治れば何でもいいと思うんです。医療に携わるものの「志事」観。

高校まで野球に力を入れ、現在はスポーツトレーナーに加え、医療も手がけている白井さん。 怪我続きだったことから生まれた思いと、これから目指していきたい未来を伺いました。

白井 龍一

しらい りゅういち|接骨院 院長兼、スポーツトレーナー
だいご接骨院院長兼、スポーツトレーナー。
院長として、スポーツ選手やモデルの治療を手がけながら、スポーツトレーナーとしての指導も行っている。

だいご治療院
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治療のプロが身近にいてくれれば良かったのに


私が本格的にスポーツを始めたのは小4の秋でした。
家族が野球好きだったからことから、野球をはじめたんです。

最終的には高校卒業まで野球を続けていたんですが、
高校に入学した辺りから、よく怪我をしてしまっていました。

膝だったり肘だったり、色んな所をよく痛めていて、整形外科や接骨院によく通っていましたね。
とくに高校の頃は、時間さえあればほぼ毎日のように治療に行っていました。

たしかに治療をしてもらったあとは調子がいいんですが、それが継続しないんですよね。
治療せずに運動できるようにはならなくて。

よく治療を受けていた身としては、

「治療を受けなくても運動できるようになりたい」

といった感情を抱いていました。
接骨院などの病院は、健康な人は行く場所じゃないと思ったんです。

また、幸いなことに、高校の頃はずっとレギュラーだったので、試合にもよく出させてもらっていたのですが、
ただやはり怪我が多かったこともあって、満足にプレイできずに、後悔してしまうことも多かったんです。

当然ながら我流で身体のケアはしていたんですが、
治療のプロが身近にいて、アドバイスをしてくれたらいいのに、と思っていました。

その思いがもとで、将来はスポーツ選手に対して身体のケアができるようになりたいと思いましたね。

現場の知識が必要だと思ったんです


身体のケアが出来るようになるには、あらゆる怪我に対応できるような治療の知識を身につけなければいけないと思いましたね。

また、昔から独立心が旺盛で、手に職をつけて自分の力だけで生きていきたいという気持ちがありました。
その2つが重なった結果、よく治療を受けていたような接骨院や整形外科に携わっていきたいと思うようになったんです。
そのため高校卒業後は、医療の専門学校に通い始めました。

専門学校での3年間は、国家資格の取得のためにひたすら勉強、という感じでした。
3年後無事に資格が取得できたため、そのまま就職することもできたのですが、
スポーツに関わる、テーピングやストレッチなどを理論的に学ぶため、
スポーツの専門学校に通うことにしたんです。

もちろん医療の専門学校でも、怪我に関わることは学びました。
ただそれは現場の知識という感じではなかったんですよね。

もっと具体的に、どういったスポーツで、どんな症状が出ているか、
それに対してどういう治療法が適切か、といったものをリアルに学ぶ必要があると考えたんです。
他の理由として、もっと学生をやっていたいという気持ちも正直ありました。(笑)

医療の専門学校卒業後に進学した、スポーツの方の専門学校では2年間学びました。
そこでは現場での処置の方法など実践的な知識を得られたのはもちろん、
スポーツトレーナーとはどういう役割で、何をしていかなければいけないか、などといった、
トレーナーとしての心構えみたいなものも学ぶことが出来ました。

そしてスポーツの方の専門学校を卒業後、医療の学校での先輩だった人が運営している接骨院で2年ほど働き、
元々の考え通り独立をしました。

「お前みたいな奴は、プライドを捨てろ」


独立をしたての頃は、お客さんが結構来てくれていました。
独立をすると、所属している治療院のネームバリューではなく、
自分を求めてお客さんが来てくれます。

独立以前にも「俺は他の人よりも実力がある」と思っていましたし、
実際に独立してからもお客さんが来てくれたこともあって、
「これはいける」と思いました。天狗になっていたんです。

ただ、お客さんが来てくれたのも独立直後だけで、
その後は客足も途絶え、上手くいかなくなっていきました。
なんとか立て直そうとしてみるも空回りで、どんどん余裕がなくなっていきましたね。

そんな時に、知り合いの1つ年上の社長さんから、

「今の客足が途絶えている状況も、結局はお前自身のせいなんだよ」
「お前みたいな奴は、プライドを捨てろ」

と言われたんです。腹がたちました。納得もできませんでした。
ただ、言われた言葉はずっと頭に残りましたね。

その言葉を忘れられずに生活していく中で、最初は納得できなかった言葉が、
徐々に自分の中で、腑に落ちていくように感じました。
先輩に言われるまでは、「こっちが治療してやっているんだからお金を払って当然」という風に考えていました。
自分目線からしか見ておらず、お客さんの視点にたって考える、ということをしていなかったんです。

しかし先輩から言われた言葉が納得できるようになった時には、
「来てくれたお客さんのために、何かできることはないか。」
自然に、こういった気持ちをもつことができたんです。
そう思えた時には、医療を心の底から楽しめるようになりました。

自らの利益のために動いていた時に感じていた、余裕の無さから開放され、
自分の心にゆとりをもつことができるようになったんです。

志すことでの「志事」


それからは客足も徐々に増え、今では幸いにも食べるのに困らないくらいのお金は稼げています。
部活の後輩に対してもトレーナーとしての指導を行い、
プロの視点から身体に関わるアドバイスなども行っています。

また、自分は治りさえすればいいと思っているので、
より多くの人が安価で治療を受けられるようにしたいとも考えています。
今後は、経済格差の広がりから受けたい医療を受けれない人が増えていくと思いますし、
そういった状況なら尚更、必要な人たちに医療を提供していきたいんです。

ほとんどボランティアのような形が理想だと思っています。
お金を稼ぐのではなく、医療を提供することが重要だと考えているんですよね。
ほとんど趣味の延長のようなものですね。(笑)

仕えてお金を稼ぐための仕事ではなく、志すことで自分の思いを広げていくための「志事」。
そういった「志事」をこれからも貫いていきたいですね。

2014.07.12

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