最善の医療を世界中の人々に。祖父の「なんになっこ?」に返す、僕の答え。

カンボジアにあるクリニックのマネジメント、現地の医師の情報をまとめたポータルサイトの立ち上げに取り組む佐藤さん。「最善の医療を世界中の人々が受けられる社会をつくる」というミッションを掲げる背景にはどのような思いがあるのか、お話を伺いました。

佐藤 創

さとう はじめ|カンボジアで病院経営&医療情報ポータルサイトの運営
日本・カンボジアにて病院経営支援、医療関連サイトの運営などを行う株式会社メプラジャパン の代表取締役を務める。

こんな大人になりたいな


佐賀県佐賀市で生まれ育ち、地元の小学校に通っていました。

中学校になると、同じく地元の学校に進学したのですが、
中学1年の時に1ヶ月ほど、アメリカ留学に行く機会に恵まれたんです。

実は、小学3年生の頃に同じプログラムを見て、
「これ行きたい!」と母に言ったらしいんですよね。
僕自身、明確には覚えていなかったのですが、それ以来母が留学用の貯金を貯めてくれていたこともあり、
実際に留学に行くことができました。

現地を訪れてみると、英語はあまりできなかったものの、
色々な国の人々がいて、様々な考えに触れることができました。
この経験は自分にとって影響が大きく、漠然と、

「将来はこんな風に色々な価値観の人々と働きたいな」

と考えるようになりました。
また、ちょうど帰国後に本で国連の存在を知り、国連の職員を目指すようになったんです。

その後、近隣の進学校に入学し、県でも強豪のバスケ部の活動に注力していたのですが、
高校2年生の夏休みに、友人から「次世代リーダー養成塾」というイベントに誘ってもらいました。

高校生を対象としたイベントながら、各界の著名人が講演を行い、ディスカッションをするという主旨のイベントで、
僕が憧れていた国連職員の方も登壇していたんですよね。

そこで、実際にそのイベントに参加してみると、講演者の方々のお話がすごく面白かったんです。
特に、学生起業家など、自分でビジネスをされている人のお話がすごく刺激的で、

「こんな大人になりたいな」

とビジネスや起業に関心を持つようになりました。

ところが、周囲が皆東京大学を目指すような進学校に通っていたこともあり、
高校3年生からは、「将来何になりたいか」よりも、
周りと同じように東大に合格することを目標に勉強に励むようになりました。

結局、一浪して一橋大学に入ることになり、
正直、本音では喜べない思いでしたね。

無目的にレールに乗ることへの違和感


大学入学後、初めこそ、仮面浪人をしてもう一度受験をしようかと考えていたものの、
サークルやバイトなどが楽しめるようになってからは、今の大学でできることをしようという気持ちになりました。

そんな、大学2年の夏休み、日給1万円の報酬有りという張り紙を見て、
バイト代わりになるだろうという気持ちで、IT企業のインターンに参加したんです。

実際に参加してみると、そのインターンには、普段自分と関わることのない様々な学科、異なる学年の学生が集まっていました。
今まで会ったことのないような面白い人もいて、刺激の幅が一気に広がりましたね。
それからは、外にはもっと面白い人がいるんじゃないかと思うようになり、ベンチャー企業でのインターンを始めました。

しかし、先のインターンには200人ほどの学生が参加していたのにも関わらず、一橋の学生は自分1人だったんですよね。
周りの学内の友人に話を聞いてみても、「面白そうだけど、自分にはできる気がしない」と言われ、
初めの一歩を踏み出すことが難しいんじゃないかという感覚がありました。

そこで、一橋の中でも多様な価値観の学生・社会人と会える機会を創ろうという趣旨の学生団体を立ち上げたんです。
最初はイベント運営に始まり、ビジネス企画等も行い、段々と事業性を持たせていきました。

また、その活動と並行して、3年の春からは就職活動が始まりました。
自分自身、就職活動へのモチベーションは高く、周りの学生に情報交換を働きかけたりもしていました。

ところが、初めて参加した合同説明会の会場を目にして、衝撃を受けたんです。
新宿のある会場で、同じ格好をした学生がぞろぞろ動いていて、
自分もエレベーターでその中に降りていこうとしていることに、
強烈な違和感を覚えたんですよね。

実際に、大学2年から始めたインターン等を通して、いわゆる内定のオファーをもらっていたこともあり、
キャリアの作り方は色々あるのに、画一的なレールに無目的で乗ることに強い抵抗を感じました。
大学受験の際に目的を考えずにレールに乗って挫折したことも影響していたのかもしれません。

結局、僕はそのまま就職活動を辞め、自ら起こした団体でのリーダーとしての活動に力を入れることに決め、
学生団体からNPOの申請を行い、活動を行うようになりました。

医療なら、世界中の人を幸せにできる


最初は、1年後にもういちど就職活動を行うかどうかを考えようとしていたのですが、
NPOの活動に力を入れるようになってからは、完全に就職活動から気持ちは離れていきました。
また、大学を休学して、ベンチャーの立ち上げにも携わるようになり、
自らビジネスを作ることへの関心がより強くなっていきました。

ところが、私が休学して仕事に熱中していた折、
母が体調を崩し、手術を受けることになったんです。

それからはお見舞いのために病院に何度も通ったのですが、
改めて病院で過ごしてみると、色々な部分に違和感を抱き、気になり始めました。

ドクターが診察する時に患者を見ずに画面ばかり見ていたり、
看護師もくたびれて、ホスピタルなのにホスピタリティがなく、
まるで病院にいるほうが病気になる、とすら思いましたね。

そんな風に医療の現場の改善すべき点を目の当たりにしてからは、
直感的に、

「自分が取り組むべき分野は医療だな」

と考えるようになったんです。
命と密接に関わる大きなテーマであり、ビジネスとしても大きな市場だということもあり、
医療の分野なら、世界中の人を幸せにできるんじゃないかと思ったんです。

それからは医療に関する本を進んで読むようになり、
ある本を読んで感銘を受けた病院の先生に会いにいき、
インターンとして働かせてもらうことになりました。

最期の「なんになっこ?」


その後、病院でインターンを始めて1ヶ月経たない頃、祖父が亡くなりました。

ちょうど、亡くなる寸前に会いに行くと、祖父は僕に

「なんになっこ?」

と話しかけてくれたんです。
佐賀の方言で、「(将来は)何になるんだ?」という意味の言葉でした。

元々、小さい頃から可愛がってもらっていたことに加え、
親が高卒で、周囲から期待されていたこともあり、
昔から将来は何になるのか期待してもらっていたんです。

それが、最期も同じことを言われたんですよね。
そして、僕はなにも言えなかったんですよ。
ハッキリと自分の進む道を伝える事ができませんでした。

それが、すごくショックでした。
自分が情けなくて腹立たしくて。
本当はもっと喜んでもらいたかったのに、
何も言えないまま祖父が亡くなってしまいました。

葬儀が終わった後、僕は、一刻も早く祖父を安心できるようにしたいという気持ちから、
まずは動き出そうと思い、会社を設立することに決めたんです。

それまでは、いずれは独立しようと思っていたのが、
決心がついてからは、すぐに自分で旗をあげようと思い、
24歳の春に会社を設立しました。

会社を立ち上げた当初、インターンをしていた病院などから仕事をいただくことができ、
なんとかスタートすることができました。

また、その後大学を卒業した頃、その病院がカンボジアにクリニックを設立することになったため、
その立ち上げのヘルプとして、カンボジアに渡ることになりました。

最善の医療を受けられる社会


当初カンボジアの滞在は1ヶ月の予定でしたが、現地のクリニックのマネジメントを請け負うことになり、
カンボジアに移住することにしました。

そうやって実際にカンボジアの医療の現場に携わるようになってからは、
最低限の医療がなされていないことに驚きましたね。

そして、その現状を知ったからこそ、途上国の医療という分野で、
病院の手伝いをするだけでなく、新しいビジネスを作ろうという気持ちも生まれました。

そこで、現在はクリニックのマネジメントに加え、
医師情報のポータルサイトや、医療に特化した人材紹介事業の立ち上げを行っています。
他の国での成功事例を見ても、カンボジアの現状にあったモデルだと思いますし、
この事業を通じて得た医師の方等のネットワークを活かし、
最終的には病院や研究所を作り、技術開発の方面にも力を入れたいと思っているんですよね。

カンボジアなどの途上国では、医療のインフラが整っていない分、変化を大きく感じられますし、
お金を持っていなくても、そして若くても挑戦できる環境であるという点は魅力的です。

それらの活動の背景には、

「世界中の人々が最善の医療を受けることができる社会を創る」

というミッションを掲げています。
最善と言うのはその国々によって違うと思うのですが、より良い医療を提供するために、
途上国独自の仕組みをつくっていくことができると思うんです。

まずは30歳までにカンボジアで実績を固め、それからは海外へ展開、
40代では最先端の領域にアプローチと、
医療を通じて、世界中の人を幸せにしたいですね。

2014.08.27

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