人は、人の力で幸せになる。元フリーターが笑顔を作る美容師になった理由。

「笑顔をつくること」を追求する美容師として働く廣瀬さん。高校を3ヶ月で中退しフリーターとして目標もやりたいこともない状態だった廣瀬さんが、天職だと思える美容師にたどり着くまでには、どんな背景があったのでしょうか?お話を伺いました。

廣瀬 幸奈

ひろせ ゆきな|美容師
和歌山県にある美容室nest B’WAVEの店長であり、スタイリストとしても活動している。

B’WAVE

高校を3ヶ月で中退


私は京都で生まれました。
母子家庭で育ち、母親が働いていたこともあり、小さい頃は1人で遊ぶことが多かったですね。
そのため、母親を喜ばすために勉強をしたり、おこずかいを貯めてプレゼントを買ったり、気を引くような性格になっていきました。

中学に入ると、美容に興味をもち始め、
女に生まれたからには美しくなることを楽しまないと、と思うようになり、
人をきれいにする仕事は素敵だなと感じるようになりました。
しかし、私とは別の世界で、無理だろうなと諦めてしまい、目指すというところまでは至りませんでした。

その後、高校に入学してからは、学校にほとんど行かずに、ファミレスのアルバイト中心の生活を送っていました。
目標もやりたいことも特になかったし、今が楽しければそれでいいと思っていたんですよね。
だからこそ、途中で学校に通う必要性を感じなくなってしまい、結局、入学後3ヶ月で中退することにしたんです。

それからは、家を出て一人暮らしをすることを余儀なくされ、全て自分のお金で生活しなければいけなくなりました。
元々自由が欲しかったので、特に抵抗はなかったものの、
思っていたよりもお金が必要だったので、アルバイトを掛け持ちし、
朝8時から夜9時まで、がむしゃらにお金を稼いでいました。

しかし18歳になり、周りの友達が就職等をしていく中で、

「私もこのままずっとフリーターを続けるわけにはいけないな」

と思い、将来のことを考え始めるようになったんです。

そこで、自分の好きなことを考えると、服を買うことだったので、
アパレルの仕事をしようと思い色々調べてみたのですが、
何か違うな、という感覚があり、結局諦めることにしました。

そして、同じようにもう1つ好きなことで出てきたのが、美容室に行くことだったのですが、
フリーターの私には絶対に無理だと思い、悩む日々を過ごしました。

美容師との出会い


そんな毎日を過ごしていた19歳の時、たまたま美容師として働く人と知り合ったんです。
そこで、

「美容師って人をきれいにしていてにすごいよね」

という話をしてみると、

「下積み時代は大変だけど、やろうと思えば君にもできるよ」

と言ってくれたんですよね。

一緒にいる中で、その人はいつも楽しそうだったし、
その言葉を貰ったことで、私にも美容師になれる可能性が見えた気がしました。
やっと探していたもので出会えたような感覚でした。

正直、自分の美容師像は想像できなかったですが、
それでも、楽しそうだと思ったので興味本位で飛び込むことに決めたんです。

そして、早く1人前になりたかったこともあり、
21才の時に3年間通信制の美容師の専門学校に入学して、並行で美容室で働くことにしました。
全日制の学校だと2年で卒業、2〜3年の下積み期間を経てデビューするので1人前になるには4年〜5年かかります。
しかし通信制の学校は、美容室で働いているか、内定をもらっていることが入学の条件だったので、
休みは少ないですが、免許が取れるのと同時に美容師としてデビューできたんです。

授業料も生活費も自分で全てやりくりしなければいけなったので、
金銭的にも通信制なら美容師になることができると思ったんですよね。

誰かの笑顔をつくりたい


その後、「おもてなしや優しさには不正解はない」と話す社長の考え方に共感した美容室に就職し、
実際に美容師として働き始めることになりました。

入社した頃は、床を掃除することしかできなくて、早く先輩の役に立ちたいと思いで一杯でした。
ところが、働き始めて半年も経たない時に、
当たり前のことができていなかった私のミスで、あるお客様がその後来店されなくなってしまったんです。
お客様や先輩たちに申し訳なさを感じて相当泣きましたし、辞めた方がいいのではないかと思いました。

しかし辞めても償えるわけではないし、先輩から、

「これだけ1人のお客様を不快な思いをさせて帰らせたなら1人でも多くのお客様を喜ばすことに専念した方がいいんじゃない?」

という言葉をもらい、その通りだと思って続けることに決めたんです。
そして、その後も仕事を続けていくと、ある時、初めてお客様に

「シャンプー気持ちよかったよ、ありがとう」

と声をかけてもらえたんです。
それがとても嬉しくて、美容師の仕事ってこんなに楽しいんだと感じましたし、

「次からもシャンプーをお願いしたい」

と言われて、人に必要とされるってこういうことなんだと感じました。


その後、先輩の仕事に携われるようになると、先輩がお客様を笑顔している姿を見て、
今度は自分の手でお客様を笑顔にしたいと思うようになり、
そんな姿を目指して仕事をするようになりました。

店長に抜擢


ところが、25才の時に、勤めていた美容室が店舗拡大を始め、
その環境の変化についていけなくなってしまった私は、お店を退職することにしたんです。

そこで、次に働く美容室を決める時は、お店を見学をして雰囲気やスタッフの話を聞いて自分のペースで働ける美容室を探して就職しました。

とはいえ、やるからにはちゃんとやるという考えのもと努力を続けたことで、
売り上げのトップを獲得し、1年後に店長に抜擢してもらうことができたんです。

そこで、店長になるにあたって、

「私は会社やお店の利益のために働くのではなく、スタッフとお客様のことを最優先して働きたい」

という思いを社長に伝えました。
会社を良くするために何かするわけではなくて、1番にお客様やスタッフが満たされることで自然と会社が良くなると考えたんですよね。
そんな思いを伝えると、社長からも納得をしてもらうことができたので、
店長として、働くことを決めました。

そんな風に店長として働き始め、今はお客様だけでなく、スタッフにもどうやったら喜んでもらえるのかということばかり考えています。
人の笑顔をつくりたいという一心なので、お客様が喜ぶものなら、そのツールは何でも良いと思うんですよね。

実際に、エステもネイルも行きたいけど、時間がないというお客様が多かったので、
髪だけでなく、お肌もお手入れできれば喜んでもらえるのでないかと思い、
美容室ですがスキンケア用品も置くことにしたり、
営業後に肌の専門家を呼んで、スタッフみんなで肌のことをこと細かく勉強したりもしています。

スタッフも好きな商品じゃないと売れないと思うので、商品を入れる時は、スタッフに意見を聞いていますし、
スタッフ自ら商品を使うようにもしているんです。

お客様の笑顔を追求していく


今後も、お客様の笑顔をつくることの軸だけはぶらさずに、その時々で必要なものを追求していきたいと思っています。
目の前の人、関わっている人を喜ばすには、臨機応変に対応する必要があると思うんです。

また、同じように、お客様を喜ばすために美容師をしていく人を増やしていきたいという思いもありますね。
美容師は、カットやパーマをアプローチをして、スタイルを作って、仕上げて、全部1人でするので、逃げ場がないんです。
でも、全て自分でやるからこそ、大きな責任感もやりがいもあり、楽しいんですよね。

寒い日に熱いお茶を入れてくれたり、困った時に助けてくれたり、
人は、人の力で幸せになると思っているので、
私も美容師というツールを通して、自分の力で幸せにできる人をもっと増やしていきたいと思っています。

2014.12.12

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