アジアでオフショア事業と独自アプリ開発を。自衛隊員からエンジニアになった僕の人生。

現在タイでLABO型と呼ばれるオフショア手法を用いて日本企業からシステム開発の受託を行う会社を経営する松下さん。なぜ自衛隊からエンジニアになったのか、また経営を通じて気づいたことは一体どんなものか、お話を伺いました。

松下 祥

まつした しょう|タイのオフショア企業経営
ARMS - Thailand Co., Ltd.のCEOを務める。

ARMS - Thailand Co., Ltd.
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バドミントンの駆け引きが好き


私は広島県で生まれました。
一人っ子だったからか、誰かに認められたいという気持ちが強く、
また負けず嫌いな性格もあってか、何か一つのことには熱中して取り組むようになっていきました。

また、小さい頃から親の勧めでボーイスカウトに参加し、団体で何かすることに慣れていきました。
中学生になってからは、将棋が好きだったので将棋部に入っていたのですが、
1年生の途中でバドミントン部に入りました。
引っ越した小学校の友だちとバドミントンをする機会があり、
その友達はバドミントン部で、一緒にやろうよと誘ってもらったことをきっかけに、部活をやってみようと思ったんです。

バドミントン部に入ってからはどんどんのめり込んでいってしまい、ボーイスカウトは辞めることにしました。
バドミントンは、試合での駆け引きがすごく楽しかったんです。
相手と自分がいて、お互い勝つために何をしようとしているのかを読み合い、
相手がやりたいことをできないように手を打っていき、ある種心理的な戦いの部分も大きかったのが好きでした。

高校でもバドミントンに熱中し、勉強は全然していませんでしたね。
特に最後の1年は自分の意識も変えたことで成績も伸びていき、
最後の大会ではそれまで勝てなかった相手に勝ち、中国大会まで進むことができました。

自分の人生大丈夫か?


部活引退後は大学進学を考えていたのですが、勉強をしていなかったため希望の大学には合格できず、
浪人することにしました。

しかし、浪人中になぜ大学に行くのか考えたのですが、その理由が見つからなかったんです。
そして色々な人と話したりしていくうちに、私は大学進学ではなく、自衛隊に入ることに決めました。
親の知り合いで自衛隊の人がいて特殊で面白そうな仕事だと感じたり、ボーイスカウトの経験から団体行動は得意だったりしたので、
まずは1つ仕事をしようと思い自衛隊に決めたんです。

その後、入隊して最初の研修などを終えた後、岐阜県の航空自衛隊に配属となりました。
自衛隊では運動を奨励していることもあり、私は地域の実業団などでバドミントンを続けました。
自分がバドミントンで食べていけるとは思ってはいませんでしたが、バドミントンはずっと続けたいと思っていましたね。

全日本社会人大会などにも出場する機会にも恵まれたのですが、
ある大会で自分が圧倒的に負けた相手が優勝し、その人は全日本大会に出ることになったのですが、
その人も全国では準決勝で圧倒的に負けている姿を見て、自分の実力と環境に限界を感じたんです。

また、同じ頃に景気がどんどん悪くなって、自衛隊を退役した後の就職先が見つからない先輩が増えてきて、
このままだと自分の人生はマズイのではないかと思うようになっていきました。

自衛官の定年は一般的な職業より早いので、定年まで働いてもその次の仕事がなければ生活できないんです。
そのため、自衛官以外の道を探すようになっていきました。

海外で通用する技術者へ


その後、色々と考えた結果、父親がIT関連の仕事をしていたこともあり、
プログラミングを学ぼうと週末の学校に通うことにしました。
IT職の中でもプログラマーは大変な仕事だと知っていましたが、
そこで力をつけることで将来他のことに展開できると思ったんです。

そして1年ほど学校に通った後、6年ほど働いた自衛隊を辞めてIT関連の会社に転職することにしました。
自衛隊は公務員なので辞める時は周りの反対は凄かったですね(笑)
でも、1回しかない人生なので、反対されようが特に気に留めませんでした。

転職先の会社はプログラマーを派遣する業態だったので、私は同じ頃に入社した先輩エンジニアとともに、
派遣先に出向することになりました。
そこではその先輩がプログラミングの基礎などを教えてくれ、まさに恩師でしたね。
また、スーパーエンジニアの人も紹介してくれて勉強させてもらったのですが、
その人には勝てないと感じてしまい、何か自分を差別化する強みを作らなければと思うようになりました。

そんな風に4年ほど出向先で働いた後、景気の悪化などもあり解雇されることになったので、
フリーランスとして働き始めることにしました。
そしてフリーでやるにはWEB系の仕事の多い場所に行かなければと思い、大阪に拠点を移すことにしました。

しかし、フリーランスをしばらく続けたのですが、10年後、20年後も続けられるのか不安になっていき、
何か自分に強みをつけたいと思うようになったんです。
それに、技術に加えて海外での仕事ができれば強みになると考え、
転職エージェントに相談して、海外でも働く可能性の高そうな携帯電話向けゲームの制作会社で働き始めることにしました。

上海、シンガポール、そしてタイ


そこで働き初めて半年ほどした頃、社長に上海支社に来ないかと誘ってもらうことができました。
私はアプリケーション開発のプログラミングに加えて、サーバー側の設定などインフラ周りの仕事もできたので、
その能力を評価してもらえたんです。

それまで海外も行ったことがなく、中国語も分からなかったので不安はありましたが、
ここで飛び込まなければ自分の力がつかないと思い、行くことに決めました。
最初は空港からオフィスにたどり着けるかすらも不安でしたね。

また、言葉も文化も全く知らなかったし、会社としても業績が落ちていた時期で仕事量がどんどん増えていたので、本当に大変でした。
ただ、新卒採用に力を入れている会社で、将来独立することを前提としている優秀な若い人たちが入ってきたのが刺激的で、
徐々に自分の中でも独立するということへの心理的ハードルが低くなっていきました。

しかし、1年ほど働いた時に上海の支社は別の会社に買収されてしまいました。
そして、体制を一気に整えるやり方などを学ぶことはできたものの、
それまでベンチャーやフリーランスに慣れていた自分には働き方が合わず、
前の社長が新しく作ったシンガポールの会社に誘ってもらい、そちらに転職することにしました。

そこではiPhone向けのゲームアプリの制作を多国籍チームで行っていましたが、
1年ほど働いた後に独立することを決めました。

ちょうどその頃、大阪にいた時に一緒に仕事をしていた人たちに久しぶりに出会い、
タイでビジネスを一緒に立ち上げる人を探していると聞いたんです。
ただ、エンジニアで自ら海外に出るような人は少なく、これはチャンスだと思い、
その人たちと3人で会社を立ち上げることにしたんです。

競うのではなく引き出す


そして2014年の4月にARMSという会社をタイに立ち上げました。
この会社では日本企業がシステム開発を海外に依頼するオフショアのビジネスを展開していて、
私は経営者として働いています。

ただ、一般的なオフショアは海外とのコミュニケーションの違いによってうまくいかないことが多いと聞いていたので、
私たちはLABO型と言って、日本からプロジェクトの責任者にタイに来てもらって、
チームとして一緒にプロジェクトを進める形をとっています。
とは言っても、結局は海外で仕事を頂くことには変わりはありませんので、
文化・習慣の違いや働くことへの考え方の違いを中国・シンガポールで色んな人から学べたことが、
本当に大きなモノであることを日々実感しています。

プログラマーのマネジメントは私たちが行いますが、プロジェクトはクライアント企業の担当者様に進捗管理を行ってもらうことで、
ARMSは技術の提案と解決に注力することができます。
これは変更などがあればその場で話し合いも行い意思を統一することで、
より求められているものを早く開発することができることを意味するのです。
まずは今のビジネスを成功させるため、肝となるタイの技術者採用に力を注いでいますが、
将来は自社オリジナルのアプリも開発してけたらと思います。

また、経営者になって学べることは多く、特に今までの自分は人と比べてしまうことが多かったことに気づけました。
人と比較して勝てる点が欲しいと考えて行動を選択していましたが、
そうではなく、将来の自分が納得できる行動を選ぶことが大事だと最近では思っています。

人は得手不得手があって、それぞれの人が得意な部分を引き出していくことが大事だし、
競争するのではなく自分の経験を渡していくことで返ってくるものが大きいことが分かり、比べるのではないと気づけたんです。

経営者としての力もつけ、技術・海外・経営の強みを活かせるように自分を磨いていき、
東南アジア進出時のハブになり、かつ必要とされるアプリを自社でも生み出していく会社にしていきたいです。

2014.10.19

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