こんなのあったらめっちゃいいなと思うんです。音楽に没頭し続けたエンジニアの挑戦。

音楽機材の試聴・比較サービスを運営する中村さん。ミュージシャンとして食べていこうという学生時代の夢を一度は諦め、エンジニアになりながらも、再び音楽に携わることになった背景には、どんなストーリーがあったのでしょうか?

中村 貴一

なかむら たかかず|音楽機材の試聴・比較サービス運営
音楽機材の試聴・比較サービスを運営する株式会社サウンドフォージのCTOを務める。
また精力的に音楽配信なども行う。

サウンドフォージ
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エレキギターに受けた衝撃


中学3年生の時、エレキギターに出会いました。
買い物の途中、たまたま流れていた音楽に衝撃を受けたんですよね。

「音、超カッコいいな!」

と感じたんです。
調べてみると、それはB’zの曲だということが分かったので、
それからというもの、B’zのシングルやアルバムを全部集めていき、
エレキギターという楽器がそのサウンドを出しているということを突き止めたんです。
すぐにエレキギターの購入を決めました。

しかしながら、楽器屋さんに1人で行ったこともありませんでしたし、エレキギターの知識もありませんでした。
また、自分で大きな買い物をしたこともなかったため、
しばらく楽器屋さんに入ることが出来ず、楽器屋さんの前をうろちょろしては様子をうかがう日々を過ごしました。(笑)
そして、ある日、ついにお店に入りエレキギターを購入したんです。

しかしながら、ちょうど高校受験のシーズンだったこともあり、
買ったギターは、すぐさま放置することになってしまいました。

そんな折、足を運んだ高校の説明会で、学園祭の紹介VTRの中に、軽音楽部のライブ映像を目にしたんです。
その時、「自分もこういうことやりたい!」と思い、その学校に行くことを決めました。

ところが、入学はできたものの、内気な性格もあって、なかなか軽音部に話しかけることができず、
たまたま会話したラクロス部に入ることになったんです。

その後、部活には参加していたものの、ある時から放置していたギターを練習するようになり、
それからは、どんどんギターにのめりこんでいきました。

気づけば、ラクロスはどんどん幽霊部員化していき、いつしかギターを1日平均10時間は練習するようになっていたんです。
そのうち、自分で曲も作るようになっていき、学園祭のライブで自作のギターのインストゥルメント作品を演奏するにまで至りました。

そんな中、ある雑誌で、ライブへの出場権をかけたギターオーディションを受ける機会があったのですが、
たまたまそのオーディションの審査員で会った音楽学校の校長の方にお声掛けいただき、
特待生でその学校に通える事になったんです。

自分は付属校に通っていたこともあり、大学への進学も決まっていたため、迷わず専門学校に通う事にしました。

本場アメリカで感じた失望


高校卒業後は、ほぼ一日中ギターに没頭していました。
毎日、専門学校と自主練習の連続で、大学にもほとんど行っていませんでしたね。

将来は音楽で食べていこうという思いもあり、よくレコード会社にデモテープを送っていました。
そんな中、専門学校を卒業する前に、運よくあるレコード会社と作曲家兼ギタリストとして契約することができたんです。
それ以来、バックミュージシャンやアーティストへの楽曲提供などの仕事を始めました。

しかしながら、自分自身1つ1つの仕事をしっかりと行わなかったこともあり、
ほとんど仕事をいただけなかったんですよね。

自分がいかに自分が上手くなるかということだけを考えていたこともあり、
その邪魔になるものは積極的に排していたんです。
ライブもレコーディングもぶっつけ本番みたいな感じでしたし、携帯の電源をずっと切っていたこともありました。
そのため、全然、声をかけてくれなくなってしまったんです。

それ以来、自分は、日本だからダメなんだろうと思うようになりました。
そして、実力主義のアメリカであれば認められるだろうと考えたんです。
そこで、大学を卒業する前に夏休みを利用してロサンゼルスに行くことに決めました。

しかしながら、現実は甘くありませんでした。
現地には、自分より上手い人がゴロゴロいましたし、彼らは音楽で生計をたてられているわけではありませんでした。
また、ミュージシャンの泥臭い営業や裏話などを聞いていく中で、実力だけではない世界であることも知ったんです。

さらに渡米前に参加していた日本のギターコンテストで予選落ちしたことを、ロサンゼルスで知ったんですよね。
まさにトリプルパンチを受けてしまい、自分には、今後、ギタリストとしてやっていける自信を全く失ってしまったのです。

帰国後、しばらくは、ボーッとしていました。
それまで打ち込んでいたことがなくなってしまい、何をすればよいか分からなかったですね。
とりあえず大学に行って勉強をして、現実逃避気味に、毎日、図書館に通い、
新聞5紙を読んだり、哲学書や参考書を読んだりしていました。

1ヶ月の空き時間


大学卒業後は、IT企業に就職しました。
ITにはもともと興味がありましたし、卒業アルバムでは起業をしたいと書いていたこともあり、
なんとなく起業するならITかなと思っていたんです。

そして技術系の部署に配属され、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。
実際に働き始めてからは、作曲と同じで、アイディアを具現化していく過程が楽しく、
どんどんプログラミングにはまっていきました。

また、働くうちにもっと開発力をつけたいと思うようになり、設立して間もないベンチャー企業に転職しました。
そこではソーシャルゲームを作っていたのですが、案の定開発力が高く、毎日、必死に開発を行いましたね。
おかげで開発スキルは結構向上したのですが、毎日、げんなりして帰る日々でした。(笑)

そんな中、個人的にお世話になっていた人材コンサルタントの方から「コンサルティング会社に行かないか?」というお話をいただいたんです。
昔、起業を考えていることを、その方に伝えていた経緯があり、
経営の方も知っておく必要があるというアドバイスをもらったんですよね。

正直、転職を考えていた訳ではなかったのですが、共感できるところもあったので、
とりあえず説明会に行ってみることにしました。

ところが、実際説明会に行ってみると、ITだけでなく包括的に業務ができる環境がすごく魅力的に感じられたんですよね。
結局、プログラミングもできてコンサルティングもできる総合系のコンサルティング会社に転職することを決めたんです。

その際、人事の都合で、ちょうど1ヶ月程度の入社準備期間がありました。
ぽっかりとまとまった時間が空いたため、何をしようか考えるようになりました。

そんな中、ふと「ギターエフェクターの試聴サイト」を作ってみようと思いついたんです。

昔、ギターをやっていた頃に、楽器屋さんで何か機材を買おうとしても、
在庫が限られていたり、店員さんへの配慮から全部試すことが出来なかったりして、
音をしっかりと確認してから購入できないことに不満を感じていたことがあったんですよね。
そんな問題を解決することができないか、という気持ちがありました

それからは1ヶ月で、主要な機能を実装したサイトを完成させました。

やらない理由がない


その後、転職先の会社で働き始めたのですが、
たまたま転職した同じ月に、友人経由でギター関連機材の展示会イベントを知ることになりました。
そして、その時に、先日作ったサイトをメーカーの方々に見てもらうこと思いつき、
iPadを持ってそのイベントに行ってみたんです。

すると非常に評判が良かったんですよね。
業界の方から、「こういうのあると良いよね!」とか「機材お貸ししますよ!」とかプラスの意見をいただけたんです。
それからは、実際に機材を無償で貸してもらって、休日などを利用してサンプリングを行うようになりました。

また、そんなタイミングで、たまたま友人経由で、シードアクセラレーター(起業家支援組織)のプログラムについて教えてもらったんです。

話を聞いたのがプログラムへの応募締切りの4時間前だったのですが、
自分のサイトの業界からの評判が良かったこともあったので、軽い気持ちで書類を作って応募してみることにしました。

すると、そのプログラムに合格し、参加できることになったんですよね。

正直、もともと転職したてで起業を直近で考えていたわけではなかったので驚きや迷いがありましたが、
せっかくの機会だということに加え、たとえ失敗しても、若い時の失敗はきっとプラスになると思い、
会社を設立することを決心したんです。

実際に独立してからは、すべて自分で決定しないといけないことや、
開発も営業も自分がやらないと全く進まないということで、大変なことだらけですが、

「こんなのあったらめっちゃいいな」

という思いは全く変わりません。

これからも、「音楽機材の選定をラクにする」ということで、世の中に付加価値を提供しきたいですね。
近い将来、世界中のECサイトに自社サービスを導入していけたらいいなとも思います。

また、将来ハリウッド映画の音楽に関わってみたいという夢もあります。
作曲もプログラミングもアイディアを具現化して大きな感動を作るスーパークリエイティブな仕事で、
自分にとってはあまり相違のないことです。
だからこそ、ITと音楽のどちらの面でも世の中に価値を提供していける人間になりたいと思っています。

2014.07.31

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