音楽を通じたコミュニケーションで人生豊かに。音楽とITを使って実現したいこと。

学生時代よりITベンチャーの立ち上げに関わり、新卒では大手レコード会社に入り音楽業界を知った林さん。現在は、自分自身のルーツである音楽とITを掛けあわせた事業で独立されましたが、それはあくまで「コミュニケーションを豊かにするため」だと語る背景にはどんなストーリーがあったのか。お話を伺いました。

林 潤

はやし じゅん|音楽×ITサービスの運営
ITベンチャー、大手レコード会社を経て独立し、株式会社Spincoasterの代表取締役を務める。
Spincoaster
株式会社Spincoaster

音楽とIT


私は東京で生まれたのですが、転勤族の家庭だったので、小さい頃は島根県で育ちました。
田舎だったので、友人と山で秘密基地を作ったり、カヌーやヨットを習うような自然児でしたね。
その後小学4年生の頃に岡山に引っ越しました。
サッカーや野球、バスケ、他にもピアノも習い始めていき、何かやりたいと思ったらすぐにその環境に飛び込んでいました。
ピアノは「バイエル」という教本に掲載されている決められた曲を練習しなければいけなかったので好きになれなかったのですが、
エレクトーンは自由に好きな曲を演奏できるので好きでしたね。

そして、小学校6年生の頃に、自分専用のパソコンを買ってもらいました。
パソコンを使って、当時流行っていた携帯電話の「着メロ」を自分で作ってWEBサイトに公開していろんな人から反応をもらったり、
音楽好きが集まるチャットルームで音楽情報を交換することで、
自分より1回りも2回りも年上の人から素晴らしい音楽をたくさん教えてもらいました。
さらに、中学生になるとギターを始め、高校ではバンドを組んでいました。
一人でギターを弾くよりも、趣味の合う友人と熱中しながらバンドで音楽を表現するのが楽しかったです。
同世代の人と比べても、音楽を通じたコミュニケーションに恵まれた人生を歩んでいました。

学生ベンチャーにジョイン


高校卒業後は大学進学のために上京しました。
入学してからは軽音サークルに入っていたのですが、音楽の趣味が合う友人と出逢うことができず、高校時代ほど熱中できませんでした。
軽音サークルの飲み会の帰りには虚しい気持ちになり、何のために上京したのかを自問自答する日々が続きました。

そんな生活を送っていた時に、岡山時代の幼なじみが、学生起業してIT会社を新しく立ち上げることを知りました。
ITにも興味があったので、その会社の方が熱中して取り組むことができそうだと思い、軽音サークルは辞めてその会社で働き始めることにしました。
実際に働いてみると、会社は立ち上げたばかりなので、誰が管理するわけでもなく、
何もしなければ当然何も動かないので、仕事は自分で考えて、自分で創るものだと学ぶことができました。

その会社で働くことは楽しく居心地も良かったので、そのまま働き続けることも考えたのですが、
改めて自分がやりたいことを振り返った時に、自分のルーツである音楽とITを組合わせたサービスをやりたい。
その分野に一生を捧げ、良い音楽に出逢った時の感動を多くの人に届けたいという気持ちが強くなりました。

いきなり独立することも考えていましたが、音楽業界のことを知らないでいきなり音楽ビジネスを始めるのはあまりにも無知だと思い、
新卒という特権も活かして、大学卒業後は縁があった大手レコード会社に就職することにしました。

音楽業界で働く


レコード会社ではITに近い部門で企画の仕事がしたいと面接時から伝えていたので、
まずは、アーティストの配信商品を扱っていて、WEBサイトのディレクションなどもできるセクションに配属になりました。
新卒入社でしたが、前の会社で3年働いていたので、ほとんど転職という感覚に近かったです。
ベンチャーと大企業では、求められる常識が全く違うところが多くあり、入社してから慣れるまでは本当に苦労しました。

企画の部署に異動することができた4年目以降は、ひたすら新しいアイディアを考えていたので、仕事は楽しかったです。
やらされ仕事は熱中できないことがあったりするのですが、自分でやるといって始めた仕事は熱中できるので、 それこそ四六時中働いていました。
個人の力ではできないような企画も会社の力を使えば実現できるので、非常にやりがいがありました。

ただ、企画の部署に異動する前までの、マーケティングの仕事はきつかったです。
いかにメディアの枠を抑えて自社のアーティストを紹介してもらえるかが勝負で、
メディア枠の露出回数を増やすことが仕事の目的になっていることが精神的に苦痛でした。
そういった経験の中で、世の中で露出されているTVやラジオ、雑誌、多くのメディアは、
アーティストの所属事務所、もしくはレコード会社一押しの新曲紹介が中心で、
メディアが楽曲の良し悪しだけで判断というよりも、話題性や政治的案件を優先して取り上げる傾向にあることに気付き、
問題意識を感じるようになりました。

音楽×ITで独立


この問題を少しでも解決できないかと考え、個人が純粋に好きな音楽を紹介できるWEBメディアを一人で立ち上げることにしました。
そして、最初はプログラミングやデザイン全て一人で行い音楽メディアSpincoaster(スピンコースター)を作りました。
「心が震える音楽との出逢いを」というコンセプトで作ったこのサイトでは、
DJの役割を担う音楽キュレーターが、「本当に良いと思う楽曲のみを選曲して記事にする。」 
音楽ファンが、「好みの音楽キュレーターの選曲した記事をチェックできる。」 
そのような良い楽曲と音楽ファンを繋ぐサービスです。

サイトをオープンすると、次々と色々な人がコンセプトに共感してくれ、手伝ってくれるという人がどんどん集まっていきました。
オープンした半年後には20名ほどが集まっていました。
元々は会社で働きながらサイトを運営していく予定だったのですが、
大手会社では中々やりたくてもできない、音楽とITを掛けあわせた色々なアイディアが浮かんできたことで、
本気でやっていくならもう独立するしかないと考え、6年働いた会社を退職して独立することにしました。

この会社では音楽メディアだけではなくいろんなアプローチで
「音楽を通じた人と人とのコミュニケーションを豊かにしていきたい」と考えています。

今では、スマートフォンアプリやアーティストサイトの制作、
ウェアラブルデバイス(すれ違った人と音楽プレイリストが交換できるサービス)の開発、
厳選したアーティストを集めたライブイベント開催や高音質ミュージックBARの運営など、幅広く事業を展開しています。

ハイレゾとアナログが楽しめる高音質ミュージックBAR


Spincoasterの事業で今一番ホットな話だと、2015年3月下旬を目標に、
ハイレゾとアナログが楽しめる高音質ミュージックバーを代々木・新宿駅徒歩4分の場所にオープンする予定です。
そして、クラウドファンディングサイトでも一般の方からの出資も募集開始しました。

音楽の魅力は、例えば桜の魅力を伝えるのと同じように、WEBというオンライン上で記事や文字に書いているだけでは多くの人に伝わらないので、
花見会場のように、まずはリアルの場でミュージックバーという音楽を体感できる場を作り、
その魅力に気づいてもらえる人を増やしていけたらと思います。

音楽CDの売上が低迷していると言われますが、昔はコミュニケーションツールとして音楽が機能していた部分が、
今ではそうなくなっているものがあるだけで、
新たに今まで以上にコミュニケーションツールとして機能するものを生み出すことができれば、音楽業界全体が盛り上がると考えています。

これからの時代にあった方法で、
最高のコミュニケーションツールである音楽を多くの人の生活に届け、その人の人生を豊かにしていけたらと思います。

2015.01.12

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