愛のある新鮮な食材が社会を変える!僕の目指す社会をデザインするために。

滋賀県にある野菜カフェを経営し、自分が摂る食事も、タバコも、珈琲もオーガニックなものにしている河合さん。しかし、10年ほど前までは毎日ジャンクフードを食べるような生活でした。そんな河合さんが食にこだわる理由、そしてデザインしたい街とはどのようなものか、お話を伺いました。

河合 資

かわい たすく|デザイナー兼野菜カフェ・無人販売所経営者
滋賀で野菜カフェ「GREEN Kitchen」と、野菜の無人販売「MUJIN Store」を経営している。
その傍ら、デザイナーとしても活躍中。

GREEN kitchen
個人Facebook
Locals Lab.

レールへの違和感


僕は滋賀県で生まれました。

両親は自由な人たちで、よく家の音楽室にたくさんの人を呼んで踊ったり騒いだりしていて、
ある日自宅へ帰ると見知らぬ外国人がいて、夕食を共にするなんてことはしょっちゅうあり、いつもとても賑やかな家でした。
また、食卓にはオーガニックの新鮮な野菜を使った料理が出てくるような家庭で、
小学生の時に食べていたおやつも、周りの子たちが食べているスーパーで売っているポテトチップスではなく、
お母さんがじゃがいもをスライスして、油で揚げて作った味の薄いポテトチップスでした。

しかし、そんな食生活への反動で、高校に入ってからは毎日学校帰りに友だちとジャンクフードを食べるような生活になっていきました。

高校は卒業後ほぼ全員が大学に進学するような進学校に通っていたのですが、卒業後は大阪にあるデザイン系の専門学校に入学することにしました。
高校を卒業したら「良い大学に進み、良い企業に就職する」という既存社会のあり方に違和感があり、そのレールから外れたいと思った時に、
デザインに関わる人たちをかっこいいなと思い、自分もその道に進みたいと思ったんです。

専門学校は毎週課題がありプレゼンで発表するような厳しい学校で、途中から来なくなる人も何人もいましたが、
講師は自分のデザイン事務所を持っているような実力者ばかりで、実践的なことを多く学べて非常に良い環境でした。

専門学校を卒業した後は、もっとデザインについて学びたいと思い、プロダクトデザインの事務所で見習いとして働くようになりました。
しかし、仕事を始めるとデザインの世界は自分が想像していた以上に厳しく、力量不足を思い知り、
実力をつけるには色々なことを見て、実際に経験しなくてはならないと思ったので、その事務所を辞めることにしたんです。

食べたいものがない


事務所を辞めてから何をしようかと考えたとき、デザインのようなクリエイティブなこともやりたいし、
高校生のころに地元の琵琶湖でやっていたウエイクボードのようなアクティブなこともやりたいと思っていました。
ただ、どちらを選ぼうかと考えていくうちに、悩むくらいならどっちもやってやろうと思い、
夏はデザインの仕事をして、冬は山にこもってスノーボードをするような生活を始めました。

しかし、この生活スタイルは僕にとっては楽しく充実したものでしたが、
周りからすると不安定なものだったようで、付き合っていた彼女に振られてしまったんです。
振られたことをきっかけにしっかり社会に出て働かなければと思い、
冬にスノーボードをする生活は辞め、官公庁向けにWEBサイトの制作を行う会社に就職することにしました。
ここは、比較的大きな会社で、仕事はやりがいのあるものばかりで非常に楽しかったですが、
デザインも営業もコーディングも自分でできるようになっていき、将来は独立して自分の事務所を持とうと考えるようになっていきました。

そんなことを考えながら働き出して5年が経った頃に、東日本大震災が起きました。
改めて食の安全が問われるようになって、自分たちの身の回りにある食べ物を考えた時に、会社の周りでは食べたいと思う食事がとれなかったんです。
安全な食材を使って安心できるものを食べたいと思っていたのですが、そういうお店がなく、
だったら自分が食べたいものをいつでも食べられる環境を、自分で作れば良いと思ったんです。

そう思ってからすぐに計画を作り、2週間後には会社に退職の意志を伝えていました。
正直、不安や葛藤はありましたが、そんなものはいくら悩んでも解消されませんし、会社での仕事に対してもやりきった感がある良いタイミングで、
デザインの仕事は個人でもできるのでやりたいと思ったことは全部やろうと思ったんですよね。

実はオーガニック


そして、デザインの仕事も個人でやりながら、
地元の滋賀で作られた新鮮な野菜を使った料理を提供する「GREEN Kitchen」と言う名のカフェを営業することにしたんです。

料理に使われる野菜は、地元の契約農家さんが丹精を込めて作ったものを直接仕入れていて、
スーパーで買うよりも新鮮で美味しいし、配送なども発生しない分環境にも優しいんです。

また、なるべくオーガニックフードを使うようにこだわっているのですが、あえて「オーガニックフード専門店」といったような推し方はしないようにしています。
オーガニックフード色を全面に出し過ぎると、そういった食べ物に興味を持っている人にしか関心を持たれなくなってしまうと考えていて、
私たちはそうではなく、食への安全にそれほど関心を持っていない人にもお店に来て欲しいんです。
そこで食べた美味しい野菜が「実はオーガニックフードだった」と気づいてから興味を持ってもらう方が自然だと思うんです。
百聞は一見にしかずですから、「美味しい」という体験をしてしまえばそれが一番なんです。
普段、あまり食に関心がない人が変わるきっかけを提供したいと思ってこのスタイルで運営しています。

すぐそこで買えるおいしさ


そうやって野菜カフェを経営していくうちに、農家の人は良い野菜を作ってもあまり儲からないという現状が見えてきたんです。
本当は100円で買ってもらえる価値がある野菜でも、市場を経由しスーパーマーケットで売ると、農家が得られるお金は売値の半分以下になってしまうんです。
これでは若者や就農を迷っている人に農家になることを勧められないと思い、
この問題を解決するためにはどうするべきかと考えたんです。

そんな時に思いついたのが、稀に田舎道の片隅に見かける無人販売だったんです。
獲れたての野菜を近くで売ることができれば、配送費などもかからないし、関わる人も少なく済むので、売値に近い金額が農家の人の手元にも残ります。
そこで2013年から野菜を無人販売ボックスで売る「MUJIN Store」というものを始めました。

主婦の人がどこかに出かけたついでに新鮮な野菜を買えるシチュエーションを意識しているので、人通りの多い駅前やお店の軒先に置くようにしているし、
傍を通った時に買いやすいように、自分の得意分野のデザインを駆使して販売機の見た目はキャッチーなものにしました。
いつも通る場所に買いやすい値段の新鮮な野菜を置くことで、
普段オーガニックフードに興味のない人や野菜をあまり食べない人にも、食への意識を持ってもらるんじゃないかと考えています。

僕のデザイン


僕がやっていることは、安心・安全で僕自身が「食べたい」と思うものが食べられるような社会を作っていくことだと思っていて、いわば地域をデザインしているんです。

食は本当に大切で、できるだけオーガニックで新鮮なものを食べていると頭の働きが明らかに変わってきて、
思考も整理されるし、営業の成果も出せるし、クリエイティブな考えもどんどん浮かんでくるんです。
だからこそ、特にこれからの未来を担う若い人には、新鮮な物を食べて欲しいと考えています。

でも、実際に意識して新鮮な物を食べている人は少ないと思うんです。
そこで、GREEN KitchenやMUJIN Storeを利用して、新鮮な物のおいしさを知って、食について考えてもらうきっかけを作ってもらい、
それを食べるようになった人たちは、自分の体の変化に気付くことができ、改めて、食の安全に対する問題意識を持ってもらいたいですね。

社会を変えていくなんて言うと大層な風に聞こえますが、今はインターネットのおかげもあり同じお思いを持つ人とつながりやすくなってきているので、
誰かが敷いたレールを歩むのではなく、自分たちで主体的に社会を変えていける時代になったんだと思います。
それこそ、同じ思いを持つ人が集まることで、街頭演説をする政治家よりも若者が政治力を強めることだってできます。
そうやってそれぞれの人が自分が目指す社会を、自分たちの力でデザインしていくことができるので、
僕は自分がやっているような地域をデザインする力を持った若者を増やせればとも思っています。

僕は自分の目指す世界として、まずは地元滋賀を、新鮮な野菜を使ったおいしいご飯があたりまえに食べられる街にしたいと思いますし、
将来的に日本全体に広げて、僕だけではなく作る人も食べる人も、みんなが喜ぶ社会にしていきたいです。

そんな世界をデザインしていくため、今は地域にコミットして、どんどん仲間を増やしていきます。

2014.11.25

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