祖父の代から続く美術商の家に生まれました。茶道具専門の古美術商だった父に、子どもの頃からよく茶会などに連れて行かれていました。裕福な人々が持つ、質の良いものを見るチャンスがたくさんありましたね。小学校の終わり頃には自然と、父と同じように美術商になるものだと思っていました。

ただ、古美術品の良さはよくわかりませんでした。父に「これどう思う?」と買ってきた茶碗を見せられても、ただの土の塊にしか思えなかったんです。

中学生になって、父に「美術がわからない」と話すと、美術館に行くことを勧められました。そこで、たまたま開催していたポップアートの大御所と言われていた芸術家の展覧会に行ったんです。

作品を見て、これまで自分が美術だと思っていた茶道具などとは全然違うことに衝撃を受けました。歯ブラシや筆など身近な道具を使って表現している作品もあり、「美術ってこれでいいんだ」と認識が大きく変わりました。美術は、見る人によってどういう風にでも理解できるものなんだと感じ、そこから頻繁に美術館に通うようになりました。

中学校のとき、とにかく目立ちたくて、仲間と女子ばかりの演劇部に入りました。男子がきたと大歓迎され、目論見通り目立つことができましたね。ただ、やっているうちにそれだけでなく、自分が発信したことに人が反応するのが快感になりました。自分を表現することの面白さを知ったんです。演劇にのめり込んでいきました。

高校に入ってからは、学校をさぼって美術館に通い、夕方に戻って演劇部で練習する日々でした。成績は散々なもので、父に呆れられていましたね。しかし大学付属の高校だったので、受験することなく大学に進学できました。