言葉を超えた最高のコミュニケーション。セラピストという人の人生に深く携わる仕事。

大阪でエステやトレーニングを提供するヒーリングサロンを2店舗経営しながら、ご自身もセラピストとしてお客様に施術を行う西山さん。エステという分野で独立して、病気にならない体づくりに取り組む現在に至るまでにはどんな背景があったのか。お話を伺いました。

西山 泰代

にしやま やすよ|ヒーリングサロンの経営
大阪の西長堀と中之島に2店舗ある「Clear Healing Salon」のオーナーであり、セラピストととしても活動している。

Clear Healing Salon

インテリアの専門学校へ


私は高知県須崎市という、漁師村の僻地で生まれました。
保育園から中学校まで同級生はずっと同じメンバーといった程の田舎だし、漁師村なので人と人の繋がりが強く、
時にはそれを過干渉だと感じ、嫌だと思うようなこともありました。

中学生になるとインテリアに興味を持ち始め、雑誌に載っている好みの部屋を真似して頻繁に模様替えし、
完成した部屋に友達を招くことが楽しかったですね。
高校もインテリア科のある工業高校に進学しようかと思いましたが、
男子ばかりの工業高校は嫌だったので、高知市内にある商業高校に進学して寮生活を始めました。
インテリアが好きと言っても、そこまでではなかったんです。

その後、高校生になっても将来やりたいことは見つからず、24歳ぐらいで結婚したいと思っていたので、
高校卒業後は名古屋にある短大に進学することにしました。

入学してから、お洒落な日本酒BARでアルバイトを始めたのですが、
そこに来てくれるお客さんはインテリアデザイナーや建築家などクリエィティブな人たちが多く、みんなとてもかっこよかったんです。
そんな人たちと話していくうちに、私の人生がこのまま終わってしまうのは寂しすぎると感じて、
やっぱりインテリアに関わる仕事をしたいと思うようになり、
特に興味のあった、デパート等店舗のディスプレイのコーディネートを勉強ができる専門学校をめざすことにしたんです。

そして、一旦インテリア仕事に必要なカラーコーディネートのスクールに通いながら短大を卒業し、
大阪にあるインテリア専門学校のディスプレイ科に入学しました。

エステサロンに就職


専門学校ではやりたいこともできて楽しかったのですが、
私は絵を描くことやデザインすることが苦手で、自分の描きたいことを表現できず、
せっかく勉強したのに、何か違うと思って1年で学校を辞めてしまいました。

その後は、専門学校で学んだ中で好きだったカラーコーディネートを活かしたいと思っていましたが、
生活費を稼ぐ必要があったので、アパレルでも何でも少しでも色に関わる仕事であれば良いので、とにかく働こうと思っていました。

そしてたまたまエステサロンにも面接に行ったのですが、その時に面接官がとても気に入ってくれ、熱心に就職を薦めてくれたんです。
正直そこまでエステに興味はなかったのですが、肌は生活や人生を表すもので、エステティシャンは人の人生に携われる意義のある仕事だと教えてくれ、
その言葉が心に響いて入社を決心しました。
また、カラーコーディネートやメイクなど好きなことをサービスで提供して良いと言われ、色にも関われることも良かったんです。

就職してからは、営業目標に追われる毎日で大変ではありましたが、
エステ自体はしっかりとしたものだったので、お客様に価値あるものを提供できているとは思っていましたね。
ただ、多くのエステサロンと同様に、勤めていたサロンもローンやチケット制で複数回の施術をセットで販売する高額コースしかなく、
お客様には優しくなかったんです。
また、お客様の肌の調子が良くなってきても、通ってもらうペースを減らすのではなくて、
会社の利益のため追加のチケットを売らなくてはいけなく、
そのビジネスの仕組みに違和感を感じて、耐えられなっていきました。

そして、勤めて1年半で退職することにしました。

独立してエステサロン開業


退職後はまたエステサロンで働こうと色々な会社を見たのですが、
同じようなビジネスモデルのところばかりで理想のサロンに出会うことができなかったので、
23歳の時に自宅でエステサロンを開業することにしました。

そして会社の利益よりもお客様を大切にしたいと考えていたので、支払いのシステムは都度払いだけにしました。
また、一般のエステサロンでは、他のお客様と会わないようなシステムですが、
私は、同じトラブルを持つお客様同士で、情報を共有してもらったり、自ら美や健康を学ぶコミュニティの場を作るため、
お客様同士の関係をできるだけオープンにしていこうとしました。

しかし、お客様第一のサロンにしたいという思いはありましたが、
明確なコンセプトまで落とせていなかったので、途中でぶれてしまうこともあったし、
お客様は来てくれるものの、経営や会社で勤めた経験が浅かったので思ったようにはいきませんでした。
サロンだけでは食べていけず、4年程は平行してバイトをしながら生活していたのですが、
このままサロンを続けるのか、それともまた就職するのか考えるようになっていきました。

そんな時に異業種交流会に参加したのですが、
なんでエステがしたいのか、お客様のためってどういうことなのかとみんなに聞かれるうちに、
お客様のためにと言っていても、結局自分のやりたいことをやっているだけの自己満足なお店になっていたことに気づいたんです。

開業時に自分の方向性やコンセプトは、もっと掘り下げて考えないといけないなと感じたし、
考えたことを誰かに聞いてもらうため、ディスカッションをしたり、
できれば自分より前にいっている経営者の方に聞いてもらったりすることが大事だったと気がつきました。
また、そもそもこの仕事で生きていく覚悟ができてないなかったんですよね。

お客様を1番、自分を2番に


そこでお店をやり直すことを決意して、29歳の時に引っ越して、個人サロンを再スタートしました。
それからは、お客様が何を望んでいるのかヒアリングをしたり、ミーティングもしました。
これまで私がやりたい施術行ったり、好みの化粧品を使ったりしていたのですが、
ビジネスの主体をお客様にして、とにかく利益や売上は一切考えず、ひたすら目の前のお客様がどうしたら喜んでくれるかを考えました。
すると、親友やそれまでのお客様がどんどん紹介して下さって、
4〜5ヶ月先まで予約が埋まる程になり、雑誌の取材も来たりするようになりました。

しかし、その後もエステサロンとしては順調だったのですが、とてもひどいニキビで悩んでいるお客様と出会い、
エステだけではできることに限界があると感じてしまいました。
医師ではないので治療行為はできないし、そもそも皮膚はレントゲンも撮れないので、絶対的な原因を特定することがとても難しい分野なんです。
ただ、医療と連携すれば、血液検査や尿検査など目に見える数値から原因を見つけることができるし、
知識も豊富な医師の治療ができればお客様のためになると考え、医師と一緒に予防医療サロンも平行して運営し始めました。

また、この予防医療サロンでは生活習慣病の予防のために医療従事者から正確な情報を発信することも目的としていました。
生活習慣病は日々の生活で十分ケアできるものですが、日本人は自分の体に対しての知識が少なく、メディアの情報に振り回されていると感じていたので、
お客様自身も体のことを勉強できて、自分でケアする必要性を感じてもらえるような情報を発信したかったんです。

その後、2年程予防医療サロンと個人のエステサロンどちらも平行していたのですが、
店舗としての移転や経営面で多忙な日々が続いたこともあり、 予防医療サロンは、連携していた医師に任せることになりました。
その後もその医師には相談に乗ってもらったり、色々な勉強をさせてもらったりするようになりました。

そして私はセラピストとしての業務と経営に集中することにして、ヨガやトレーニング、鍼灸師たちに声を掛けてチームとして連携し、
お客様のトラブルを解決できるサロン「Clear Healing Salon」の店舗を西長堀にオープンしました。

カラダとココロにアプローチ


現在は、大阪に2店舗ある「Clear Healing Salon」を運営しながら、私自身セラピストとしてお客様への施術もしています。
お店のコンセプトは「あまりつめて通ってほしくない、通わなくてもいい体にすること」で、
対処療法ではなく、根本的な原因を解決していきたいと考え、セラピスト、看護師、鍼灸師、トレーナーたちと一緒に、
美容だけでなく、健康増進を目標にして予防医療の一環として取り組んでいます。

また、リアルに人と人が繋がれるコミュニティづくりもしています。
私の地元の人との繋がりを過干渉だと思うこともありましたが、
都会では人との関わりは多くても、ITやSNS等で手軽にネット上で繋がってしまい、リアルな人間関係はむしろ希薄になっている気がします。
その結果、ココロが鈍感になり、感情の起伏が少なく相手の些細な気持ちに気づかない大人が増えているんじゃないかと強烈に感じるし、
ココロとカラダは繋がっているのでカラダも鈍感になり、自分自身のカラダの痛みや不調に気づけなくなっていっているんだと思います。

私たちセラピストはそんなココロとカラダの悩み、どちらにもアプローチする仕事なので、
人との繋がりや深く関わることの大切さに気づいて欲しくて、サロンでは多くのイベントを開催してリアルなコミュニティを創っているんです。
カラダを整えるためにも、細胞から元気にしていきたいですね。

今後は、改めて医師と連携して、お客様のトラブルをいろんな立場からアプローチできる予防医療サロンを展開していたいと考えています。
お客様のトラブルをワンストップで解決できますし、病気の予防や緩和ケア、末期患者へのケアもしていきたいんです。
医師以外は揃ってきたので(笑)、想いを共有できる医師を探しています。

また、もっと世の中にセラピストを目指す人を増やしていきたいとも思っています。
大変なことも多いけど、自分の成長も実感できるし、なにより人の人生に深く関わり、誰かに喜んでもらえる最高の仕事なんです。

そして、人生で睡眠と同じ位長い時間を費やしている「働く」という概念も変えたいですね。
働く=人生と言っても過言ではなく、それならもっと人生を楽しむためにも、好きなことをして、自分以外の誰かに喜んでもらって、ちゃんと稼ぐ、
そんな働き方があることを普及していけたらなと思っています。

2014.11.16

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