時間が出来たら、他人のことを考える社会へ。NPOへの挑戦から見つけた「問題解決」の形。

コンサルタントとして会社で働く傍ら、「スキマ時間で人のサポートをする」というコンセプトで、時間を寄付できるマイクロボランティア・プラットフォームを運営する渡邉さん。昔から「問題解決」に関心があったという渡邉さんが、NPOの運営者として直面した課題とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?

渡邉 亜紀

わたなべ あき|コンサルタント/マイクロボランティア・プラットフォーム運営
コンサルタントとして企業にて働く傍ら、「スキマ時間で人のサポートをする」というコンセプトで、
時間を寄付できるマイクロボランティア・プラットフォーム『CollaVol』を運営している。

CollaVol

問題解決への関心


小さい頃からピアノに熱心に打ち込んでいました。
2歳から習い始め、コンクールで入賞したり、海外に行くこともあり、
自らの個性を表現したいという思いが身に付きましたね。

小学生頃まではピアニストになろうとも考えたのですが、
年を経るごとに段々と関心が変わっていき、
高校生になると、ふと研究者になりたいと考えるようになったんです。

もともと理科が好きで植物や人体に関心があったというのも1つの理由なのですが、
人の身体の仕組みを知って病気を直す、というような、
「問題解決」への関心が非常に強かったんですよね。

そんな影響もあり、より人間の生活を豊かにするものに関わりたいという考えから、
大学では農学部に入学し、生命科学の領域を学ぶために大学院にも進学しました。

大学院では、生活習慣病や癌の治療のための薬の研究を行い、
卒業後は研究者になることも考えたのですが、
研究の成果が市場に出るのに時間がかかることがネックに感じたんですよね。

そこで、もう少し市場に近いところで、自分の主軸を置いてきた研究を活かせる産業を探し、
製薬会社の研究開発職として、創薬に関わる仕事に携わることに決めました。

転職・退職・NPO設立へ


社会人になり実際に仕事を始めてみると、製薬会社の開発部門だけでなく、
より高い視座から業務を俯瞰的に捉え、企業の問題解決に携わりたいと考えるようになり、
様々な企業の経営課題解決を提案するコンサルティングファームに転職しました。

コンサルに転職してからは、様々な産業がどのように動いているかを知ることができ、とても刺激的でしたね。
しかし、ちょうど転職して1年ほど経ったタイミングで、
結婚したばかりの主人が転勤で栃木に行くことになったんです。
新婚だったこともあり、私も会社を辞めて、主人と一緒に栃木に住むことに決めました。

また、ちょうどそのタイミングで、母から、
クラシック音楽業界を盛り上げる活動を手伝ってほしいという依頼を受けたんです。

もともと、母はピアノ教室やクラシック音楽関係の団体を運営していたのですが、
少子化やコアなファンの高齢化で、
業界自体の盛り上がりが無くなってきていることに対し、
困っているという話を以前から聞いていました。

そんな背景に加え、ちょうど私も会社を辞めるタイミングだったこともあり、

「東京を離れるから、この問題を解決するための事業をやってみようかな」

と考え、クラシック音楽業界を盛り上げることを目的としたNPOを設立することに決めたんです。

もともと「0⇒1」への関心は強かったこともあり、
新しい事業を始められることに対しては大きなワクワク感を感じましたね。

「人」と「金」の悩み


ところが、いざNPOを立ち上げ事業を始めてみると、
人やお金を中心としたリソースを継続的に集めていくのが難しいという課題に直面しました。

立ち上げたNPOではクラシック音楽のイベントを行う事業をメインとしていたのですが、
定期的にイベントを開催・運営するための人的リソースが不足しており、
毎回自分の知り合いに依頼していたのですが、
「いつも申し訳ないな」という気持ちがありました。

更に、イベントの後に、いつも手伝ってもらっている方以外の人から、
「それ、知っていれば手伝ったのに」と言われることがあったんですよね。

それ以来、漠然と、「困っている人」と「リソースを持っている人」を可視化できたら面白いんじゃないかと感じ、
そのようなツールが無いか、情報収集を始めるようになりました。

そんなある時、『Kickstarter』という、
海外のクラウドファンディングサービス(特定の目的のための資金を、ネットを通じて多数の支援者から収集し実現する手法)
を見つけたんです。

初めて見た時は、新しい資金調達の方法として感銘を受けましたね。
小額から出資ができ、少しずつを多くの人たちから集めることで結果的に多額を集めてプロジェクトを実行することができること。
そして出資額に応じたリターンもあり、明確なインセンティブ設計がされていることについて、
上手い仕組みだなあと感心しました。

そして、自分自身がNPOの運営で悩んでいた人とお金のうち、お金については新しい解決手段があるにも関わらず、
人に関しては誰もやっていないことに気づいたんです。
同時に、誰かがやらなければいけないという気持ちを抱く自分もいました。

そこで、誰かが困ったときに、スポットで気軽に人とつながれる仕組みを作ろうと思うようになったんです。

時間ができたら他人のことを考える社会


アイデアを思いついてからは、その日のうちに行動を開始し、
サービスの画面のデザインができると、エンジニアとのマッチングイベントで協力してもらえる人を見つけ、
「スキマ時間で人のサポートをする」というコンセプトで、
時間を寄付できるマイクロボランティアのプラットフォーム、
『CollaVol(コラボル)』というサービスをリリースしました。

案を思いついてからサービスのリリースまで3ヶ月、というスピードでしたね。

そして、実際にサービスをリリースしてみると、かなり順調に滑り出し、
一気にユーザーが増えていったんです。

また、ボランティアに取り組む際の一番のボトルネックになっている、
「活動に費やせる時間がない」という問題を解決するため、
従来のボランティアのタスクを細切れにし、数分~数時間で可能なマイクロタスクに落とし込み、
「マイクロボランティア」という新しい取り組み方を提案したサービスだったのですが、
ユーザーの方から、「これだったらできる」という反響を貰うことが出来たんですよね。

それを聞いてからは、自分が描いていた価値を少しは提供できているんだな、
と感慨深く感じました。

現在は再び主人の仕事により東京に戻り、コンサルで働き始めました。
コンサルタントとしても、やはり新しい価値を世の中に創出し、
問題解決につなげたいという思いがあり、取り組んでいます。

『CollaVol』に関しては日本だけに留まらず、世界中に広げていきたいという思いがあります。
そうやってサービスが広がっていくことで、
時間が出来たら、自分のことだけでなく、他の人のことを考えるような社会にしたいですね。

いずれは、社会の問題を身近に考えるのを当たり前にしたいという気持ちがあります。

2014.10.06

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