スポーツでカッコいい大人が育つ場作りを。父親代わりであるスポーツへの恩返し。

Jリーグのコーチ向けに研修やコーチング、キャリアカウンセリングを通して目標達成を支援している鈴木さん。スポーツビジネスへの漠然とした関心は抱きつつ、確信に至らないでいた鈴木さんに訪れた転機とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?お話を伺いました。

鈴木 統也

すずき もとや|スポーツコーチ向けラーニングプロデューサー
スポーツコーチ向けの研修事業を行う株式会社Coach Forにて代表を務める。
(一財)生涯学習開発財団 認定コーチ
米国CCE,Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー

スポーツビジネスへの憧れ


小さい頃からスポーツが好きでした。
3歳で父を亡くしたため、5・6歳離れた兄2人によくスポーツを通じて遊んでもらっていたんですよね。
小中高と、サッカーやバスケ等、色々なスポーツをしていました。

アスリートを目指そうと思ったことは無かったものの、
高校に進学してからは、なんとなくスポーツを「観る」方面への関心を持つようになったんです。
ちょうど、兄が記者を目指してスポーツ雑誌等を見ていたことがあり、自分自身、
そういったメディアや雑誌に憧れを感じていたんですよね。

ただ、憧れは抱きながらも、大学に入って最初の2年間は遊んでばかりいました。
サークルでゴルフを始め、大学生生活を満喫していましたね。

ところが、3年生になると、先輩の就職活動が順調に進んでいるのを見て、
まずいなと感じたんです。
自分と同じようだと思っていた先輩も、ちゃんと考えていたんだな、という焦りがありました。
ちょうど、3年から始まったゼミのメンバーの意識が高かったこともあり、
改めて、スポーツ関係に関心を持ち、少しずつ本を読んだり、周囲に話を聞いたりという行動をはじめていきました。

そんな中、たまたまスポーツマネジメント業界で著名だった広瀬一郎氏の本を読んで、すごく感動を覚えたんです。
漠然としか知らなかったスポーツビジネスについて、こんな世界があるんだという驚きがありましたね。

ちょうど、ゼミの先輩の紹介でNHKのスポーツ番組のプロデューサーの方を訪ねて、
オフィスに遊びにいかせてもらう機会があったのですが、
たまたまそのオフィスの机に、広瀬さんの原稿を見つけたんです。

興奮して尋ねてみると、その方が広瀬さんと知り合いだとのことで、
「直接連絡してみればいいじゃん」と言っていただけたんですよね。

そこで、本を読んで感じた感動を、直筆の手紙に書いて送ってみることにしたんです。
敬語もままならない、ひどい文章だった気がします。
それでも、後日ご本人から直接ご連絡をいただき、

「気持ちはよくわかった。新しい動きがあるから、よかったら手伝わないか?」

と、新しく立ち上がったスポーツ系のベンチャー企業に、
インターンとして参加させてもらうことになったんです。

スポーツMBAへの挑戦


結局、卒業までの1年間インターンをさせていただいたのですが、
社会人についてもビジネスについても無知だったので、見るもの全てが新鮮で、
まるで別世界でしたね。
雑用業務でも携わることが嬉しかったです。

そのままそのベンチャーで働くことも考えたのですが、
それでは憧れの広瀬さんを超えることができないのでは?という、
今考えると生意気な想いもあり、就職して修行をすることにしました。

就職活動ではメディア系の企業を受けるも縁がなく、
最終的にはITのインフラ系を扱う企業に就職しました。

入社してからは営業に携わり、ビジネスの基礎を学ぶことができたのですが、
仕事がものすごく忙しく、終電で帰ることができれば良い方という感じでしたね。

当初は仕事に没頭し、良い仲間にも恵まれたのですが、
忙しさに追われた日々に、このままじゃ目の前の仕事に流されるぞ、まずいなと感じたんです。

「果たして、自分は何がしたいのか?」

を今一度考え、たどり着いた答えは、やはりスポーツビジネスに携わりたいということでした。

ちょうど、そんな時に、スポーツビジネスの先進国アメリカで、スポーツMBAという学位があることを知り、
それからは、スポーツビジネスの分野に挑戦するため、スポーツMBAを目指してみようと思ったんです。
その後、留学しますと伝え、4年間務めた会社を退職しました。

本当に俺のやりたいことは?


退職してからは、単に勉強だけしては勿体無いと思い、学生時代にインターン先でお世話になった方に連絡し、
スポーツビジネスを現場で体感しながら勉強をするという目的のもと、契約社員にしてもらうことになりました。

それからは、毎日6時前の電車に乗り、朝勉強をしてから仕事を挟んで夜も勉強という暮らしが始まりました。
その成果もあり、段々と勉強の成果はでてきたのですが、
ある時、先輩から

「MBAについて、日本語でもわからないのに英語でわかるの?」

と言われたんです。
自分自身、「MBAに行けばなんとかなる」という風に、盲目的になっている面があることに気づきました。

また、契約社員ながら、仕事でもスポーツビジネス関連の方と携わる機会をたくさん提供してもらえていたことも、
自分にとってはすごく大きな影響がありました。
これだけ色々な出会いや刺激がある中、今行くべきか?という迷いがあったんですよね。

悩んだ結果、MBAに進むのは辞め、正社員としてその会社に入社することに決め、
スポーツメディアのプロデューサーとして、仕事を始めることになりました。

それまでは営業しかやっていなかったこともあり、
プロジェクトを責任者として回す経験はすごく楽しかったですね。
一緒に働く人にも恵まれ、充実した日々でした。

ところが、年数を重ねていくうちに、仕事を頑張って入るものの、没頭できていない自分がいることに気づいたんです。

周りにはスポーツメディアやインターネットが死ぬほど好きな人がいる中、

「本当に本当に俺のやりたいことは何なのか?」

と、再び悩むようになったしまったんですよね。

ネット上の数字でなく目の前の相手


そんなタイミングで、直属の上司がJリーグとつながりがあったことで、
Jリーグの育成年代のコーチに、リーダーシップやコーチング、コミュニケーションを教える研修を行うことになったんです。

最初は上司のサポート的な携わり方だったのですが、
そのうち上司の都合が合わない際に代理で研修を行う機会が増え、
コーチの方々と話をする機会も増えていきました。

実際にコーチの方々と話をしてみると、

「子どものために変わりたい」

という気持ちはありながらも、何をしたら良いか分からず苦しんでいる人がたくさんいたんです。
話を聞くうちに、その課題の大きさに、

「メディア事業の片手間でできることでは決してないな、相当な覚悟を持って臨まなければ」

と思いました。

また、自分自身、小さい頃からスポーツに色々な面で育てられて今の人格が形成された実感がありました。
まさに父親代わりであるスポーツに恩返しがしたい、
スポーツを通した教育こそが自分が本当に進みたい分野では?と気づかされるきっかけとなったんです。

ネットで数千万人の課題を解決するのも素晴らしいのですが、
自分には目の前のリアルに悩んでいる人を支援する方が、やりがいを持てるということに気づいたんですよね。

何より、自分が携わった人が変わる瞬間を見れることに、大きなやりがいを感じ、
人材育成の世界に飛び込むことに決めたんです。

スポーツでカッコいい大人が育つ場作り


現在は会社を退職し独立し、

「スポーツでカッコいい大人が育つ場作り」

というコンセプトのもと、Jリーグの育成年代のコーチや社会人、大学生向けに、
研修やコーチング、キャリアカウンセリングを行っています。

スポーツの世界は長いものの、人材育成という分野ではまだまだ未熟ですし、
人に「学ぼう、変わろう」と伝えている立場上、
自分も大学院やスクールなどで学んでますが、
もっと学んでコーチの皆様により良い学びの場を提供出来たらと思ってます。

特に、育成年代のコーチは1人で数十人の子供達を教えているケースが多いので、
自分の影響範囲を考えると責任重大です。
楽しさややりがいを強く感じる反面、甘えは許されないし、
自分がもっと学んで成長しないとという危機感が常にあります。

現在はサッカーのコーチが中心なのですが、
将来はより多くのスポーツのコーチにも良い学びの機会を広げていきたいという思いがあります。

部活や体育などで「考えずにとくにかく走れ」とコーチ自身が教わり、同じように悪気無く教えているコーチ達に、
本当にその教え方で良いのか?他のアプローチ方法もあるのでは?と考えてもらう場を創っていきたいですね。

また、特に育成年代のコーチの仕事は社会的意義が非常に大きいと思うんですが、
ボランティアの方も多く、経済的には不安定な職業のようです。
「コーチ」という職業が、憧れのカッコいい職業だなと思われるようビジネス面でも支援していきたいと思います。

スポーツのコーチ達を支援することで、カッコいい大人に溢れた社会を実現できたらと思ってます。

2014.08.02

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