デザイナーにはこだわらない!「自分らしさ」で人に好まれる働き方を。

「役職にとらわれるのはもったいない」と話し、フリーのデザイナーという肩書ではあるものの、そこにこだわらず、絵・写真・企画など、幅広い活動をされている上久保さん。幼いころから強く思っていた「自分のことは自分で完結したい」という想いや、現在取り組まれている企画に対する情熱などについて、お話を伺いました。

上久保 充

かみくぼ みつる|フリーランス、デザイナー
フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動しつつも、写真撮影、イラスト制作、企画提案などといった、
デザインにこだわらずに様々な活動をしている。
また、現在は「森の映画祭」のクリエイティブ統括として、イベントの成功に向けて日々邁進している。

about.me
森の映画祭WEBサイト
森の映画祭Facebookページ

幼いころからの僕の習慣


僕の幼い頃の習慣は、家に届く新聞の折り込みチラシの中から、
裏面が白紙のものを見つけて、そこに絵を描くことでした。

自由帳で1ページにちょろっとだけ絵を描いて、次のページに行ってしまう様子を見て、
親がもったいないと思い、裏が白いチラシをくれたのがキッカケのようでしたね。

その頃から「絵って楽しいな」と思うようになっていきました。

年頃になると、例えばゲームなどにも興味を持つようになったのですが、
当然頻繁に買ってもらえるものではありませんでした。

なので、欲しいゲームのパッケージに使われている、
イラストやロゴを忠実に描き写すことで、
手に入れた感覚を味わって欲求を満たしていましたね。

小学校に入学して図工の授業で、人に絵を見せる機会が増えていき、褒めてくれたり、
驚いていたりする反応を見るうちに、

「自分が描いた絵によって、人の感情に影響を与える」

ということに興味を持っていきました。

でも、特に将来の明確な夢などは無くて、絵に限らずモノづくり全般が好きだったので、
漠然とそういった分野の仕事ができればいいな、と思っていました。

小・中学校の時もよく絵を描いていたのですが、
高校生になった頃、なんとなくオタクっぽいような気がして、あえて絵を描かない時期もありましたね。

卒業後は好きなことをやりたいと思っていたので、そこまで学力が関係しないこともあり、
CGやグラフィック、イラストレーターというような、いわゆるデザインの分野に興味を持つようになっていったんです。

また、昔から「自分のことは全て自分で完結したい」という性格で、
早く自分の力で食べられるようになりたいという思いが強かったため、
大学ではなく専門学校に行こうと思っていました。

そして、いっぱしのクリエイターとして食べていくためには、
より競争率が高い環境で、上位に入る力を身に着けなければならない、
とも感じていたんですよね。

そういった理由から卒業後は、地元の青森から飛び出して、
生徒数が多い東京のデザイン系の専門学校へ進むことにしました

デザイナーへの興味


専門学校の学費と生活費は自分で何とかしようと思っていたので、
住み込みで新聞販売所のアパートで生活し、朝と夕方に新聞の配達をしてお金を稼ぐ
「新聞奨学生」という制度を使って専門学校に通っていました。

朝は2時半に起きて朝刊の配達に行き、昼間は学校に行って、
夕方からは夕刊を配り、そのあとに集金やチラシを折り込む作業を行い、
9時や10時に帰宅、その後に学校の課題をやる、という生活を行っていました。

とにかく時間がなく、人生で一番きつかったですね。

専門学校では、グラフィックデザイン科とGC科があったのですが、
どちらでもモノづくりをすることには変わりがないと思い、CG科を選択しました。

学校では毎日課題が出るのですが、
僕は新聞奨学生をやっていたため、学校で課題をやる時間がなかったので、
家で課題をやらなければならなかったんですよ。

しかし、CG科の課題をやるには当時ハイスペックかつ高額な機器が必要で、
しっかりと環境を整えなければならなかったんです。

その機器を自宅に揃えるということが困難だったため、
グラフィックデザイン科に学科変更することにしました。

グラフィックデザイン科にはデザインコースとイラストレーションコースがありました。

僕は絵を描くことが好きだったので、イラストレーターになりたいと思っていたのですが、
あえてそこでデザインコースへと編入したんです。

デザインコースには絵に関する授業は無かったのですが、
広告やコピーライティングの授業を受けて、その知識を生かして空いた時間に自分で絵を追及していけば、
より守備範囲の広い絵を描けるようになると思ったんです。

でも、そうして実際に広告やコピーライティングの授業を受けていくうちに、
絵よりも広い範囲で「デザイン」という概念を捉える、ということに面白みを感じ、
次第にグラフィックデザイナーという職種に興味を持つようになりました。

そんな中でも「自分のことは自分の中で完結させたい」という気持ちが強かったので、
早く自立した生活をするために、1年勉強した頃に専門学校を辞めて、
デザイナーとして働こうようとしたんですよ。

そのころ、ちょうど人から頼まれて製作をやることが増えていたので、
そこに力を入れて人脈を広げていきたいと思ったんですね。

本気で学校を辞めようと思って、担任の先生にそのことを伝えたら

「絶対に後悔するから、辞めない方がいい」

と必死に止められて思いとどまり、結局卒業までの2年間、学校に通うことにしました。
卒業するころには、この時に学校を辞めなくて本当によかったと感じました。

会社で働いてみて感じた「人のしがらみ」


卒業後は、業界のトップクラスの会社で仕事がしたいと思っていたので、
最初は大手の広告代理店に就職したいと考えていました。

しかし、そういった企業は美大出身のさらに優秀な生徒でないと、
なかなか就職することは難しかったんですね。

それを知ってからは、大手の企業をクライアントにしている会社で、業界に人脈を作りたいと思うようになりました。

そんな背景から、実際に大手の代理店をクライアントにしている製作務所に応募をして、
デザイナーとして入社することになりました。

入社してからは、実際に大手の代理店と仕事をすることができ、
自分の創ったものが社会に出ていくということが嬉しかったですね。

会社としてもアットホームな雰囲気で、とても良くしてもらっていたのですが、
働いていくうちに段々と

「自分の創りたいものって、これだったっけ?」

というような疑問をもつようになっていったんです。

会社として受ける仕事だと、営業さんなどの修正が入ったり、
クライアントの希望に合わせなければならなかったりと、自分の思うようにできることがやっぱり少ないんですよね。

時にはエンドユーザーの方に嘘をついているような罪悪感を感じたこともありました。

そしてやはり、「自分のことは自分だけで完結したい」という思いが強かったんですよね。

働きながら様々な場面で感じてきた、そのような「人のしがらみ」を無くすことができれば、
自分の悩みを解消できると思い、色々と考えてみたのですが、
やはり会社の中では難しいと感じたんですよね。

そういった背景で、2年ほど働いたころから、独立して自分のやりたいことを追及していきたいと思うようになっていきました。

入社したからには最低でも3年間は働こうと思い、
最終的に3年9か月たった時に会社を辞めてフリーランスになることにしました。

最終的には原点に戻る


現在、フリーランスのグラフィックデザイナーという肩書きで活動していますが、
正直「グラフィックデザイナー」という肩書きにこだわりはなく、
時には絵を描いたり、写真を撮ったり、
企画に携わったみたり・・・と、様々な活動を行っています。

元々僕はモノづくり全般が好きなので、
特に肩書にはこだわらないで、自分が本当に「良い」と思えるものを作っていきたいと思ったんです。

そのファーストステップとして、
「森の映画祭」という野外映画フェスイベントに、クリエイティブの統括として関わっていて、
舞台美術や当日上映するコンテンツの選定、宣伝や広報など、
幅広い業務に携わっています。

今までにやった経験のないことまでやらせてもらえていて、
「やりたい」と思った人たちでチームを組んでいるので、
自分の好きなことを楽しみながらやれている、という良い感覚を味わうことができています。

正直わからない部分も沢山ありますが、
まずはこのイベントを成功させ、定期的なイベントとして、
毎年どんどん大きくしていき、
大勢の人たちに自分が創った作品を自分が作ったイベントで観せたいですね。

そうすれば、自分が今まで抱えてきた悩みが全部クリアになると思うんです。

でも、デザインやクリエイティブは若い気持ちがないと、
新しいものが作れないとは思っています。

また、自分自身も「教える」ということが好きなので、
いずれは専門学校などで学生に絵を教えたりもしてみたいですね。

そしてもっと大きな望みとしては、
絵やそのほかの部分でも「自分らしさ」を追及していき、

「自分の好きなことをして、そこにお客さんがついてきてくれる」

ような働き方をしてみることが夢です。

そうした想いがある中で、最終的には自分の原点である、

「自分が好きな絵を描いて、それによって人の感情に影響を与える」

ということさえできていれば、それだけで幸せなので、そこに戻っていくと思いますね。

2014.07.07

ライフストーリーをさがす
fbtw

お気に入りを利用するにはログインしてください

another life.にログイン(無料)すると、お気に入りの記事を保存して、マイページからいつでも見ることができます。

※携帯電話キャリアのアドレスの場合メールが届かない場合がございます

感想メッセージはanother life.編集部で確認いたします。掲載者の方に内容をお伝えする場合もございます。誹謗中傷や営業、勧誘、個人への問い合わせ等はお送りいたしませんのでご了承ください。また、返信をお約束するものでもございません。

共感や応援の気持ちをSNSでシェアしませんか?