1人の美容師であり続けたい!「人」を大切にする美容室で、僕が目指すもの。

「大切な人と来れるお店」というコンセプトを掲げ、人を大切にすることを目指した美容室のオーナーを務めながら、ご自身も一人の美容師として働いている岩井さん。「一生美容師であり続けたい」と語る一方で、高校生の頃はたこ焼き屋になりたいと思っていたそうです。そんな過去から、現在に至るまでには、幼い頃から変わらない「人」に対する思いがありました。

岩井 典久

いわい のりひさ|「人」を大切にする美容室のオーナー兼美容師
東京都渋谷区にある美容室『kiito』を運営する株式会社ハルニレの共同代表取締役を務める。

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たこ焼き屋になろうと思っていました


僕は京都府宇治市で、本当に一般的な家庭で生まれ育ちました。

幼い頃から社交的な性格で、友達と話したり遊んだりすることが好きで、
特に小学生の時は結構目立ちたがりだった気がします。

中学に入学すると、低かった身長を伸ばしたいという思いでバスケ部に入部し、
初めて先輩・後輩という上下関係が存在する中で、小さな社会を実感しましたね。

結局、期待していたほど身長は伸びず、レギュラーになることもできなかったのですが、
バスケそのものが楽しかったので、高校でもバスケ部に所属し、
引退までボールを追いかけ続けていました。

その後、卒業後の進路について本格的な進路調査などが始まったのですが、
なぜか最初の調査票に「たこ焼き屋になりたい」と書いたんです。(笑)

人と接することが好きだったため、関西のたこ焼き屋のような絶妙な距離感で、
毎日人と接しながら働きたいと思ったんですよね。

とはいえ、たこ焼き屋になるために、具体的に何をすればよいかわらなかったので、
とりあえず、指定校推薦の枠を使って大学に進学しようと考えることにしました。

そんな中、たまたま3年生の夏休みに友人に誘われたことがキッカケで、
とある美容学校の見学についていったんです。

するとその学校では、年上の若いお姉さんが近い距離感で技術などを教えていて、(笑)
実際の授業内容や生徒の雰囲気など、すべてが目新しく、そしておしゃれに見えたんですよね。

あまりに衝撃を受けたため、家に帰ってすぐ両親に「美容師になる」と伝えて、
高校卒業後は、夏休みに見学に行った美容学校に入学しました。

よりお客様に近い距離感で働ける美容院へ


高校までを京都の宇治市という田舎で過ごした自分にとって、
美容学校がある大阪は都会で、そこに集まる人の性格やファッションなど、すべてが新鮮な一方、
皆が「美容師」という、同じ目標に向かっている一体感がありました。

ただ、学校の授業は美容師の国家試験の対策が中心で、同じことの繰り返しだったんです。

なので、どちらかという授業を受けに行く、というより友達と喋りに行くために、
学校に通っていましたね。

国家試験の合格率が特に高い学校だったので、無事試験に合格することはできたのですが、
就職先を探すにあたって、学校に求人が集まってくる関西の美容室には、
特に「行きたい!」と思えるようなお店がありませんでした。

そこで、せっかくなら東京の美容室を見てみたいと思い、雑誌で色々な情報を集めて、
実際に東京のサロン見学をしに行くことにしました。

人がたくさん集まる東京には、大きさや雰囲気など様々な美容室があり、それがまた新鮮でしたね。

そのように、数多くの美容室を見学する中で、自分はやっぱりお客様との距離が近く、
アットホームな雰囲気の小さいお店で働きたいと感じるようになりました。

中でも、とある青山のサロンは、スタッフ全員が、「いらっしゃいませ」でなく「こんにちは!」という、
とても温かくて親近感のある挨拶をしてくれて、その様子が気に入った僕は、

「この人たちと一緒に、このお店で働きたい」

と思い、お店に直接アプローチをかけて、採用試験を受けさせてもらいました。

その後、書類選考と一次面接は無事パスすることができたのですが、
二次試験で落ちてしまったんです。

しかし、どうしてもそのお店で働きたかったので、
結果が分かった後も、電話で落ちた理由をお店に聞いてみたり、
どうすればそこで働くことができるのか、次の手を考えたりしていました。

そんな中、美容学校の卒業を直前に控えた1月に、お店から二次募集の連絡をいただき、
二回目の選考で運よく内定をいただくことができました。

ゼロからのスタート


美容学校では、2年間ひたすら美容師になるための勉強をしてきました。

しかし、それはあくまで国家試験のための勉強でしかなく、
働き出してみると、学校での学びと仕事は全く違うことばかりで、
毎日怒られっぱなしでした。

もちろん最初はアシスタントという立場ではあるものの、
お客様を相手にし、絶対に失敗をすることができないため、責任の重みが全く違いましたね。

今までの学びはほとんど通用せず、ゼロからのスタートでしたが、
自分を含め全員で5人いる同期と、時には仕事を取り合い、いいライバル関係を築くことで、
刺激的な日々を過ごしていました。

ところが、2年ほど働いた頃、先輩の一人がお店を辞めて独立することになったんです。

僕自身は、自分が一番働きたいお店で、充実した毎日を過ごしていましたが、
その先輩のことを特に尊敬していて、「一緒に働きたい」という気持ちがあったため、
お店を辞めてその方についていくことにしました。

その後は、新しく開かれるお店のオープニングスタッフとして、

「いいお店にしたい。より多くのお客様に来てほしい。」

という一心で、とにかくガムシャラに働いていましたね。

既存のお店の1スタッフに比べ、より大きな責任が伴う立場だったため、
大変なこともたくさんありましたが、それ以上に充実していて楽しかったです。

そしてついに、新しいお店がオープンして1年ほど経った頃に、
スタイリストとしてデビューを果たしたのですが、最初はとにかく緊張していました。

とはいっても、自分の技術や経験が不足してることを悟られ、
相手を不安にすることだけは避けたかったので、とにかくお客様との会話に力を注ぎ、
少しでもいい印象で帰ってもらうことを心がけ、仕事していましたね。

自分が作ったお店にお客様を呼びたい


必死にスタイリストとしての活動を続けていくと、少しずつ自分に余裕が出てきて、
段々自分のレベルを把握できるようになっていきました。
また、働いてたくさんのお客様と接するうちに、

「結局は、自分はお客様に成長させてもらっているんだ。」

ということに気づいたんです。

以来、より自分のレベルを上げていくことの必要性を感じ、
1人の美容師としてレベルアップすることを追及し続けたいと思うようになりました。

そのように、一生1人の美容師として生き続けるつもりでいたため、
一般的な美容師のセオリーである「独立」には、あまり興味がありませんでした。

しかし、長く働いていくうちに

「自分が作ったお店にお客様が来てくれたら、もっと嬉しいんじゃないか?」

と感じるようになり、少しずつ独立を意識するようになったんです。

そんなことを、ある時、新卒で入った美容室の同期で、2つ目のお店でも、
約12年一緒に働いていた加藤さんに話してみると、
彼も僕と同じように「自分のお店を持ちたい」と考えていることを知りました。

加えて、長年同じような環境で喜びや悩みなど、あらゆることを共有してきたため、
お店に対する思いなど、考え方の方向性も似ていたんです。

とはいえ、一緒にやっていくことがお互いにとって最善かどうかはわかりませんでしたし、
気心が知れている相手だからこそ、甘えてしまう不安もありました。

でも、僕はどちらかというと感覚で動くタイプで、加藤さんは比較的几帳面で慎重なタイプだったので、
ある意味正反対の性質を持っており、だからこそお互いを補い尊重しあうことで、
よりよい価値を生み出せるのではないか、と思ったんです。

そこで、僕と加藤さんの共同経営という形で、新しく自分たちのお店を開くことにしました。

一人の美容師であり続けるために


その後、具体的にお店のコンセプトなどの話を進めていく中で、
結局、今の自分たちがあるのも先輩や後輩、そしてお客様などの「人」のおかげだということを実感し、
お客様やスタッフの大切な人を連れてきたくなるお店を作りたいという思いから、

「大切な人と来れるお店」

というコンセプトを設定し、2014年の6月に、『kiito』と名づけた美容室をオープンしました。

まだ、お店を開いてからは4か月ほどしか経っていませんが、
共同経営をして感じるのは、

「1人だと1日は24時間でも、2人だと48時間になる」

ということです。

例えば、1人が業務で忙しい時は、もう1人が経営寄りの事務作業を行う、
というようにより効率的に時間を使うことができるんです。

また、自分が思う決断が正しいのかどう不安な時に、それを確かめることができる、
信頼できる相談相手がいることもとても良いメリットだと感じていますね。

加藤さんとはこれからもよきパートナー、よきライバル、よきパパ友(笑)として、
少しでもコンセプトに基づいたお店に近づけられるように、
共に頑張っていきたいと思っています。

正直、今はまだ会社としても、お店としても、美容師としてもまだまだ未熟で、
それぞれの木の根を育てている状況ですが、ゆくゆくは働いている美容師がどんどん独立して、
枝分かれをして大きな木となるように育てていきたいですね。

また、「大切な人と来れるお店」というコンセプトには、
訪れた人のライフスタイルをより豊かにするものでありたい、という思いも込められているので、
髪だけではなく、空間や時間を楽しんでもらえるように、『kiito』という場を通じて、
様々なものをマッチングさせ、 色々な人に付加価値を提供できる空間づくりをしていきたいです。

そうやって、まだまだやっていきたいことはたくさんありますが、
お店や会社という木を支えている根っこにあるものは、美容師だと思うんです。

その根をブラさないという意味でも、僕自身はこれからも一人の美容師であり続けたいですし、
この大好きな仕事をずっと続けるために

「どうすれば美容師であり続けられるか」

ということを、僕の一生をかけて追及していきたいですね。

2014.10.14

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