「食」から人を幸せに!土木工学を学んでいた私に訪れた、転機とは。

新卒でクックパッドに入社された岡根谷さん。会社だけでなく、社外でも「食」や「おいしい 」の追究を幅広く行っています。大学院まで土木工学を専攻していたにも関わらず、食をテー マとする会社に入社した背景とは?お話をお伺いしました。

岡根谷 実里

おかねや みさと|料理レシピサイトの企画、運営
2014年春から、クックパッド株式会社に勤務。
食から世界を幸せにしたいと考えて行動している。

未知なるものへの関心


私は小さいころから飽きっぽい性格で、やりたいことをやらせてもらっても、すぐに飽きて他のことに興味が行ってしまうような子どもでした。ただ、やりたいことはたくさんあって、知らないことに対する関心は強い子だったような気がします。

高校までは長野で暮らし、大学進学を機に東京に出ました。高校2年生の時に、親に連れられて東京大学のキャンパスツアーに参加し、それまで私の手の届かない存在だと感じていた東大の学生も、意外と普通の人間なんだと思ったんです。せっかく受験するなら行けるところまで行ってみたいと思い、猛勉強をして東大に合格し、進学しました。

大学1年生のとき、台湾で開かれたアジアの学生の国際交流イベントに日本代表として参加する機会を得ました。そこでアジアの優秀な学生たちと交流し、異なる考え方や暮らしを知って、自分の知らないことがたくさんあるなぁと感じました。

そこから、海外に対して関心を持つようになったんです。海外の中でも、より知らないことが多い途上国に関心を持ち、途上国に関わりを持つ国際協力の分野でインフラ整備をすることで人の幸せを作りたいと考え、学部選択の際に土木工学を専攻することに決めました。

勉強する中で、海外への関心はますます強くなっていきました。しかし、体育会の卓球部に所属していたので、実際に足を運ぶ時間がなかったんですよね。そのような状況に対して葛藤したこともありましたが、飽きっぽい自分が4年間部活をやめずに続けられたことは自信になりましたね。

念願の留学へ


大学卒業後はそのまま土木工学専攻の大学院に進み、学部時代から行きたかった留学をすることにしました。自分が知らない土地で挑戦してみたいという思いのもと、協定校の中で一番知らないと感じたウィーンに行くことに決めました。

ウィーンでは、毎日刺激があって面白かったですね。最大の学びは、主体的に動くことで道は切り開けるということです。たとえば、修士の学生は研究室に自分専用のデスクが割り当てられなかったのですが、「研究のためにデスクが欲しい」と主張したら、ルールを曲げて受け入れてもらえたのです。思いを伝えて自分で道を切り開いていくということの面白さを学び、主体的に動いて学びや経験を広げていきました。

国連機関でのインターンシップも、主体的に動くことで実現したことの一つです。留学開始当初の約束では、2学期間大学に通うことになっていましたが、国際協力に興味があるからウィーンに本部のある国連機関のインターンシップに応募したいと相談し、大学側に認めてもらいました。そうして選考を経て、正式に国連機関でインターンとして働けることになりました。

決まりに従って生活しているだけでは得られなかった経験だと思います。自分が意志を持って行動すれば、道は開けるんだなと感じました。

ケニアで気づいた「幸せ」とは


ウィーン本部でのインターンシップでは、国際協力の仕組みについては学ぶことができる反面、実際にプロジェクトが行われている現場からは遠いと感じました。

リアルな途上国の現場を知りたいと伝え続けていたところ、ケニアのプロジェクトを担当している方の計らいで、ケニアで働かせてもらえることになりました。ケニアでは、農家の家に一緒に住まわせてもらい、寝食を共にしたんです。

そこで直面したのは、生活を良くすると思っていた土木工学で人は不幸にもなりうるという現実でした。

滞在していた町で、ある日突然、町の真ん中を通る大型道路の計画を知らされたんです。市場も学校も警察署もみんな潰されてしまうという事実に、町中の人が憤慨し、悲しみ、騒然としました。巨視的に見れば、物流がよくなって、生活水準が上がると考えられるのですが、一人ひとりの町の人は、自分たちの日々の生活が壊されることに怒っていたんです。

良かれと思ってインフラを整備しても、人を不幸にすることがあるんだなぁと感じました。これまで、人の幸せをつくろうと考えて土木工学を勉強していた身として、幸せって何なんだろうかと深く考えさせられました。

食分野に携わりたい!


ただ、そうした開発に対して反発している人たちも、夕食時にみんなでおいしいご飯を囲んで食べているときは幸せそうにしていたんですよね。この時、おいしいご飯を食べる幸せというのは、国を超えて人間に普遍的なものなんだなぁと感じたんです。それから、すべての人を幸せにすることができる「食」に関心を持つようになりました。

約1年の留学期間を終えて帰国してから、私の就職活動が始まったんです。最初は国際協力の組織や土木系の会社で働きたいと思っていましたが、ケニアで抱いた「食」に対する関心があり、また、私自身の特性として、大きな組織で物事を推し進めていくことより小さいところから切り拓いていく方が楽しいんじゃないかとアドバイスされたこともあったので、スタートアップの会社にも目を向け始めました。

そうして、クックパッドに出会ったんです。「毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす」という理念を知った時、これだ!と思いました。やっぱり、人を普遍的に幸せにできる「食」という分野に携わりたいと思ったんです。

その年の新卒採用は終了していたのですが、選考を受けさせていただき、留学を終えた1年後の2014年の春に入社しました。

「食」から人を幸せに


私はディレクター職として入社したのですが、今はサービスの裏側の仕組みに興味を持ち、エンジニアリングの勉強もしています。

社内での仕事とは別に、個人的にも「おいしい」ということについて追究しています。

例えば、日本人みんな唐揚げって「おいしい」と思っているじゃないですか。嫌いな人ってあまりいないなぁと。それなのに、海外ではお寿司は人気だけど唐揚げってなんで人気じゃないんだろうと思ったんです。

それで、知人に紹介された日本唐揚協会という団体に参加して情報収集してみたり、寿司職人に話を聞きに行ってみたり、また海外に足を運んで異文化の人たちの「食」に対する考えに触れたりして、「おいしい」という幸せについて考えています。

そうする中で今考えていることなんですが、「おいしい」って、単に味だけではなく食べる人の意識に依る部分が大きいんじゃないかなと思うんですよね。

おいしいものはたくさんあるけれど、食べている時の幸せ感とか、食材に込められた思いを味わうこととか、そうしたことに意識を向けることが、「おいしいと感じること」につながると思うんです。

「おいしい」という食の幸せは一人ひとりが創り出すことができるはずで、そういう仕組を創りだして「食」から人を幸せにする存在になりたいですね。

2015.01.22

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