日本のコンテンツが盛り上がる場所を創る。国を超えて描く、少年時代の憧れへの挑戦。

アニメ・ゲームに特化したクラウドファンディング・サービスを運営する平さん。大学を卒業後、一度は就職しながら、25歳にしてタイ人の共同創業者と会社を立ち上げるに至った背景には、いったいどのようなエピソードがあったのでしょうか?

平 皓瑛

たいら ひろあき|ゲーム・アニメ特化のクラウドファンディング・サービス運営
ゲームに特化したクラウドファンディングサービス『Crowdrive』、
アニメに特化したクラウドファンディングサービス『Anipipo』を運営するグーパ株式会社の代表取締役を務める。

Crowdrive
Anipipo
グーパ株式会社

アメリカでアニメに没頭していく


転勤族の家庭に生まれ育ち、小さい頃から引っ越しを繰り返していました。
そのため、転校して友達と離れることには慣れていたのですが、
小学4年生になり、三重県からアメリカに引っ越すという話を聞いた時はさすがに驚きましたね。

引っ越し先はシリコンバレーだったのですが、
三重県で釣りばかりしていた僕にとっては大きな環境の変化でした。(笑)

しかし、実際に引っ越してみると、日本人が多い環境で、
現地校に通いながらも、あまり英語を使わなくて済んだので、
特別生活は辛くありませんでしたね。
もともと、置かれた環境で楽しむタイプだったこともあるのかもしれません。
その後、中学高校と進学するうちにちゃんと英語も勉強するようになり、
外国人の友人も増えていきました。

また、ちょうど、ピクサーを筆頭に、3DCGの映画がアメリカで流行っていたこともあり、
その影響をもろに受け、アニメや漫画に没頭するようになりました。
日本のコンテンツはアメリカでも非常に好まれており、自分自身、海外にいるからこそ、
日本のコンテンツを欲していましたね。

また3DCGの中でも、特に『トイ・ストーリー』を見た時に、

「何だこの世界観は!」

と、衝撃を受けたんですよね。
実写では出来ない表現で、子どもから大人まで感動するようなコンテンツを提供しており、
いつしか漠然と、こんなものを作れたら楽しいだろうな、と考えるようになったんです。

それからは、学校の選択科目で美術を選んだり、
夏休みに3DCGを学ぶアニメーション制作の学校に通ったりと、
段々とクリエイターという職業にも関心を抱くようになっていきました。
扱う内容はもちろん、そういったことをしている周りの人も好きでしたね。

そんな学生生活を経て、高校の卒業を迎えると、
ちょうど家族で日本に帰国するということになったので、
一緒に日本に戻り、世界中で愛される日本のアニメコンテンツについて学ぶため、
日本の大学に進学しようと決めました。

アニメ業界の裏側とアメリカ留学


日本に帰国してからは、美術系の4年制大学でアニメーション学科がある大学を探し、
東京工芸大学に入学しました。

実際にアニメーション制作の裏側を学び始めると、
一視聴者では見えないような大変さを知ることが出来ました。
最初の授業で、ある教授から、

「この業界の初任給は、7・8万円だからね。」

と言われるくらい、境遇の厳しい業界だったのですが、
実際に業界の人と関わる中で、
「どう生活しているんだろうこの人たち?」と感じることが多かったですね。

それでも、制作活動は非常に楽しく、
特に自分は、周囲のクリエイターのコミュニケーションを円滑にするような、
プロデューサー側でやるほうが向いているかもしれないなと思うようになっていきました。
創作者としては、やはり図抜けた人がいるという現実もありました。

そんな大学生活を過ごし3年生になると、教授から、大学の留学プログラムに参加してみないか?と声をかけてもらったんです。
そのプログラムは、アメリカの大学に半年間留学するものだったのですが、
正直、就職活動が終わっていないこともあり、一旦考えたいと思っていたのですが、
父親から、アメリカの学生はすごく勉強しているから、良い経験になると説得され、
参加することに決めたんです。

その後、なんとか写真広告の制作会社に就職が決まり、
卒業までの半年間、アメリカの大学で生活をすることになりました。

実際に現地に行ってからは、予想以上に皆勉強することに驚きましたね。
朝7時には学校に行き、夜中3・4時まで勉強をするような調子で、
自分と同じような留学生で、英語が出来ない学生もガンガン発言するんです。
ここまでやっているなら世界で活躍するよな、と思うと同時に、
日本人、大丈夫なのかな?とも感じました。

また、勉強だけでなく、金曜の夕方からは、記憶がなくなるくらいまで遊んでいましたね。(笑)
皆陽気で、悩んだりはするもののうじうじせず、やりたいことに突っ走っていました。

そんな中でも、タイ人のビンセントという学生とはかなり意気投合し、
いつも一緒に遊んでいました。
性格が似ていたり、お互いの母親の誕生日が一緒だったり、不思議な縁があり、
帰国時には、お前とはいつか一緒に何かすると思う、と話をして別れました。

離陸30分前に決まったチャレンジ


帰国後、4月からは写真広告の制作会社の営業職として働き始めました。
正直、最初は写真の撮影自体に慣れていなかったり、
周囲とのコミュニケーションにも気を使ったりと、諸々大変さを感じていたのですが、
以前から関心の強かった3DCGの部署に移動になってからは、どんどん仕事が楽しくなり、
心地よく働けるようになりました。

そんなある時、留学先で仲良くなったタイ人のビンセントが、
スノーボードをしに、北海道に家族旅行に来ると連絡をしてきたんです。
それまでは全く連絡をとっていなかったのですが、良い機会だと思い、
僕も一緒に旅行に行くことにしました。

元々、ビンセントの兄弟とも知り合いだったこともあり、
旅行自体は非常に楽しい時間を過ごし、空港でお互いの飛行機の待ち時間に、
いつものようにたわいもない会話をしていました。

最初は女の子の話などくだらない話だったのですが、
離陸の30分前になると、気づけば一緒に何か新しいことをしようという話になっていたんです。
最終的には、近い将来、何か一緒にやろうということになり、
お互い別々の飛行機に載った後は、機内でずっとアイデアを考えていましたね。

その後、旅行から帰ってからもコミュニケーションを取り続け、
実際に一緒にプロジェクトを立ち上げようということになったのですが、
仕事が忙しかったこともあり、2足のわらじでは、忙しくてどっちつかずになってしまったんです。

そこで、これはよくないと思い、改めて相談した結果、
僕たちは、会社を辞めて、一緒に新しく会社を立ち上げようということに決まったんです。
僕が25歳、ビンセントが24歳で、もう1人タイ人のエンジニアと3人で会社をスタートすることが決まりました。

独立後の試行錯誤


ところが、最初に取り組んだ大学生向けのグループSNSのサービスでは大ゴケしてしまったんです。
ターゲットになる大学生をよくわかってなかったこともあり、
作って出して3ヶ月で違うと思ってしまったんですよね。

そこで一度立ち返って、改めて何がしたいだろうと考えると、
やはり自分はアニメ関連で何かしたいと考えたんです。
そして、大学時代にお世話になった教授に相談しにいき、改めて色々と話を聞いてみると、
業界が抱えている課題を、クラウドファンディングという手段を使って解決できるのではないかと考えるようになりました。

今後は、クリエイター個人がブランディングをしていき、
個人が愛されるから作品が売れるという時代になると思ったんですよね。
そして、そのためにはクリエイターとファンが繋がること、
クリエイターがちゃんと食べていくことが出来るようなエコシステムが必要で、
その手段として、クラウドファンディングは何か大きなインパクトを与えられるような気がしました。

そんな背景からアニメに特化したクラウドファンディング、
『Anipipo(アニピポ)』をリリースしたのですが、
正直、リリース後も、上手くいくことばかりではありませんでしたね。

アニメーション業界の知り合いを回って、プロジェクトオーナーになる方を探したのですが、
皆オリジナル商品を作る時間がなかったり、業界特有の問題等もあり、
思ったよりプロジェクトを増やすことが大変だったんです。

加えて、作品ができた後の出口を作れていないことも、
サービスの課題となっていることに気づいていきました。

幼少期の感動をもう一度


そんな風に、運営してみて見つかった課題に取り組んでいた折、
ご縁があり、セガネットワークス社の方と話す機会をいただいたんです。
そして、話をしていくうちに、僕たちがクラウドファンディングを通じて取り組もうとしていた課題に、
ゲーム業界としても同じように課題感を抱いていることが分かりました。

現在、ゲームにおいては、各ゲームのタイトルとユーザーのコミュニケーションが少なく、
1・2ヶ月遊んで飽きられてしまうような状況で、長く続くタイトルが生まれ辛い状況なんです。

そこで、資金を得るための手段としてだけでなく、
マーケティングやコミュニティを作る機能として、
様々なフェーズでクラウドファンディングを活用できるんじゃないかという話が生まれていきました。
また、Anipipoで課題に感じていた出口の乏しさや、情報の拡散力について、
パートナーとして、フジテレビに協力していただけることになったんです。

そうして、3社が提携した事業として、
ゲームに特化したクラウドファンディングサービス『Crowdrive』を、
2014年10月にリリースすることが決まりました。

まずはスマホゲーム等から、ゲーム会社が上げたプロジェクトにファンが支援していくような場を作っていきたいと思っています。

今後はそうやって、日本のコンテンツが盛り上がっていく場所をつくることで、
幼少期にアメリカでうけたような感動を、もう一度世界中で起こしたいなという気持ちがあります。
日本のコンテンツを世界に届けたいという気持ちがあるんですよね。

また、同時に、それを支えるためにも、
クリエイターが創ることで食べていけるようなエコシステムを創ることが大事だと思っています。
そしてそのための手段としては、クラウドファンディング以外であっても良いと思っています。

そんな風に、小さい頃から好きだったコンテンツに携わっていきたいですね。

2014.10.07

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