今のまま、人生を楽しく。自然染めとフェアトレードで見えた生き方。

「自然染めとフェアトレード」をテーマにした商品の販売を行うお店を営む傍ら、公立の学校に通う子どもたちにシュタイナー教育を用いて英会話を教えている泉田さん。自然染めやシュタイナー教育に興味を持ったキッカケや、その背景についてお話を伺いました。

泉田 幸絵

いずみだ さちえ|自然染め・フェアトレードをテーマにした「Lopeha」運営
公立の学校に通う子供たちにシュタイナー教育を用いて英会話を教える傍ら、
「自然染めとフェアトレード」をテーマに、土に還せる天然染料を使った商品やフェアトレードで仕入れた雑貨などの販売を行う、
「Lopeha」を運営している。

Lopeha ネットショップ
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みんなが同じ道に進むことへの違和感


私は神奈川の横須賀で育ったのですが、両親の仕事の都合で小学校3年生から5年生までの3年間をシンガポールで過ごしました。

最初は英語のコミュニケーションに苦労しましたが、親にも「とにかく遊びなさい」と言われ、
現地で仲良くなった韓国人の子に引っ張られ、肌の色関係なく色々な国の子と遊んでいるうちに、
気づいたら言葉も喋れるようになっていて、「人には国境なんてないんだ」と幼ながらに感じていました。

その後、小学校6年生の時に帰国し、地元の横須賀の公立の中学校に進学したのですが、
日本はシンガポールと比べて笑顔の少ない国だと感じ、どことなく違和感を覚えるようになっていきました。

また、バドミントン部に所属していたのですが、中学2年生の時に、先天性の膝の病気で運動が全くできなくなり、
手術をすることになってしまったんです。

そのため、あまり学校に行けなくなってしまったり、術後も一人だけバスで登下校をしたりと、
皆と同じことができなくなっていく一方、学校や世間では「団結」などと言って、
みんなが同じことを同じようにやることを求められる文化がもの凄く嫌でしたね。

また、受験の時期になると、みんなが迷わず一斉に受験勉強を始める様子を見ているうちに、

「なんでみんなと同じ道に進まなければならないのだろう?」

と疑問を持つようになっていきました。

そこで、中学校3年生の時に親に「海外の高校に行きたい」という気持ちを伝えて、
ニュージーランドの高校に進学することにしました。

世界が変わったシュタイナー教育との出会い


入学後は「アイランダー」と呼ばれる、パプアニューギニアなどの島国から来た人や、
現地の田舎町から来た人たちと一緒に寮で生活をしていたのですが、
初日にいきなり、「I hate Japanese」と陰で言っているのが聞こえてしまい、
思った以上にうまくいかず、辛いこともたくさんありました。

でも、その後生活をしていくと何事もしっかりと話し合えば通じることが分かったし、
常に笑顔でいることが大切だということを学びましたね。

ところが、その学校には日本人が多く、
なるべくニュージーランド人の友達と一緒に過ごそうとしていても関わりを持つことは多く、
「これでは日本にいるのと変わらないな」と思ってしまったんです。

また、授業は選択制だったため自分の好きな科目ばかりとってしまい、
嫌なことから逃げてしまっているような気がして、このままではいけないと思い転校することにしました。

そして、他の学校を探す中でシュタイナー教育を行っている学校に出会い、
独特の校舎や授業内容に惹かれ、そのシュタイナー学校へ移ることにしたんです。

そこでの教育は今までの勉強とは全く別物で、とにかく実践を重視した教育方針でした。
授業は選択制ではなく、ほとんどの科目が試験の代わりに、
自分が興味を持ったことをとことん調べてレポートにまとめるスタイルで行われていて、
こんなに勉強って楽しいものなのかと思いましたね。

特に、経済の授業で、世界には自分の労働に見合った給料をもらえていない人が存在することを知れたことが私には衝撃で、
そこからフェアトレードに興味を持ち、フェアトレードのショップでボランティアも始めました。

また、日本の学校では苦手だった美術などの授業も受けなければならなかったのですが、
それまでは苦手で一切描くことができなかった絵も、心向くままに描けるようになりましたね。

シュタイナー教育や個性豊かな先生たちが、私の人生を変えてくれたと感じました。

草木染めの現実に衝撃を受けました


高校を卒業した後に日本に帰国したのですが、自分はどの道に進むべきか考えるうちに、
ご飯も食べられないほど悩むようになってしまいました。
発展途上国と関わりたい、写真を勉強したいとか色々興味はあったのですが、どれが本当の道か分からなくなってしまったんです。

そんな状態が数か月ほど続いた時に、母から京都の禅寺体験を勧められたので行ってみることにしました。
すると、座禅や作務(草むしりや掃除など)をしながら規律のある生活を行っていくうちに、元気が出てきて、
ニュージーランドでも感じた日本文化の素晴らしさを改めて体感することができたんです。
そして、その日本文化をより実践的に学ぶために、茶道や華道などを勉強できる短期大学に入学することにしました。

さらに勉強する中で茶の湯の歴史に興味を持ったことから、日本人として日本の歴史をもっと知りたいと思うようになり、
京都にある龍谷大学の日本史学専攻に編入し、仏教や日本史などを勉強するようになりました。

そんな中、ある時下宿の隣にある藍染め公房が閉じることになったのを知り、
好奇心から一度中を見学させてもらったのですが、化学薬品のボトルがいくつも並んでいて、
布を染めるとそれらが排水に流されてしまうことに衝撃を受けたんです。

安全で環境に優しいと思っていた草木染めが、そうでもないという事実を知った時はショックで、
本当に安全な自然染めとはどんなものか、興味を持つようになっていきました。

また、5回生の時には小学生の頃から憧れていたイギリスに交換留学をして、
シュタイナー教育で興味を持っていた写真の勉強もしました。

体と自然に良い草木染めを


その後、卒業して数か月経った頃に、
地球一周しながら国際交流の船旅をコーディネートするピースボートというNGOに関わる、
語学学校のスタッフとして働くことにしました。

シンガポールで暮らしている時に、言葉が通じることで人は分かりあえそれが平和につながると感じていましたし、
私自身も平和活動に関わりたいという思いがあったので、ピースボートが行う平和教育に関わりたかったんですよね。

ただ、その学校では様々な年代の方が対象で、
私は、シュタイナー学校を卒業した頃から、発展途上国や、私のように学校を楽しめない子どもたちの教育にも関わりたいという思いがあり、
3年弱働いたタイミングで英会話学校のスタッフを辞め、
ニュージーランドで1年間シュタイナー教育の教員養成を受けることにしました。

そして1年間の養成を終えた後は、やっぱり昔の私の様に、公立の学校に息苦しさを感じている子たちの力になりたかったので、
日本に帰国して、公立学校に通う子どもを対象にシュタイナー教育を用いた英会話クラスを開いたり、
土曜日だけシュタイナー教育のクラスを受けに来る学校でエポックと手仕事を教えたりするようになりました。

また同時に、少しずつ始めていた草木染めで染めた衣服の販売を開始することにしました。
その素材として、体や自然に良いオーガニックコットンを選んだのですが、
本当に安全でフェアなものを扱うためには、製造工程や仕入れのルートもちゃんと自分が知らなければならないと思いました。

そして、色々と調べる中で辿り着いたのが、ウガンダのオーガニックコットンでした。
ただ、仕入れようとして現地の会社に連絡してもなかなか返事が来ず
最終的には電話で連絡を取り現地に行って直接お願いをして、オーガニックコットンを仕入させてもらえることになり、
それがひとつのきっかけでアフリカからフェアトレードで現地のエコ雑貨や生地などの仕入れも行うようになりました。

今のまま、毎日を楽しく


そんな背景で、現在は公立の学校に通っている子たちに、シュタイナー教育を用いて英語を教えながら、
「フェアトレードと自然染め」をテーマにした「Lopeha」というオンラインショップを開き、
天然染料を使って染めたオーガニックコットンなどの天然素材の衣服や、
現地からフェアトレードで仕入れたエコ雑貨などの販売を行っています。

アフリカのママ×東北のママたちのコラボ商品として、タンザニアなどのマーケットでママたちから購入した生地などは、
東北の震災被災地の女性の方と一緒に少しずつ作っているのですが、
私自身、ほとんど裁縫の経験や知識がないので、支援をするというような偉そうな立場ではなく、
むしろ力を借りて一緒に取り組みながら、助けていただいていることの方が多いですね。

今後は、このような被災地の方々だけではなく、もっと障がいを持った人たちとも関わりながら、
製品を作っていきたいと考えています。

元々私の父が特別学級の教員をやっていた関係で、障がいを持つ子どもと触れ合うことがあり、
それがきっかけで福祉に興味を持つようになりました。

イギリスやニュージーランドに留学をしていた時、シュタイナーの障がい者施設でボランティアをしたことがあったのですが、
そこでは、障がい者と健常者の方が共同生活をしていて、その様子を見たときに

「障がい者の人たちも私たちも、みんな一緒だ」

と思ったんです。
私は「障がい」という言葉はあるけれど、みんな何かしら障がいを持っていると思いますし、
「人」という意味ではみんな同じだし、それは個性の一つだと思うんですよね。

でも、日本ではなかなかそういった方の個性や才能と直接触れ合う機会が少ないので、
私の活動を通じて、少しずつその間にある壁をなくしていきたいと思っています。

ただ、私は何かに固執するということが苦手な性格なので、
「こうならなければならない!」と変に頑固にならず、適度に緩さを持ちながら、
今のまま、毎日を楽しく、心向くままワクワクしながらすごしていきたいですね。

2015.01.18

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