クリスマスに届ける、世代を超えた恩送り。サンタになって初めて見えた世界。

クリスマスにプレゼントを配るサンタクロースと、海外の子どもへのチャリティー活動を合わせた「チャリティーサンタ」の活動を行う清輔さん。建築家を目指して高専を卒業した清輔さんが、サンタにたどり着くまでにはどのような背景があり、どんな思いで活動を行っているのでしょうか?お話を伺いました。

清輔 夏輝

きよすけ なつき|サンタクロースのチャリティNPO運営
「サンタクロースのような想いやりのある人」を世の中に増やし、想いやりがつながる社会を目指す、
特定非営利活動法人チャリティーサンタの代表理事を務める。
チャリティーサンタの合言葉は、「あなたも誰かのサンタクロース。」

チャリティーサンタ
【12月8日(月) 23:59まで】サンタクロースからの手紙

圧倒的性善説への変化


福岡県飯塚市という、人口10万人くらいの田舎町で育ちました。小中学校と、コツコツまじめなタイプで、大体少し勉強が出来たらここ、というような高校が、地元にはあったんです。

しかし、みんなに流されてその学校に進むのは、まるで、選択肢が無いような気がして嫌だったんですよね。そんな風にもやもやしていた時、塾の先生から高専という選択肢があるという話を聞きました。詳しく聞いてみると、幅広く建築が学べる建築学科というものがあったのですが、元々自分の先祖が宮大工の家系だという話を聞いたことがあり、昔から漠然と建築に関心があったんです。そんな共通点にある種の運命も感じ、その中学では初めて高専に進学することになりました。

しかし、いざ高専の建築学科に入ってみると、その先に受験等が無いこともあり、まじめにコツコツやれなくなってしまったんです。部活も辞めてしまい、可もなく不可もない数年間を過ごしました。

そんな生活を過ごし、高専の3年目が終わった春休み、普通の高校よりも休みが長いこともあり、その時間を使って何かしようと考えるようになったんです。そこで、急に思い立ち、旅に出てみようと考えました。しかし、特にどこに行きたいというあても無かったので、千葉にある祖父の家まで、50ccの原付バイクで向かうことにしたんです。

さすがに、福岡から千葉までは片道1週間程度かかったのですが、その旅を通じての感想は、「世の中は危険がいっぱいなんて嘘じゃん、善い人がいっぱいいるじゃん」というものでした。自分の家に泊めてくれる方や、「志」と書かれた封筒にお金を包んでこっそりと渡してくれたおまわりさん、その他にも沢山の素敵な人に出会ったんです。

それ以来僕の価値観は「圧倒的性善説」に変わり、シャイだった性格も少しずつ直っていき、それ以降の長期休みはヒッチハイク等、常に旅をするようになりました。

建築業界を離れ、IT・環境と活動を変えていく


そんな学生生活の後半を過ごし、高専を卒業してからは、建築設計事務所で働き始めました。

元々、旅を通じて色々な人の話を聞く中で、世の中的に良い仕事をすることでは幸せになれないし、自分らしさが大事なんだなという感覚があったので、もしかしたら、労働時間が長く、離婚等されている方も多い建築業界は自分に合っていないかもしれないという不安がありました。それでも最終的には、5年間も勉強させてもらいながら建築の仕事をしないのは申し訳ないと思い、事務所に入ることに決めたんです。

しかし、実際に働き始めてからは会社や仕事の雰囲気に馴染めず、苦労しました。仕事自体、アートよりな雰囲気もありましたし、人間関係でストレスを溜め込んでしまったこともあり、気づけば心身ともにかなり疲弊してしまったんです。結局、年末年始の休みに冷静に考えた結果、もう無理だと思い、1年で退職することになりました。

そして、次は何をしようと考えた結果、思い浮かんだのはIT業界でした。ちょうど、個人のネット起業ブームがあり、ブログが始まったようなタイミングでしたし、今後何をするにしても、Webマーケティングのスキルは重要なんじゃないかと思ったんです。

そんな考えから、21歳にしてIT系の個人事業主として働き始めました。とはいえ、頑張らざるを得ない状況を作らないとまずいという気持ちがあったので、福岡を離れ、千葉の親戚の家の物置みたいな部屋を借りて住まわせてもらい、貯金が段々減っていく中、朝から晩までパソコンに向き合う生活を始めました。

すると、数ヶ月するとブログでの稼ぎ方の要領を得て、半年程すると、月20万円ほど稼げるようになったんです。そこで、福岡に戻り、同じようなことを横展開していったのですが、ふと、「これをずっと続けていてもしょうがないな」と感じたんですよね。もっと違う分野で社会と関わるようなことをしたいと感じるようになったんです。

そこで、何をしようか考えた結果、思い浮かんだのは自然や環境の問題でした。小さい頃から、家から蛍が見えるような環境に育ち、父が環境活動を行っていたこともあり、自分もその分野で何かしたいと感じたんです。

そこで、「エコわらしべ長者」という、誰でも楽しめるような物々交換の企画を行ってみました。すると、思った以上に注目を集めることができ、新聞やテレビ等にも多数取り上げてもらうことが出来たんです。

しかし、正直、あまり嬉しくなかったんですよね。すごい数のメディアに出て、多くの人に知ってもらえたにも関わらず、世の中には変化がありませんでした。

楽しいことをやると話題にはなるものの、「自分ごと」で考える人を増やすことはできなかったんです。

恩送りの繋がりに、魂が震える感覚がした


その後は環境というテーマに限らず、ITでの収入を作りながら、いくつかプロジェクトを行う日々を過ごしました。すると、24歳のある時、何か始めたいけど何をしていいかわからないという女の子の相談を受けたんです。そこで、出てきたキーワードを受けて考えていくうちに、チャリティーとサンタクロースを合わせた、「チャリティーサンタ」という企画を思いついたんです。

「チャリティーサンタ」では、小さな子どもがいる親御さんからプレゼントと寄付を預かり、クリスマスに私たちがサンタとして家庭にプレゼントを届け、いただいた寄付は世界中のこどもたちの支援に回すという仕組みなのですが、実際にクリスマスを向かえ、企画を実施してみると、それまでのプロジェクトとは違い、皆、実体験として当事者になることで、自分ごととして考えることに気づいたんです。

そして、初めこそ子どものために、と始めたものの、結局一番変化が大きかったのは大人の方でした。サンタに行く前は皆緊張した面持ちで出て行くのですが、帰ってくるとすごくキラキラして、どう考えても幸せな顔をしているんですよね。中には、今日が人生で一番幸せだったという人までいました。

その中心にいる僕はすごく幸せでした。運営の僕には直接見えないけど、彼らの向こうには喜ぶ子どももいる。人の恩送りが繋がっていき、なんだか、魂が震える感覚がありました。

そこには自分の足りないと思っていたことが全てありました。それは、テレビや新聞に出るのとは次元が違う幸せがあったんです。

自分にとって「チャリティーサンタ」は、人生をかけてもいいんじゃないかと思えるものになり、より活動のギアを上げることに決めたんです。

サイバーエージェントでの修行の日々


次の年からは東京だけでなく、全国12都市で活動を広げていきました。しかし、それだけの思いを持って取り組みながらも、全国展開は上手く行かなかったんです。ビジョンが曖昧でルールも無く、当日はひっちゃかめっちゃかになってしまったんですよね。

同じことをやっているのに、なんでこんなに違うんだ、と感じると同時に、「僕が成長しないとダメだ」という感覚も強く感じていました、正直、計画力も営業力も、社会人経験をしっかり積んでおらず、なんとなくヒッチハイク等で培ったコミュニケーションで整えているだけで、気づけば全て中途半端な状態になっていたんです。

そう感じてからは、ちゃんとした修行期間が必要だと考えるようになり、気になるIT系企業への転職方法を探し、サイバーエージェントにて働き始めることになりました。

その後、25歳にして再度入社した会社で感じたことは、自分は当たり前のことが出来ないということでした。入社したての頃は電話すらまともに取れず、自分にビジネススキルがないことを痛感すると同時に、勉強させてもらいながらお金をもらえるのが不思議にさえ感じました。

仕事としては営業に携わり、途中からはプロデューサーとして、新しいサービスの開発にも携わる機会をいただきました。途中、仕事に加えてサンタの準備をする日々に疲れてしまうこともありましたが、新しいサービスに携わるようになってからは、仕事が楽しくて仕方なかったですね。

結局、作っていたサービスが他の会社に譲渡されることになったこともあり、そのサービスの黒字転換まで携わり、会社を辞めることに決めました。

その3年の経験を生かして、もう一度、チャリティーサンタに力を注ぐことにしたんです。それまでも並行で組織には携わっていましたが、活動を一本に絞ることに決めました。

世代を超えた恩送り


社会人として営業や新規事業に携わった経験はやはり大きく、運営や組織自体の仕組みづくりにより注力し、今年からは組織自体をNPO法人として活動を行っています。

現在は、活動の継続と成長のために、収益が生まれるような仕組みを作ることに力を入れており、サンタさんから子どもに手紙が来たり、企業の社員向けにサンタのプログラムを提供したり、新しいサンタクロースの形として、サポーター制度を考案したりもしています。

その他にも、慶應大学と連携し、サンタになることで幸福感がどう上がるかを研究したり、児童養護施設の子ども達のための仕組みづくりをしたり、本を出版する機会にも恵まれ、活動の幅も一層広がっています。

今後は、大きなテーマとして、「世代を超えていくような恩送り」がしたいという気持ちがあります。

身近な話で言えば、チャリティーサンタを通じて、サンタからプレゼントもらった子どもが、今度は届ける側に回ったりするといいなと思っています。

また、少し大きな話では、家族作りを特別にやっていきたいという気持ちが強いですね。子どもを家族や親戚の中でだけ育てるのではなく、地域の中で1人の子どもを育てるような、そんなモデルを作ることにも関心があります。そうすることで、良い意味で沢山の人に育てられる子どもになるんじゃないかと思うんです。

そんな風に、世代を超えて、自分が死んでも無くならないような仕組みを作れたら幸せですね。

2014.12.05

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