ロックでアスリートなCTO!過去を肯定した先に見つけた「自分像」

急成長を遂げるスタートアップのCTO(最高技術責任者)を務めながら、プロを目指したギタリスト・フルマラソンを走るアスリートという側面を併せ持つ和田さん。「どれを切っても自分ではない」と話す現在に至るまでには、「過去の自分を否定しそうになった」という葛藤がありました。

和田 修一

わだ しゅういち|スタートアップCTO兼ギタリスト・アスリート
生活に役立つテクニックの共有サイト「nanapi」や、すぐに返信が来る相談アプリ「アンサー」を運営する株式会社nanapiにてCTOを務める。
また、ギタリストとしての活動や、アマチュアアスリートチーム「DOUBLE SURVIVOR」の一員としても活動を行う。

株式会社nanapi
nanapi
DOUBLE SURVIVOR
「UNIX的なアレ」(個人ブログ)

ずっとギターに触れていたい


高校生の時に初めてギターを弾きました。
東京の私立の中高一貫校に通っていたのですが、
文化祭でバンドの演奏する先輩の姿が、すごくカッコよく感じたんですよね。

その中でも一番カッコよく感じたのがギターでした。
それからすぐに練習を始めてバンドを組み、
憧れた文化祭の舞台や、ライブハウスなどにも出るようになったんです。

最初のうちは、ギターをもってステージに立っても、いまいちカッコよくなかったのですが、
それでも、ギター自体がどんどん好きになり、
「ずっと触り続けていたい」と思うほど没頭していったんですよね。

高校生のバンドながらHPを持ち、MP3で音楽を配信して、
精力的に活動をしていましたね。
そのHPを作ってくれていたのが、古川(後のnanapi CEO)でした。
中学2年生の時に同じクラスになって以来、仲が良かったんですよね。

結局、大学受験ギリギリまでギターに明け暮れていました。
将来は音楽でやっていきたいという気持ちがあったものの、
両親が教員だったこともあり、大学は行くものという前提があったので、
受験を経て、私大の経済学部に進学することに決めたんです。

世界を広げるため就職し、エンジニアに


大学でももちろん音楽を続け、メジャーデビューも輩出するようなサークルに入りました。
サークルではコピーバンドを、外の活動でオリジナルを演奏し、
それまで以上に音楽に没頭する日々でした。

また、卒業して社会人になったサークルの先輩から、
サラリーマンのつまらなさをたくさん聞いたこともあり、
自分はギターで食べていきたい、という思いがどんどん強くなっていきましたね。

個人的な性格として、一つのバンドに固定するのが飽きてしまうこともあり、
少しずつではあったものの、バックミュージシャンなどの活動も始めており、
なんとか食べていけるような手応えもあったんですよね。

ただ、音楽を本気でやっていたが故に、そこで関われる人の範囲の狭さに窮屈さを感じるようになっていったんです。
大学3年生になる頃には、

「もっと広い世界に出て、そこで勝負してみたい」
「もっと色々なことに挑戦してみたい」

といった気持ちが強く芽生え始めていました。
そこで、ギタリストではなく、企業に就職をすることを決めたんです。
就職活動を行い、楽器を扱う会社に内定をもらうことができました。

ところが卒業式まであと2週間というタイミングで、
掲示板の卒業者に自分の名前がないことに気づきました。

単位を落としてしまい、卒業できなかったんですよね。

「あ、卒業できないんだ」

という驚きはあったものの、決してネガティブではありませんでした。

「世界を広げる」という目的で就職をしようと思ったのに、
音楽を引きずって就職を決めてしまったことに、自分の中で疑問が残っていたんですよね。

そこで、迎えた二度目の就職活動を経て、関われる人の幅が広く、これから成長していく業界ということで、
IT系の企業に入社することを決めました。

「ロック」を追いかけ独立


それまでは、ギタリストを目指すような環境にいたため、ITとは無縁で、
内定者の課題ではじめてパワポ・エクセルを触ったようなレベルでした。

ところが、いざ入社をしてみると、開発の配属でインフラエンジニアになったんです。
正直、嫌でしたね。ギターのような表舞台の華やかさとは対照的で・・・。
知識もなく、最初は腐っていました。

ただ、段々と仕事をするうちに、自分の仕事が評価されることに面白さを感じるようになり、
モチベーションが変わっていきました。

その後、台湾での事業の立ち上げのメンバーに抜擢してもらい、
各部署のエース級社員と仕事をさせてもらえるようになり、さらに触発されていきました。

そんなある日、別の会社で働いていた高校の同級生、古川から、

「会社辞めて、独立しようぜ」

というチャットが来たんです。

「ああ、いいよ」

と、すぐに返しました。
何も決まっていなかったのですが、
お互い気心が知れていたし、何より、独立という単語があまりに魅力的だったんです。

音楽をやっていた影響は自分の中で大きくて、
人生の判断で、「ロックか否か」という感覚をすごく大切にしていました。
そして、独立することとしないことのどっちが「ロック」かを考えたら、
もう自明だったんですよね。

自分の置かれた環境に不満は無かったものの、独立の決心はすぐに固まりました。

また、独立を決めてから、生活習慣を変えるようになりました。
最初は、『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか?』という本を読んだのがキッカケだったのですが、
新しいステージを挑戦するのに、

「このままの身体ではまずいな」

と感じたんです。
海外事業が忙しかったこともあり、タバコを吸ったり、夜中にラーメンを食べてぶくぶく太ったり、
ひどい生活だったんですよね。

それからは、タバコを辞め、食事を変えて運動を始め、
すぐに体重が10キロ落ちて、体脂肪も1桁になるまで絞りました。

そうやって効果がでるとどんどん面白くなり、運動への関心も高まっていきました。

自分らしいCTO像とは


実際にそれまでの立場と比較して「起業」を意識したのは、マンションを借りようとしたら審査が通らなかった時でした。

「社会的信用がなくなったなぁ」

と感じましたね。
「nanapi」はリリースしてから3ヶ月で一定以上のPVに行っていなかったやめようと思っていたんです。
ところが、最初からある程度注目をしてもらえたんですよね。
2人して「思ったより当たったね」と驚きながら、サービスを拡大していき、
ベンチャーキャピタルからの資金調達を受けてからはメンバーも増えていきました。

そのタイミングから明確に環境が変わった気がします。
それまでの役回りは「エンジニア」だったのが、
資金を得て加速し始めてからは、「CTO(最高技術責任者)」の役割を求められるようになったんですよね。

それまではサイトにだけ責任を追っていたのが、
採用や風土作り、マネジメントが業務に入ってきたんです。
どういったCTOになれば、会社が一番進むだろうかというのをすごく考えるようになりましたね。

正直、悩むこともありました。

自分が技術に触れるようになったのが、社会人になってからということもあり、
もっと早くから始めている人には、かなわない面もあったんです。
音楽をしていた時間を「無駄だった」と考えてしまうこともありました。

でも、過去の自分を、音楽に情熱を注いでいた自分を、否定したくなかったんです。
そんな自分だからこその強みがあるんじゃないか、と考えるようにしたんですよ。

それからは考えが明確になりました。
良くも悪くも技術にどっぷりでない自分は、俯瞰した目で色々なことをバランスよく見れるんじゃないかということに気づいたんです。

独立後も音楽の活動は続けていましたし、
途中からハマりだした運動では、フルマラソンを走るまでになりました。
そうやって音楽にも運動にもマインドシェアを保ち、生活に組み込むような、
「バランス」が自分の強みだと分かったんです。

自分が目指すべき「CTO像」は、強みであるバランスを活かしたものだと確信を持つことができました。

どれを切っても自分じゃない


現在は、特にCTO業務の中でも風土作り・組織作りに注力しています。
今は10名のエンジニアで開発体制を組んでいるのですが、
技術で戦っていくために、非エンジニアにも技術を理解してもらうことで、
会社全体を技術をリスペクトするという風土にこだわっているんです。

「技術が大事だよね」というリスペクトを非エンジニアがすることがすごく大切だという気持ちから、
毎週非エンジニア向けの社内研修を行い、今では総務のメンバーまでプログラミングをしています。
そうすることで、メンバーに技術の可能性を浸透できればと思うんです。

また、音楽も運動も、変わらず自分の生活の柱として続けています。
例えるなら、音楽が「生きる判断基準」で、運動が「生きるエネルギー」というようなイメージですね。

直近ではかなりストイックなアスリートチームに入ったこともあり、
毎日の練習はもちろん、定期的なレースへの参加も行っています。

また、今でこそステージに立つ機会は減りましたが、
休日はギタリストとしての活動も続けています。

「CTO」も「音楽」も「運動」も、独立している訳でなく、
相互に作用しているんですよね。

複数の全く違うことに本気で取り組んでいるからこそ、
視野を高く保つことができ、かけ算の相乗効果も感じられるんです。

過去を否定しそうになったこともあるけれど、どれを切っても自分ではないんですよね。

全てをバランスして、ロックに生きていこうと思います。

2014.07.22

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