企業の倒産に特効薬を!「ビジネスモデル」に込めた父への思い。

「ビジネスモデル」を専門テーマとする大学の教授として、企業の外部アドバイザーや、著書の出版等、多岐にわたって活躍されている川上さん。「黙っていても社長になれると思っていた」と話す過去から現在に至るまでには、ある1つの決意がありました。

川上 昌直

かわかみ まさなお|経営学者・大学教授
兵庫県立大学経営学部にて教授を務める傍ら、
複数の企業にて社外取締役、外部アドバイザーを務める。
また、『まず、のび太を探そう! 大ヒットを生み出す逆転発想 (はじめて読むビジネスモデルの本) 』(翔泳社)等、
著書の出版も精力的に行う。

公式HP
『まず、のび太を探そう! 大ヒットを生み出す逆転発想 (はじめて読むビジネスモデルの本) 』(翔泳社)

「会社って潰れるんだ」


大阪に6人兄弟の末っ子長男として生まれました。
父は会社を経営しており、小さい頃から、いずれ自分は親の会社を継ぐんだろうなと思っていましたね。

実際に、経営者として働く父親を見ていて、
断言でしゃべって、スピーディーに意思決定をして、
という姿に憧れを感じたんですよね。
父を訪ねて経営の相談に来る人も多く、色々な人にアドバイスを与えている姿も印象的でした。

そんな背景もあり、高校を卒業してからは大学の経営学部に進学しました。

ところが、大学3年生のある時、父親の会社が倒産してしまったんです。

少し前からやばいというのは聞いていたのですが、
実際に倒産したという話を聞いた際は、

「会社って潰れるんだ」

と改めて感じました。
調子が良い時を知っていたからこそ、まるで生き物のようだと感じましたね。

そして、その出来事以来、カッコよかった父が脱力してしまったんです。
肩を落としてしまい元気が無く、スピーディーに断言をして、といった面影が無くなってしまっていたんですよね。

「経営者がこうならないためにはどうしたらよいだろう」

そう強く感じました。

また、父は本や雑誌等で熱心に経営の勉強をしていました。
だからこそ、「それなのに会社をつぶしてしまうのはなんでなんだ?」という憤りがありましたね。

「経営学なんて嫌だ」

とある種拗ねてしまうようになっていきました。

ただ、その後も経営者になりたいという気持ちは残っていたので、
まずは一度就職して実力をつけようと、ある会社に就職することに決めました。

本質がわかる経営学者になろう


しかし、その後卒業が近づくに連れて、社会に出る前に、
もっとビジネスの素地をつけるためのエクストラタイムが欲しいと考えた私は、
両親に頼んで、大学院に行かせてもらうことにしたんです。
そして、避けていた経営学を、2年間しっかり学んだ後に就職しようと考えたんですよね。

そうやって実際に院に進学して勉強をしていると、
自分が小さい頃から憧れを抱いていた対象は「会社経営をすること」ではなく、
「経営者を助けること」だったことに気づきました。
よく考えると、父親が周りの経営者の悩みを解決していく姿に憧れていたんですよね。

そこで、そんな仕事はなんだろうと考えた時、
最初に浮かんだのは経営コンサルティングや税理士・会計士でした。

しかし、父親のあの経験から、もっとニュートラルな立場から経営者の役に立てればと思って、
経営学者を志すようになりました。
ただ、大学教授にもウィークポイントがあって、
当然なんですが実務経験がないってことです。

だからこそ、理論を語るには、できるだけ現場に行って、自分の目で確かめたいと思いました。
そうやって本質がわかる経営学者になろうと決意したんです。

それからご縁をいただいて、福島大学に助教授(現在の准教授)として採用してもらいました。

守りから攻めに


実際に助教授になってからは、リスクマネジメントの分野を専門的に研究するようになりました。
やはり、倒産へのネガティブイメージから、
なんとかしてそれを防ぐことはできないか、と考えていたんですよね。

しかし、実際に色々な企業の方にも可愛がってもらいながら、現場での研究を行って見えてきたのは、
リスクを防ぐためのツールなど無い、ということでした。
また、倒産する企業のうちの7割が、販売不振で潰れていることも分かりました。

そういった現状に触れて、リスクを防ぐという「守り」の考え方ではなく、
継続的に利益を出し続けるという、「攻め」の考え方に思考を変えなければと感じたんです。

そんな背景から、私は継続的に利益を得るための仕組みとしての「ビジネスモデル」を専門に扱うことにしました。

その後、母校である兵庫県立大学に移ってからは、
教授として研究や授業は行いながらも、実務の方との接触頻度をより増やしていき、仮説の検証を行っていきました。

そして、実際に確かめたい仮説を、実務で検証するというプロセスを回し、
うまくいったものは世の中に広める活動を行うようになったんです。
特に、現在は積極的に書籍の出版を行い、書いて伝えることに力を入れているフェーズだと考えています。

私にとって書くことはデトックスになっていて、
検証した理論の体系を多くの人に伝えるための作業になっているんですよね。

経営学の理論やツールは、コンテキスト(背景)を想定してつかわなければなりません。
いわば使用上の注意があるんですね。

なのにそれが正しくつかわれていない状況が多くあり、残念に感じています。
それが原因で、経営学なんて使えないと誤解されることもありますので。

だからこそ、現場に出向きます。
そこで正しい理論の使い方を伝えるようにしていますし、
もし不足を感じれば自分自身で新たな理論を生み出すようにしています。

経営の悩みがあるかぎり…


そんな風に、現在は検証した理論の伝え方に力を入れ、著書を複数出版したり、
ありがたいことに、複数の企業の外部アドバイザーを務めたりもしているのですが、
正直、まだ父親を救える程度には至れていないという感覚があります。

企業の「倒産」は言わば不治の病で、無くなることは無いと思っています。

それでも、状況に応じては特効薬もあると思うんですよね。
治る病気であるにも関わらずに死んでしまうのを防ぎたいという気持ちがあるんです。

だからこそ、将来はもっとビジネスモデルの分野を育てていこうと考えています。
いわゆるビジネスのトップ層だけでなく、父のような層やその予備軍になるビジネスパーソンにも、
困ったらビジネスモデルの本を読むような文化が浸透するよう、
そういった人たちの手に届くような本を書いていきたいですね。

最終的には、ごはんを食べることのように、チャレンジを行う際の1つのツールとして、
文化が根付くような状態が理想です。

言わば、経営学者がいないような世界を目指しているんですよね。
そうやって世のビジネスのレベルが高まればよいなと思っています。

2014.08.27

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