幸せが生まれる場所をArchitectする!あまのじゃくの僕が実現したい未来。

「コラボレーションは、ほしい未来を実現するためのマジックなんです」と語る藤本さん。都市デザイナーを目指してロンドンに向かいながら、フリーランスの企画屋に転身するまでにはどんな背景があったのでしょうか。お話を伺いました。

藤本 太一(ハッピネスアーキテクト)

ふじもと たいち|フリーランス企画屋
世界中のチェンジメーカーとのコラボレーションを武器に、新しい仕掛けをプロデュースする。

Happiness Architect

都市をデザインする


僕は山口県で生まれ、小さい頃から自分の意見をはっきりと言う子どもでした。

自分の中で面白いもの、つまらないものがはっきりしていて、
それを素直に言うものだから、友だちと喧嘩することもありましたね。

あまのじゃくで、人と同じことはしたくなかったので、
いつも驚かせるようなことや、笑わせるようなことを考えていました。
高校の時は、ハンドボール部に所属しながら、運動会の団長や文化祭のリーダーをやり、
それまでの先輩とは同じことをするのを避け、オリジナルの企画を考えていましたね。

大学からは東京に出て、都市デザインを勉強することにしました。
元々ゲームの『シムシティ』が好きだったことや、
田舎だった地元山口を何とか盛り上げたいという気持ちがあったんです。
また、TVでリフォームの番組が流行っていて、みんなが建築の道に進んでいたので、
ここでもあまのじゃくっぷりを発揮して、
「みんなが家なら、俺はもっと大きい都市全体をデザインしてやる」と思ってたんです。

大学時代は友人たちとバイクに没頭して、卒業後は海外の大学院に進むことにしました。
なぜなら、日本の社会で働くことに、強烈な違和感があったんです。
周りにいた面白い友だちが、個性を潰して就職を決めているのを見て、
そんな日本社会で「使われる」側になるのが嫌だったんですよね。

また、それまで自分が研究していたことは、
城下町と今の都市形成の関係性を調べるといった「都市計画」寄りのことだったのですが、
もっと自分で実際に都市を描いていく、デザイン寄りのことを研究したかったんです。

大学卒業後、約2年間フリーターをしながらお金を貯め、
憧れの建築家が教授を務める、ロンドンの大学院に進学しました。

街の最も重要な要素は「ひと」


ただ、ロンドンで出会った人たちのクリエイティブな才能がすごすぎて、
自分は能力では一番にはなれないんだと痛感しました。
とはいえ、いろいろな都市デザインに携わりながら、
将来は都市デザイナーとして独立する気で、ロンドンで事務所を開業する準備もしていました。

しかし、大学院の課題の1つで行った、
インドネシアのジャカルタでの都市デザインプロジェクトで、大きな転機が訪れました。

ジャカルタで毎年発生する洪水によるスラム街への被害を防ぐための都市デザインプロジェクトの企画を、
しっかり練って提出したんです。
ところが、地元に住んでいる人にとっては、洪水なんて問題にしていないことが分かったんです。
これは盲点でした。
都市デザインは、地元の人の声なんてひとつも聞かずに、
国や都市開発事業者が、自分たちの利権のために好き勝手な計画を立てているだけなのでは…?と感じたんですよね。

以前、『アーキグラム』という建築家集団が残した、
「街を作るのに必要なのは、建物ではなく人である」という言葉を聞いたことがありました。
劇場があっても、そこで踊るひとがいなければ舞台は盛り上がらないと。
まちづくりも一緒です。
街に住む人たちが楽しく住む場所を作りたいと思っていたのに、
結局、僕は人を無視して建物をつくっているだけだったと痛感しましたね。

ただ、それなら街に住む人がわくわくできる手助けをすれば良いと思い、
都市デザイン事務所ではなく、クラウドファンディングの事業を立ち上げることにしました。

人がわくわくする瞬間とは、何かに熱中している瞬間で、
お金がないことが原因で、自分の熱中することに取り組めないという課題を解決することが、
みんなのわくわくを醸成できると考えたんです。

お金ではなく共感


しかし、事業は全く上手くいきませんでした。

そこで、うまくいかなかった原因を探るため、50人ほど先輩の経営者の方たちに、
「何があったからここまでこれたのか」インタビューをして回りました。
すると、みんな口をそろえて「助けてくれる仲間や、応援してくれる人」という回答が返ってきたんです。

考えていくと、人のわくわくを手助けするというコンセプトは外れていなかったのですが、
その後押しをする要因が、お金だと考えていたことが誤りだったんですね。

例えば、何かしたくてもやもやしている人が目の前にいたとして、
その人に100万円渡したら、その人のやりたいことが実現するかというと、そうではないと。
むしろお金がなくても、心から共感して「それめっちゃおもしろい」と言ってくれる人がいる方が、
熱量は高まるんじゃないかと思ったんです。

そして、クラウドファンディングの事業を閉じ、
会社名も「Happiness Architect」として再スタートを切ることにしました。

この会社では、「同じ思い」を持つ人と出会えるようなコミュニティを作ることから始めました。
最初は単純につながれるだけの場だったのですが、
それだけではみんなのワクワクを創出できてないと感じ、
徐々に社会を変革する「チェンジメーカー」の人たちと、
一緒にプロジェクトをやるようなコミュニティに変化していきましたね。

同じ思いを持った人が集まり、アイディア会議なんかするとすごい盛り上がるんですよね。
そして盛り上がっていくと、「できるかどうか」という考えじゃなくて、
純粋に「やりたい」という気持ちが湧いてきて。
1人で考えたことだと、面白いと思っても実行までできないけど、みんなで集まると実行できるんです。

このようにロンドンや東京を拠点にし、ヨーロッパだけではなく世界中のひとたちとコラボレーションをし、
社会にインパクトを与えようとしている人をつなぎ、様々な企画を実行していました。

誰の価値でもない


ところが、企画をしても全然お金にならなったんです。
面白いことをしても、結局社会にはなんの価値も残せてなかったんですよね。

自分たちは面白いことをやってるから、逆にお金なんていらない、
お金は汚いものだという気持ちすらありました。

とはいえ、現実としてお金はなくなっていき、ついに家賃が払えないというところまで来てしまったんです。
ビザが切れるまで150日ほど猶予があったのですが、帰りの飛行機チケットを買うお金もありませんでした。

それでも、コンセプトは間違っていなかった確信があったので、このまま逃げ帰るわけにはいかず、
何かロンドンに爪痕を残すためには突き抜けるしかないと考え、
コラボレーションする時の肝となる「人と会う」ことに徹底することにしました。

そして、ホームレスであれば家がないので、
家で1人になる時間がなく、常に人に会っているということに気づき、
自らホームレス社長となり、ひたすら色々な方に会う企画を始めたんです。

そうやって毎日誰かと会っていたのですが、この時に価値観が広がりましたね。
それまでは一緒に企画をするのは社会起業家系の人が多かったのですが、
ホームレス生活をしている時は、アーティストやビジネスマン、大学教授など、
たくさんの方と出会うことができました。

そしてこの企画中にお会いした中の1人に、
「今の君は、君のプロジェクトと同じで、面白いことをやってるんだけど価値を生み出してないよ」と言われたんです。
アイディアや活動が誰かの価値になっているのであれば、必ずお金は回る。
お金が回らないのは、価値がないからだと指摘されたんです。

この時ハッとしました。
それまで、プロジェクトを立ち上げる時は、
あくまで企画者側が盛り上がっていれば良いものができると信じており、
いわゆる学園祭のノリだったのかもしれません。
しかし、この話を聞いてから、参加者の気持ちも考えるようになり、
自分たちの企画が「誰にとって価値になるか」ということを意識的に考えるようになりました。

そしてビザが切れる直前までホームレス生活をし、日本に帰国しました。

不可能を可能にするマジック


今は活動拠点を東京に置きながら活動しています。

本当は東京には期限付きでいて、またロンドンに戻ろうと思っていたのですが、
面白い人との出会いがたくさんあり、もっと東京での活動を続けたいと考えるようになりました。

また、今は会社ではなくフリーランスとして活動しているので、
自分自身が社会に対して組織に縛られずに接し、新しい価値を生み出すハブになりたいと思っています。
東京に面白いものを生み出していくため、アメリカとかロンドンとかいろいろな国に行って、
また繋がりをつくりたいですね。

先日開催した「Morning Gloryville Tokyo」という早朝フェスも、
ロンドンで生まれたアイデアを、東京のチェンジメーカーの人たちとカタチにしました。
これは今後も毎月1回位のペースで続けていきます。

僕の活動の軸は、コラボレーションを通じて新しい仕掛けをつくっていくことです。
僕自身、ひとりでは何もできないし、
逆にいろいろな人と協力することによって、実現できないことも可能になるので、
コラボレーションはそれぞれの人がほしい未来を実現するための、いわばマジックだと思っています。

このマジックを使って、世界中のひとたちが、
びっくりしてわくわくできるような仕掛けを生み出し続けたいですね。

2014.08.09

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