様々な楽しみ方のあるお店に。お客様と美容師の相乗効果で豊かな人生を。

美容師として16年間キャリアを積み、2014年6月、ついに自分のお店を持つという夢をかなえた加藤さん。「いらっしゃるお客様も、働いている美容師たちも『楽しい!』と思える場所にしたい」と話す背景には、ご自身が美容師としてキャリアを積まれる中で感じた、ある思いがありました。

加藤 隆行

かとう たかゆき|美容師
東京都渋谷区にある美容室『kiito』を運営する、株式会社ハルニレの共同代表取締役を務める。

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文化祭のファッションショーを手伝う


小学校の時に父親の影響で野球を始めた僕は、スポーツ刈りの典型的な野球少年でした。
中学に入学後も野球を続け、校則で決まっていたこともあり、坊主にしていましたね。

ところが、中学2年生の時に肩を壊してしまい、野球を辞めることになってしまったんです。
そこで、その時流行っていたラグビーの学園ドラマを見て、
自分もやってみたいと感じ、高校からはラグビー部に入部しました。

高校からは、坊主にする必要もなくなり、
服装が自由な学校で、男子校だったために彼女を作りたいという思いもあり、
自然とおしゃれに気を使うようになっていきましたね。

そして、高校2年生の文化祭の時に、
仲の良い友人が自分で洋服を作って、ファッションショーをやることになりました。
そこで、何か手伝って欲しいと頼まれ、その場の流れで僕がヘアアレンジをすることになったんです。
ファッションにはもともと興味があったので、実際にやってみるととても楽しく、
翌年の文化祭と合わせて2年連続で、ファッションショーに携わることになりました。

その後、ある日ファッションショーを一緒に行った友人と、将来について語り合っていた時に、
彼が「服飾専門学校へ行って自分の服を作る」と言ったんですね。
そこで、「じゃあ、いつか自分がその服に合った髪型をセットするよ」と約束し、
本格的に美容師を目指そうと考え始めました。

そして、同級生が皆大学を受験する中、僕は美容師専門学校を受験したんです。

言いたいことが言えなくて、つぶされているような感覚


専門学校では、1年目に国家試験の対策をしていました。
2年生では少し実践的な理論を学ぶのですが、あまり積極的には学んでいませんでしたね。
実は学校の仕組みとして、技術を向上させるというよりも、
国家試験に受かり、就職さえすればいいという雰囲気があり、
それがあまり好きではなかったんです。
そのため、学校に通うよりも、友達と遊んでいることが多かったですね。

その後、就職を考える時期になり、読んでいた美容師の専門書の中で、なんとなく他よりかっこいいと感じた美容師の方のお店に、
お客としてまずは行ってみることにしました。

すると、カットの技術はもちろんなのですが、
それ以上に、お店や人の雰囲気にとても魅力を感じ、
ここで働きたいと思ったんですよね。

そこで、お店にすぐに履歴書を送り、
なんとか面接会をくぐり抜け、採用してもらえることになりました。

実際にお店に入ってからは、毎日練習とテストの繰り返しで、本当にクタクタになるまで必死に働きましたね。
その時、一般的には、美容師として一人前になるまで2~3年はかかると言われていて、気が遠くなる思いでしたが、
毎日たくさんのお客様と接することで、美容師という仕事において何よりも「人」が好きなんだということに気づき、
その「人」 のためにという思いで、続けることが出来ました。

そうやって働き始めて2年ほど経ったある日、オーナーがお店でスタッフ全員を集め、
「最近店の雰囲気が良くないから、何か不満がある人は正直に話して欲しい」
と言ったんです。

そこで、下積みの身でありながら、その時の自分自身が思う、素直な気持ちをぶつけてみました。
「プライドや、立場、経験だけで、素直に思う気持ちも聞いてもらえず、
すべてが正しくない事だって評価になってしまうことって、納得できません。」と、、、。

実際、言いたいことが言えなくて、つぶされているような感覚がありましたし、
生意気と思われてもいいやと思ったんですよね。

プライド、立場、経験も、関係なく、素直な気持ちをぶつけたので、すっきりしました。
しかし、そうすることで、正直その環境には居づらくなってしまったことも事実で、
その後すぐにお店を辞めることにしたんです。

尊敬する先輩のもとで同期と再会


辞めた後は、もう美容師はやりたくないと投げやりな気持ちになっていて、
なんとなく旅にでも出ようかと思い、旅費を貯めるため、
ガソリンスタンドでアルバイトをしていました。

しかし、3ヶ月程働いた時に、ふと「これから自分は何になれるんだろう?」と、将来に不安を感じたんです。
お店を辞めて別の仕事をしていることも親に言いづらかったですし、
やはり「人」のために、自分が出来る事は美容師しかない!!と気づきました。

それからは、とにかくまず働こうと思い、友人の伝手をかり、
その時アメリカの画家のドレッドヘアーに憧れていたこともあり、
ドレットやエクステンションを得意としているお店で、働かせてもらうことにしました。
その店に入ってからは、技術を学ぶことに一生懸命、日々を送りましたね。

ところが、半年程経った頃、
最初のお店でとてもお世話になり、一番尊敬していた先輩が、
独立してお店を開くので、うちで働かないかと誘ってくれたんです。

今のお店に入ってあまり時間が経ってなかったですが、
その先輩のお店なら是非働いてみたいと強く思ったので、
一通り学びたいことを学び終え、10ヶ月ほどで原宿のお店を辞め、
新しいお店に移りました。

そして、ここでは美容師としてのすべてを学ぶことができました。
技術的にも、人柄としても尊敬できる先輩が引っ張っていてくれたので、
お店のためにも、そこに来てくれるお客様の為にも、一生懸命頑張りたいと思い、必死でした。

どうすれば、お客様を増やし、いろいろな「人」と出会うことができるのかと思い、
お客様への接客の仕方の提案など、
自分にできる、お店を良くするためのアイデアは、どんどん言葉にしていきました。

しかし、長年そのお店で働いていく中で、行動にも言葉にも、もちろん責任が生まれていきました。
物事をいろいろ考えて行動を積み重ねていく中で、
自分が作った店で、これまでに培ってきた事を生かせたら、
もっと楽しいはずと思い、独立というものを意識し始めました。

そんな時に、岩井さんという、
東京で最初に働いたお店の同期でもあり、そのお店でも一緒に働いていた良きライバルでもあり、
立場同じく苦楽を共にし、喜び、悩み行動を共にしてきた仲間に、
自分の正直な想いをぶつけてみると、彼も同じように、自分のお店を持ちたいと思っていたことを知りました。

そして、その後も二人で話を重ね、夢や希望を語り、
タイプの違う二人ではあるけれど、一人より二人のほうが、より強く、
またお互いを尊敬しあえているのであれば、良い相乗効果があって、
いいものが生まれるのではないかと思い、
自分たちの納得のいく新しい店を作ろうと決心しました。

自分たちのお店のコンセプト、ビジュアル、事業計画などを具体的に練り上げながら、新店の準備を寝る間も惜しんで行い、
12年9ヶ月勤めたお店を辞めました。

お客様にとっても、働く人にとっても楽しい場所にしたい


そして2014年3月に岩井さんと共に、株式会社ハルニレを立ち上げ、
ついに、6月に自分たちのお店、『kiito』をオープンしました。

kiitoでは、今までの自分たちの経験から感じて考えたことを元に、
経験、立場などは関係なく、自由にやりたいことを心から言い合えて、
楽しく働ける場所にしようと決めました。

働くみんなが、お店やお客様のためにを想って考えた事であれば、
言いたいことを言える環境こそが、みんなの将来の夢を叶える為の糧(土壌)になるような良い場所にもなると思うんですよね。

もちろんお店に来て頂いたお客様にとっても笑顔でいられる場所であるために、
お店の環境には特にこだわり、木を沢山使い、食卓や、縁側などを表現して、
まるで家に居るような、落ち着きがあって、ゆっくりとくつろげる空間を提供しています。

また、店内にドライフラワーを飾っているのですが、
例えば、このドライフラワーを作った方のワークショップが出来たらいいな、と考えているんです。

他にもやりたい事は、まだまだ沢山あり、
この場所に来るのは髪を切る為だけではなく、様々であっていいと思っています。
来てくれた人たちのʺlife styleʺがより実りある豊かなものになるように、
笑顔で自然に人が集まって来てくれるような場所になることが理想ですね。

今は経営に関して、分からない事ばかりで、
自分の意見と、経営者としての自分の意見で葛藤することも多くあります。
ですが、そんな時こそ、心から信頼できる、共同経営者であり、また良き友であり、
良きライバルでもある岩井さんと、共に支え合い、
コンセプトでもある「大切な人たちと一緒に来てもらうことのできるサロンづくり」を目指して、
今は小さな幹ですが、大きくしっかりしたものにしていけるよう頑張っていこうと考えるだけで、
これからが楽しみで、仕方がないです。

これからも、「人」を大切に。楽しく。

2014.10.14

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