一つ屋根の下で感じた世代間格差。目指すはオフラインコミュニケーションの復権!

中国から日本へ来たこと、そして独特な寮生活をきっかけにコミュニケーションについて考え始め、「世間で起きる問題は必ずコミュニケーションが原因であり、時代に調和したコミュニケーション提供への試行錯誤が私のライフワークです」とおっしゃる孔さん。今までどんなことを感じ、これから何を目指していくのかお話を伺いました。

孔 維博

こう いはく|時代に調和したコミュニケーションツールの提供
時代ごとに発生するコミュニケーションの課題を解決するために、時代に調和したコミュニケーションツールを世間に提供していく、株式会社 あってぃらの運営に携わっている。

違和感を感じる心の距離


私が生まれたのは、中国のハルビンという場所でした。そこは、寒く厳しい気候だったので、みんなで助け合わなければ生きていけないような環境でした。昔の村社会の影も色濃く残っていて、みんなが仲間意識を持ち、人と人との距離が非常に近い町だったんです。

小学生になった頃、父は仕事の関係で日本へ行き、僕は、祖母と暮らすようになり、学校の先生や近所の人等、町全体で育ててもらいました。そして、小学校3年生の時に、父に呼ばれ、僕も日本で暮らすことになりました。

初めのうちは言葉も通じないですし、距離感も掴めませんでしたね。ただ、言葉なんて、周囲の人が言っていることを真似ていればすぐに話せるようになったんですが、人との距離感って結局はその人の感性なので、教わるものでも、真似できるものでもなかったんですよね。

そのため、表面的には周りのみんなと同じようなコミュニケーションは取れているはずなのに、距離感は掴めず、心のどこかで分かり合えていないように感じる部分があって、ずっとモヤモヤを抱えていまいた。

経験値の蓄積


そんな違和感を感じたまま成長し、北海道大学へ入学しました。後期入試で合格したため、アパートを探す時間も選択肢も無く、大学の寮に住むことにしたんです。

入ってから知ったのですが、そこはいわゆる「悪名高い寮」で、先輩たちの言うことは絶対やらなければならず、例えば赤いふんどしを着て買い出しに買い出しに行かされたりもしました(笑)そんなことばかりで、1ヶ月で半数以上の新入生が寮を出ていく程、体育会系で非常に厳しい寮でした。

でも、理不尽なことも本当にたくさんありましたが、人同士の関係は本当に密接で、親身になって接してくれる人がたくさんいたんです。今までとは違い、言葉だけでなく心から通じ合えた気がして、僕にとって非常に居心地がよかったんですよね。

この環境で過ごしたことで、コミュニケーションは経験だということを学びましたね。ある程度質の高いコミュニケーションを数重ねることで、人間関係が円滑に進み始めることに気づいたんです。この寮生活で、僕の経験値はたくさん蓄積されたと思います。

ただ、世間ではITバブル最盛期で、ベンチャー企業がどんどん立ち上がっており、自分も歴史に名を残すようなサービスを作りたいと考えるようになりました。そのためには今の大学の環境では満足できないと感じ始め、半年ほど仮面浪人をして、京都大学の経営学部に入ったんです。

次の課題


ここでも、たくさんのことを吸収したいと思い、大学の寮に入りました。入った熊野寮はすごく汚くて、誰が見てもめちゃくちゃで、家賃は700円という独特なところでした。そして、住んでいる人も、大学生でも賃貸住宅を借りることが一般的なこの時代に、敢えて寮生活を選ぶということは、何かの特徴を持っている人ばかりだったんです。

何事に対しても動じない市民活動家の人や、学術的に優れている人など様々な個性的な人がいたのですが、特に、精神的に弱っていた彼女のために何年も留年していた先輩からは色々学ばせてもらいました。彼は、誰に対してもきめ細やかな気配りができて、人との距離の掴み方もすごく上手だったんです。

そんな人たちとの出会いで、一人ひとり違う特徴を持った人が、こんなにたくさんいるのかと驚き、また、幼少期からずっと悩まされていた、人との距離の取り方も徐々に理解し、心から違和感のない人付き合いができるようになっていきました。

そんな中、年次が進むに連れて、コミュニケーション上の距離感の縮め方には、世代間で全く違うことを感じるようになってきたんです。

僕は寮に長くいた事で、新入生が感じるであろう距離感を縮めるには、4回生の自分たちがどんなコミュニケーションを取ればいいのか考えていたんですが、自分が1回生の時と、4回生の時に入ってきた1回生は全然違っていたんです。

それこそ育った環境が違い、ずっとネット社会の中で生活してきた彼らは、自分たちの世代と比較して、対人コミュニケーションが苦手な人が多かったんです。そのため、僕が想定していたやり方では距離感は縮められないと思ったんですよね。

コミュニケーションの課題を解決する会社


この感覚を持ってから、経験してきた事の違いによって生じる、世代ごとのコミュニケーション方法の違いを埋めることが、私の次の課題となりました。世の中には時代ごとに違ったコミュニケーション課題があり、その時代に調和したコミュニケーションの取り方を、誰かが提供し続けなくてはならないと考えるようになったんです。

その一方で、就職の時期に差しかかってきましたが、就職はしないことにしました。経営学を学ぶ中で、自分は会社員として組織システムの一部になるよりも、経営者として仕組みを作る側になりたいと考えていたんです。在学中に会社をやったりもしていましたが、卒業後も寮に在籍したまま2年程フラフラしていたんです。そしてちょうど僕が卒業した年に、寮に入ってきた新入生がいました。

彼は、知識量も非常に多く、話も面白くて、とても親しくなりました。歴史についても、非常にマニアックな部分まで語り合うことができ、また歴史的背景を共有した上で話すことができるので、なんでも共通認識を持ちながら話すことができたんです。

そして2014年6月、コミュニケーションの課題を解決するべく、その彼を代表として寮の仲間たちで、株式会社あってぃらを設立しました。

オフラインコミュニケーション


この会社は時代に調和したコミュニケーションツールを提供することをコンセプトに、様々なサービスを展開してく予定です。その1つ目として、今はボードゲームに特化したSNSを作っています。

ボードゲームやテーブルゲームは、寮に住んでいる時も利用しましたが、オフラインのコミュニケーションツールとして非常に有効なんです。ボードゲーム発祥の地であるドイツでは、大人が社交としてボードゲームを行うのが一般的ですし、日本で話題の人狼ゲームも、昔からあるゲームなんですけど、今これほど取り上げられているということは、こういったオフラインのコミュニケーションツールが求められている現れなのだと考えています。

ボードゲーム愛好家は日本にもたくさんいるんですが、それぞれが小さなコミュニティを形成するところで留まってしまっているので、SNSを使うことでよりつながりやすくして、リアルで会う機会を増やせればと思っています。

近年の技術の進歩によって、メールやSNS等コミュニケーションの幅は広がったとは思いますが、それはあくまでオンライン上での話で、結局は直接会った上で、密なコミュニケーションを取ることを人は心のどこかで求めているんですよね。そのため、僕たちは「オフラインコミュニケーションの復権」を目指していて、第一歩がボードゲームという手段なんです。

社会や組織の問題も、紐解くと最終的にはコミュニケーションの課題に行きつくことが多く、その課題を解決することが社会問題の解決にも繋がると考えています。

また、何か問題が起きたら「最近の若者は」とよく言われますが、ローマ時代の遺跡にも同じことが書かれていることからも言えるように、世代間でコミュニケーションの問題が発生するという事実は、いつまでも解消されないことなんです。

だから、これから先も起き続けるコミュニケーション問題の解決策を提供し続け、また、世間の人にもっと問題意識を持ってもらえるよう、色々な挑戦をしてきます。

2014.09.16

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