ヨーガは気づきのツール。僕がインドヨーガの師から学んだ幸せの本質。

ヨーガとはライフスタイルであり、幸せの本質に気づく一つの方法であると語る、ヨーガ講師のToshi Amritaさん。インドの伝統的なヨーガを学び、世にシェアすることに決めたのはインドで出会ったある方がきっかけでした。

Toshi Amrita

ありま とし|ライフスタイルとしてのヨーガをシェアするヨーガ講師
内なる探求としてインドを旅した経験から、伝統的なヨーガとその師に出会う。
ヨーガの精神性を通じて得られる万人に共通する幸せの価値を多くの人に気づいてもらえればと、インドで学んだヨーガを日本でシェアしている。

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Locals Lab.

探求心が強かった


僕は生まれが愛知なのですが、生後間も無く京都に移り住みました。幼い頃は男4人兄弟の長男として弟達の面倒を見ながら、刺激的な環境で育ちました。

両親が人権活動や政治活動などに積極的に参加していて、小学校の時は頻繁にそうした活動に連れられていましたし、沖縄に行った時には、自分の知らない独自の文化や人に初めて触れ合い、沖縄の人々のシンプルで寛容な精神を感じたりしていました。また、小学校高学年の時には、授業で写仏をしたり、曼荼羅を描いたり、寺巡りをしたりなど、面白い経験をしました。

もともと僕は探究心が強い子供でしたが、そうやって幼い頃から様々な刺激的な世界観に触れていたせいか、あらゆるものごとを知りたいと思う気持ちが、より一層強くなりましたね。

そして、高校生くらいになると、海外への強い興味が湧いてきました。幼少期に父母に連れられて様々な活動に参加していた時に、在日外国人の方に会う機会があり、そんな外国の方々から感じる、日本にはない空気を現地で直接感じてみたいと思うようになったんです。

日本にはない世界観を求めて


それから大学生になり、アルバイトでお金を稼ぐようになって、海外へ行く余裕ができた大学3回生の時に、内なる探求の旅として東南アジアにバックパック旅行をすることにしました。

初めて訪れた国はタイでした。現地では主要宗教である仏教がタイの人々の生活に浸透していて、文化から生活スタイルまで全てが日本と異なる環境に触れることで、自分の世界観がこの上なく広がりました。それを機に海外に足繁く通うようになり、日本でお金を稼いでは東南アジア諸国に内なる探求の旅に出かけていました。

そして、しばらく旅を続けてから、インドに行くことに決めたんです。幼い頃からなぜかインドには神秘的な国として特別な存在感を感じていたので、インドには初めから訪れる予定でいました。タイや他の周辺国に行っていたのは、インドに行くための準備でもあったんですよね。

そうして大学4回生の時に初めてインドに行ったのですが、タイなどの東南アジア諸国とはまた全く違う空気感があり、初めてインドの地に着いた瞬間に、自分が求めている内なる探求の答えはこの国が教えてくれると、直感で感じたんですよね。現地では巡礼をしてみたりして、インドの文化や人々との触れ合いが深まる中で、ヨーガに出会い、旅を続けながらも現地の方と同じように瞑想やヨーガを実践したりしていました。

もともと感じていたインドの精神性と自分の価値観はやっぱりチューニングが合うんだとわかった瞬間は本当に嬉しかったです。それからはもう、内なる探求のためにとにかくインド中を旅して回っていました。大学卒業後も就職するつもりはなかったので、アルバイトでお金を稼いでは日本とインドを行ったり来たりする生活をしばらく続けていました。

このままでいいのか?


ところが、そんな生活を続けていたある時に、「このまま就職せずにこの生活を続けていていいのか?」と考えるようになったんですよね。というのは、僕はインドの魅力に引かれ過ぎていて、逆に自分自身を見失ってしまうのではないかと思ったんです。

幼い頃からよく弟達の面倒を見て世話好きなことがあってか、子供のことが好きで、将来は子供と関わる仕事ができればなという想いがずっと頭の片隅にあり、このままその想いを捨ててしまっていいのだろうかと思うようになったんです。

そこで大学卒業から1年後、一旦インドへの想いから一歩引いて、子供と関わる保育士として社会に出るという選択をしました。保育士という仕事を選んだのは、様々な社会的教育を受ける前の、自由で純粋な考えを持った子供たちが好きだったからなんです。

そして、資格をとるために短大の通信教育を受け始めたのですが、実際に現場を体験したいと思っていたので、ある保育園に訪問すると、そこの園長のご好意で、通常よりも多くの人数の先生が子供達の世話をする加配という立ち位置で働かせてもらえることになったんです。

その後、保育士資格を取得してからもしばらくその保育園で働いていたのですが、やっぱりインドへの想いは消えなかったんですよね。(笑)保育士として社会に出ても、インドの存在を忘れることはなく、結局自分の内的な探求への想いはおさまらなかったんです。

そうしてお世話になった保育園に4年で区切りを付け、貯金していたお金を使ってまたインドへと旅立つことにしました。

師との出会い


インドに行って、ある日ガンジス川が流れるバラナシという聖地に行き、そこで宿を探して歩き回っていた時、直感的にある道が目に入ったんです。その道に導かれるようにして進んで行くと、そこには1件のゲストハウスがありました。そして、そのゲストハウスに行くと、一人の女性が出てきたんです。

その女性によると、ここはアシュラムと呼ばれるヨガを学び精神的な修行を積む場であると言われたのですが、自分が日本人であることを伝えると、その女性は驚いた表情を見せ、そこのアシュラムの師である男性を連れてきたんです。聞くところによるとその師は過去に日本へヨーガを教えに行ったことがあるという人物でした。

僕はその師に、このアシュラムに泊まっていいから、ここでヨーガを学んで修行をしなさいと言われ、その師に導かれるままに、このアシュラムに住み込みでヨーガを学ぶことになりました。

こうしてこの師の下でインドの伝統的なヨーガを学んで2ヶ月半程たった頃に、お金も底を尽きて日本に帰るタイミングになりました。そんな時に突然、「お前はここで学んだヨーガを日本にシェアしなさい。」と師に言われたんです。とはいえ、日本に帰国してもヨーガを仕事にしようとまでは思っていなかったので、どうしようかと迷っていた時に、僕がヨーガを学んでいたことを知っていた知人から、ヨーガを教えて欲しいという連絡がきたんですよね。

この時に、やっぱり僕は師に教えてもらったヨーガをシェアするべき運命なんだと感じました。

ただ、ヨーガをシェアするにはその背景なども深く知る必要があると思い、平行して京都の大学でインド哲学やサンスクリット語などを勉強して知識を深めることに励みました。

本質的な幸せ


その後、6年程経った今では、定期的に複数のヨーガクラスに呼んでもらい、僕がインドで学んだ伝統的なヨーガを多くの方にシェアすることができています。

また、大人だけではなく子供クラスでもヨーガをシェアしています。昔から子供が好きだったことに今でも変わりはなく、またアシュラムの師からも子供にもヨーガをシェアしなさいと言われていたんです。それにヨーガのポーズだけをシェアするのではなく、ヨーガ哲学や、瞑想・呼吸法なども実践して、ヨーガの本質を理解するワークショップもしています。

僕がアシュラムで師から学んだ大事なことは、ヨーガの精神性を通じた本質的な幸せへの気づきなんです。一般的な幸せとは成功することやお金があるといった「私」の状態を指すと思うのですが、それは逆に言うと何かに頼らなければ「私」は幸せではないと言っていることになるんですよね。

しかし、ヨーガの幸せの本質はいたってシンプルで、いわゆる一般的な幸せの価値基準とは別のところにあります。ヨーガの幸せの本質に気づくには、過去の記憶に縛られた自分の考えを払い落として、クリアにし、真に自由に生きることです。

ヨーガの精神性において自分の身体や心は「私」の一部ではあるが「私」全体ではありません。他人と比べて悩んだりすることは、「私」の心がそう思っているだけで「私」の本質は変わらずに幸せに満ちているんです。言ってしまえば身体も心も、「私」という存在の道具なんですよ。それをどう扱うかが大切なんです。

本質的な幸せとは、成功やお金などの個人的な価値で決まるものではなく、その個人的な価値の背後にある、万人に共通する「私」という存在の価値に気づくことなんです。これがヨーガの精神においてはリアリティであり、普遍の真理なんですね。

ヨーガとは幸せの本質が何であるかを示してくれるツールなんですよ。僕がヨーガをシェアするときに一番大切にしていることは、この万人に共通する幸せの本質をシェアすることで、それが僕の役割だと思っています。

今でも1年のうち3ヶ月は定期的にインドに行って、様々な場所を訪問しながらヨーガや哲学を学んでいて、今後も日々精進しながら、このヨーガが自然に広がっていけば嬉しいなと思っています。そうしてインドと日本をヨーガの精神で結ぶことで、僕自身お世話になったインドに何か恩返しができたら嬉しいですね。

2014.11.21

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