母国ネパールと、留学生のために。 人の笑顔を作る事業を生み出したい。

【日本経済大学提供】留学生向けのグループハウス事業や母国ネパールとの貿易事業を行うべく、奔走している大学4年生のパンディ・バスさん。どちらの事業も自身が実際に目の当たりにした問題を解決できないかと考え、立案したそうです。バスさんが持っている課題感と、実現したい未来とは。お話を伺いました。

PANDEY BASHU

パンディ バス|学生
日本経済大学経営学部経営学科4年生。3年生の時、日本経済大学インターナショナルインキュベーションセンター主催のビジネスプランコンテストに参加し、優秀賞を獲得。その年に県が主催する「福岡よかとこビジネスプランコンテスト」でも好成績を残した。現在はアイディアの事業化を目指している。
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※この記事は日本経済大学の提供でお送りしました。

生きていくために電気技師の道へ


ネパールのゴルカという場所で生まれました。私が小学校1年生の時に父が警察官を退職し、地元で建材の販売店を始めました。はじめは、同じような商売をしているお店は近くになく、父は周りの人からばかにされました。しかし、事業を初めて半年ほど経つと、徐々に売り上げが上がるように。1年ほど経つと、お客さんのニーズに合わせて建材とは関係のないインテリアも扱うようになり、どんどん事業を拡大していきました。

父が遠くの街に買い出しに行く時などは、店番を任され、そこでお客さんから「ありがとう」と声をかけられることがありました。すごく嬉しかったですね。お客さんを大事にしなきゃと思いました。

同じ頃、日本で働いていた父の友達がネパールに帰ってきて、日本について話しているのを聞きました。その人が言うには、日本人は優しく、例えば一人で道を歩いていると、どこまで行くのかと声をかけてくれ、道案内してくれたとのこと。優しい人が多いという日本に、いつか行ってみたいなと考えるようになりました。

ダンスや音楽が好きで、勉強やお店の手伝い以外の時間は、よく踊っていました。14歳の時、年に一回開催される学校のイベントにダンサーとして出場して以来、いろんなお祭りやイベントでダンスを踊るようになりました。

高校卒業後は、バンドを組んで音楽関係の道に進みたいと考えていましたが、父から「稼げないからやめなさい」と言われ断念しました。ネパールでは、進路を子どもが決める仕組みが整っておらず、親が決めることが多いのです。そのため、手に職をつけられるよう首都カトマンズの専門学校に入学し、電気修理などの技術を3年間学びました。

日本で働きたい


専門学校を卒業すると、自立して生きていくために職を探すことに。ドバイの大手飲食店から機械の修理や点検などを行う職の求人が出ていたので、友達と一緒に応募することにしました。

見知らぬ外国の地で、2年間一生懸命働きました。働くうちに、ドバイの騒がしい雰囲気が苦手だと感じるように。また、外国人労働者に対する扱いが悪く、例えば職場で私が小さなミスを犯したとき、外国人だからという理由で過剰に怒られたりしました。そこで、一度ネパールに帰ることにしたんです。

帰国後、外資系の電化製品の会社に就職しました。ただ、ドバイで働いていた頃に比べて給料が少なく、どうにかしたいなと考えていました。

そんな時、近くに住んでいた会社の先輩が日本で就職するために、日本語の勉強をしていることを知りました。幼い頃に父の友人が話しているのを聞いてから日本に興味を持っていたので、私も日本に行こうと決め、日本語を勉強することにしました。

日本では大学に行きたいと思っていました。経済が発展している日本のサービスや経営手法について学び、将来は自分でビジネスをやってみたいと考えたんです。

1カ月ほどその先輩に教えてもらった後、今度は日本語学校に通って勉強しました。朝早く学校に行って勉強し、それから仕事に行く日々を送りました。半年ほど勉強した後、ようやく日本に渡ることができ、今度は福岡の日本語学校に通いだしました。

留学生の課題を解決するビジネスを


日本に来てすぐは、わからないことが多くて非常に苦労しました。アルバイトがしたくても、紹介してもらえるような繋がりがなくてできなかったり、ゴミの分別の仕方がわからなくて近所の人に怒られたり、携帯電話を買いに行っても、どのプランに入れば安く済むのかわからなくて困ったり。苦労しつつも少しずつ学び、時間をかけてできるようになっていきました。

日本語学校で日本語を学びつつ、いろんな大学のオープンキャンパスに行き、どこに行こうか検討していました。最終的には日本経済大学を選びました。決め手になったのは、留学生の多さ。留学生が多いからこそ授業も工夫されており、内容を理解しやすかったのです。例えば、漢字を書いた時は、必ずふりがなを振ってくれたり、板書を写し終わっているか確認してくれたり。ここなら留学生の自分でも、しっかり学ぶことができると思いました。

入学してからは2年間、おもに基礎科目などを勉強。3年生になると、自分が思い描くビジネスプランを形にしたいと考え、学内のビジネスプランコンテストに参加することにしました。

プランを考える基になったのは、留学当初、住居に関して苦労したことでした。日本に来てすぐは学校が提供してくれるアパートに住んでいましたが、その後は自分でアパートを借りて引っ越さなければならず、手間もコストもかかったのです。私はまだ県内での引越しで、家具の運賃など安くすみましたが、もっと遠くに引っ越すとなればさらに費用がかかります。その負担は留学生にとっては非常に大きいのです。

そこで、日本に来た留学生を支援するための家具付きグループハウスをつくろうと思いつきました。あらかじめ家具が用意されている、留学生専用のグループハウスがあれば、新しい家具を買い直す余計な負担がなくなると考えたのです。また、複数人で一緒に住むことで、日常生活に必要な情報を共有することができ、様々な問題をスムーズに解決できると思いました。

さらに、その住まいには空き家を使おうと考えました。空き家を使うことで経費が安くおさえられ、家賃を低く設定できます。また、日本の空き家が多いという問題も同時に解決できるのではと考えたのです。

ビジネスプランを練るにあたって、いろんな先生方に協力してもらいました。社会課題を解決する事業を行っている社長にも実際に会わせていただき、お話を聞けたことでプランによりリアリティが加わりました。

私が作ったプランは、学内のコンテストで優秀賞を獲得。その後参加した県が主催するビジネスコンテストでは、唯一の留学生でありながらもトップ10に入ることができました。コンテストに参加したことで人脈ができ、プランの実現に向けて一歩前進しました。

社会問題を一つずつ解決していきたい


現在は、卒業後にグループハウス事業を立ち上げるために実証実験を行うほか、新しいアイディアの事業化にも取り組んでいます。

実証実験では、実際に家を借り、後輩の外国人留学生3人と一緒に住んでいます。その結果、事業を運営するにあたって、考えなければならないことがたくさんあることがわかりました。例えば、実際に空き家を借りるため不動産屋を回ってみて、物件のスペックが法律の基準を満たしておらず、借りられないものが多いことがわかりました。だから、学生が多くなってきたら空き家の他にもアパートを借りるなどして対応しなければならないと考えています。

また、空き家を借りることができたとしても、たいていの物件はボロボロなので、リノベーションする必要があるということもわかりました。しかし、業者に工事を頼むと費用がかかります。そこで、そこに住む留学生たち自身で掃除や補修など行うようにしてはどうかと考えています。経費が抑えられ、家賃を安く保つこともできますし、自分たちの家だという意識が強まり、大事に使ってもらえるようにもなると思うのです。

実証実験の段階では、私が一緒に住むことで、日常の様々な問題をスムーズに解決できる手助けをしていきたいと考えています。しかし将来は、私がいなくても留学生に必要なサポートができるような仕組みを作っていきたいです。

新しい事業では、外国に働きに出る前から感じていた、母国の問題を解決できないかと考えています。事業内容は、ネパールの仕事のない女性に、普通なら捨ててしまう水牛の皮から財布やベルトなどを作ってもらい、それを日本で販売するというもの。職のないネパールの女性の支援にもなりますし、質の良い革商品を安く提供することができます。

ネパールでは、男性であれば国内に仕事がなくても、私のように海外に働きに出ることができます。しかし、多くの女性は一人で外国に行くことは怖いと感じています。また、外国で働けるほどの教育を受けていない人も多いです。そんな人たちを、仕事を提供することで支えていきたいと考えています。

今はいろんな日本の企業に商品を持っていって、販売してくれないか打診しているところです。将来的にはネパールに工場を作って、できた商品を日本で販売しつつ、世界展開していきたいと考えています。せっかく日本に来て経営について学んだので、少しでも母国に還元していきたいです。

勉強すればするほど、世の中には社会問題が多いことがわかってきました。たくさんある社会問題を、たとえ小さなところからでも、一つずつ解決していきたいです。

私は、人生はそんなに長くないと思っています。100年生きたとしても、できることは限られている。だから生きている間に、日本に来る留学生やネパールの女性といった自分の身近な人たちを、1人でも2人でも、幸せにすることができればいいなと思っています。周りの人が笑顔になると私も幸せになって、嬉しくなるんですよね。また、そんな事業を生み出すことで、自分が生きた証を残したいという気持ちもあります。後世の人たちが笑顔になれる何かを残せるよう、今をしっかり頑張りたいです。

2018.10.29

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