけない一面があり、もっと個人に合ったサポートをしたかったんです。適切なサポートがあるとより動けるようになり、運動を続けるモチベーションにもなるんです。

そうやって様々な場所でインストラクターとして働いていき、3人目の子どもを妊娠しました。3人目ともなると流石に慣れてきて、仕事は直前まで続けることにしました。

それは、リハビリ専門クリニックの医師に、「あなたの子どもとして生まれてくるなら、インストラクターをしていることが普通のあなたの生活に、ついてこれる生命力を持った赤ちゃんじゃないと、生まれてきた後も厳しいんじゃないか」と言われたことも影響しています。

実際にマタニティビクスに行って運動してみて、自分がやっているレッスンの動きと同じ程度の運動量ということも確認していたので、スポーツクラブ以外の仕事は妊娠中も続け、リハビリ専門クリニックでは出産の1週間ほど前まで続けていました。

運動して生きる


今も3児の母として子育てをしながら、リハビリ専門クリニック、知的障害や発達障害等を持つ大人と子どものクラス、夏場の小学生向けプール指導に加えて、子連れのママ向けのエアロビクスクラスでインストラクターとして働いています。

子どもが生まれたばかりだとどこに行くのも大変なので、子どもを連れてきてもらってママはエアロビクスでリフレッシュできる、そんな環境を提供しています。子育て中は身体中に負担がかかっているので、少し動くだけでもだいぶ身体にはいいんです。

また、初めての出産を終えたばかりの人だと子育ての不安もあると思うので、それを相談できる場としても使ってもらっています。ママが元気になると、家の中でパパや子どもにも優しくすることができるので、そうやって家庭が円満になるきっかけが作れたらいいなと思っています。

今後は、運動はより心とつながっていることを意識して、誰にとっても必要なものだし、構えずにできる簡単なものだということを発信できればと思っています。散歩するのと同じように、運動は心の状態を変え、今の場所から抜けだせるものです。それを気軽にできるということを伝えていきたいです。

ただ、運動じゃ解決できないこともあるし、そもそも運動したいという気持ちにならないことだってあります。そこで、心の健康にも欠かせない一つの解決策として食育についても少しずつ勉強をしています。

さらに、障がいを持つ人が運動する機会を持てるように、チームを作れたらと思っています。私がエアロビクスを教えることができるように、かけっこを教えている先生もいて、そうやってみんなが自分の得意なことを教えることができるチームをつくりたいです。運動することで外に出ることもできるので、そういう機会をどんどん増やしていきたいです。

「動く」ことは「生きる」と同義で、怪我をした人、障がいを持つ人、ママ、心が疲れてしまった人、誰にとっても大切なモノ私はずっと運動をしてきたからこそ、できることもあると思うので、より多くの人に運動をする楽しさや、生きる上での大切さを伝えていけたらと思います。

2015.01.26

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