私は福岡県で生まれましたが、生まれてすぐに引っ越して神奈川県で育ちました。生まれつき左耳が聞こえなかったのですが、周囲の友だちには隠していました。日常生活はそこまで不便ではなかったのですが、左側から小さい声で話しかけられると聞こえず、映画館等で座る位置とかは気にしたし、聞こえなかった時も冗談等を言ってばれないようにしていました。

知られたら周りの人が離れてしまうのではないかと、いつも人の顔色を伺っていましたね。この頃から、人の心の中が知りたいと、心のどこかで思うようになっていました。

一方で、「自分にしかできないこと」にこだわりがあり、将来は戦場のカメラマンや国境なき医師団のような、第一線で働く仕事をしたいと思っていましたし、何に対してもやるなら一番を目指したいという思いがありました。

そこで、高校生になってカナダに1年間留学し、大学は医学部を目指していました。しかし、受験期間に帚木蓬生さんの『閉鎖病棟』や、24の人格を持つビリーミリガンの小説を読む中で、人の精神や心により関心を抱きはじめ、人の心と頭はどうやってつながっているのか、どうしたら人の心は動くのかを考え始めました。そういったことに関わる認知心理学という学問があると知り、そちらを目指すようになったんです。

そして一浪の末、東京大学の理科Ⅱ類に進学することができました。