やると決めたら、最後まで努力する。直感で選んだことを、正解にするために。

人気のインスタグラマーと企業をつなぎ、商品を魅力的に見せる写真・動画の制作サービスを展開している木村さん。大学時代から現在まで、どんな道を歩むのか直感で選んできたそうです。選択した後の行動について、木村さんが心に決めていることとは。お話を伺いました。

木村 優紀子

きむら ゆきこ|企業とインスタグラマーを繋ぐサービスを運営
株式会社GENIC LAB代表取締役。10代〜30代女性にリアルにウケるインスタジェニックなコンテンツを提供している。

強い責任感と目標達成で都大会優勝


東京で生まれ育ちました。小さい頃から物事に対する好き嫌いがはっきりしていて、自分に関わることに対して、こだわりが強かったですね。服にもこだわりがあって、幼稚園の頃、着たくない服を出された時は、拒んでパンツ姿で外に逃げるほどでした。

両親は数学の教師です。親から勉強しろと言われたことはなく、私のしたいことを自由にさせてくれました。

小学5年のとき、親の影響で硬式テニスを始め、中学時代はテニスに明け暮れました。高校は部活ちゃんとできる学校を選び、テニス部に入りました。ところが、高校に入ってすぐに3年生が引退し、2年生がいなかったため、部員は1年生だけになってしまいました。しかも、顧問の先生はほとんど顔を出しませんでした。そんな中、私が部長に選ばれたんです。

もともと責任感が強く、学級委員を任されるようなタイプでした。みんなが納得できる意見に収束させて、段取りよく物事を進めるのが得意だったんです。

顧問不在で、1年生だけのテニス部でしたが、みんなで話し合って都大会優勝を目標に掲げました。週に6日練習し、お互いに教え合ったり、チームが一丸となれるように目標をシェアしたり、レギュラーではないメンバーが率先してマネージャーをやってくれたり。部長として、部員の得意な部分を活かしながら、目先の試合に勝つためではなく、引退までに優勝することを念頭に取り組みました。その結果、無事に高校3年生の引退試合で優勝することができました。チームで挑んだ団体戦だったこともあり、すごい達成感がありましたね。

部活をやりきったあとは、腰を据えて進路について考え始めました。大学では、天文学を学びたいと直感で思いました。小さい頃から、プラネタリウムにが好きだったんです。いろんな星があって、夢がある。数学と物理が得意だったこともあり、天文学部に進もうと高校3年の時に決めました。

でも、天文学を仕事にしたいと思って決めた進路ではありませんでした。外に出て人に会ったり、新しいことを吸収するのが好きだし、その時々で興味があることにチャレンジしたかったので、自分は研究職には向かないと感じていたんです。

将来の仕事には繋がらなくても、一度は天文学を勉強してみたいという気持ちが強く、4年間だけトライしようと決め、天文学部で名を馳せる仙台の大学に進学しました。

迷うなら正解にする努力をしよう


ところが、入学早々から、天文学は趣味にとどめておけばよかったと後悔するようになりました。波長や空気の密度などの勉強で、ひたすら計算をする学問なんです。机に向かうだけの時間がつまらなくて、将来この道には進みたくないとなおさら思いました。

大学では友達がなかなかできず、つまらなかったですね。周りは見た目も中身も真面目な学生ばかり。そんな中、私は一人、金髪でミニスカートを履いていました。声をかけてくれる子もいなかったし、私自身が心に壁を作って周りの人を寄せ付けないようにしている部分もありました。

仙台での生活はつまらないし、仲の良い友達はみんな東京にいるから、東京に戻って編入しようと、大学の編入説明会に参加しました。でも、いざ編入試験を受けるか考えたとき、私自身が大学生活を充実させる努力をあまりしてこなかったと反省したんです。

これは持論なんですけど、良い選択だったかどうかって自分次第だと思います。その選択にしたから人生が絶対良いものになるわけではなくて、決めたことに対して自分がいかに楽しくできるか、選択を正解にできるかが大事で、何を選んでも正解にするのは自分次第なんじゃないかって。

そう考えると、大学を楽しむ努力もせず、編入という道を選ぶのは間違いだと思いました。仮に編入してまた不満が生まれたら、同じことを繰り返すだけだと思ったんです。最後までやり遂げる努力をして、ダメだったら考えればいいやと思うようになりました。

自分から友達を作ったり、バイトをしたり、勉強に一生懸命取り組みました。その結果、価値観が全く違う友達ができて、自分の世界が広がりましたね。

1日半悩んだ内定辞退とCOO就任


就職活動では、様々な業界に関われる仕事を希望し、合同説明会に参加しました。商社か広告代理店で迷いましたが、広告の方がワクワクできたので、ネット広告を手がけるベンチャー企業に就職を決めました。

広告代理店ではメディアコンサルタントとして働き始めました。どんなバナー広告が有効かを、クライアントに提案して運用する仕事です。業務自体は楽しかったですが、悔しい思いもしましたね。ユーザー目線に立って考えた提案でも、クライアントの社内事情で覆されることが何度もあったんです。

もっと本質的にクライアントと向き合い、オーナーシップを持って仕事をしたいと、起業や新規サービスの立ち上げを考えるようになりました。そのために自分に足りないスキルが、営業でした。営業の経験を積みたいと上司に何度も掛け合いました。将来自分の力でビジネスを展開したいこと、実現するために今できること、できないこと。できないことをカバーするために営業に行く必要があること。そんな内容の資料を10ページ作って、通らなければ辞めると言ってプレゼンしました。その結果、晴れて営業に異動することができました。

営業はクライアントの事業課題をヒアリングし、数ある解決策の中からベストなものを提示する仕事でした。社内で5〜20人のチームを組み、時には、クライアントの元に専門家を連れて行って解決策を提案することもありました。成果も出ましたし、何よりもクライアントからの信頼を得られたことが一番嬉しかったですね。プライベートでも飲みに行くような仲になりました。

営業スキルの向上に努めるかたわら、社内で開催される新規事業立案コンテストにも応募しました。新規ビジネスのアイデアをプレゼンし、半年かけてブラッシュアップして、優勝者を決定。そのアイデアを事業化するコンテストです。

2度挑戦し、最終選考まで残りましたが、優勝はできませんでした。3度目の挑戦をするか迷いましたが、次のコンテストが終わる半年先まで、この会社に居続けるのでは間に合わないと思い、会社を辞める決断をしました。ゆくゆくオーナーシップを持って仕事をするために、本気で勉強したいと思ったんです。それで転職して新規サービスの立ち上げに向けて勉強することにしました。

起業に踏み出さなかったのは、一人でやっていく自信がまだなかったからです。働きながらビジネスの動向を見ること、事業育成を学ぶことを目標に、投資部門がある大手IT企業に転職することにしました。

ところが、転職直前、有給を消化するために行ったシンガポール滞在中、思わぬお誘いを受けました。事業プランコンテストで優勝し、子会社として独立しようと動いていた先輩から、会社のナンバー2である最高執行責任者にならないか?というお誘いのメールを貰ったんです。

先輩は、インスタグラマーが撮影した写真を売買できるプラットフォームを運営していました。

突然の誘いで、びっくりしましたね。事業を作りたいけど自信がない状態だったので、なぜ私に声を掛けてくれたんだろうと、驚きました。

でも、直感でやりたいと思いました。事業内容は、私もコンテストに参加していたので知っていたんです。プレゼンを聞いて、こんなサービスがあったらいいのにと感じていたし、お話を頂いて単純にやってみたいと思いました。一方で、私が入ったところで貢献できるのかという迷いもありましたね。

色々な思いが錯綜しましたが、社長が苦手としていた営業のスキルを持っていることで役に立てるのではないかと思いました。私は営業として交渉したり、数字を使って合理的に話を進めることが得意だったので、社長が苦手だと言っていた部分をサポートすることができます。1日半迷ったのち、「行きます!」と返事をして、一緒に働くことにしました。

肩ひじ張らない起業で固定観念を崩す


こうして、26歳のときに転職しました。スタートアップ企業で働くのは、簡単ではありませんでしたね。立ち上げで問題が起きたり、売り上げが伸びなかったり。開発も思うようには進まないし、ようやく採用した人がすぐに辞めてしまったことも。悩みは尽きませんでした。

この会社で仕事を続けるべきか迷う瞬間もありましたが、今逃げたら後悔すると思いました。やってやる!って気持ちで入ったのに、自分のアイデアを実現したわけでも、プロダクトで成果を残せたわけでもなかったからです。それに、チームメンバー、クライアント、サービスのユーザーさんなど、応援してくださる方が着実に増えている中で、私が弱気になってどうする!と思い、目の前のことを一生懸命やることにしました。


難しいこともありましたが、オーナーシップを持ち、サービスのためになる施策をとにかく早く実施することを意識しました。徐々に売上が伸びると、やりがいも増していきましたね。

さらに、経済産業省が行う起業家育成プログラムに参加し、シリコンバレーに2週間滞在しました。そこで様々な企業の話を聞いて感じたのは、起業やビジネスシーンに女性が進出することに対して、日本では、偏見や固定観念を持っている人がまだまだ多いということでした。例えば、20代半ばの私がプログラムに参加していると、頑張っちゃってるねとか、起業は人生かけてやらないといけないとか言われるんです。

そういう風潮に違和感を抱きました。ラフというか、安直というか、肩ひじ張らないくらいの気持ちでビジネスを始めてもいいんじゃないかなって思うようになったんです。

そんなことを考えながら、会社の成長を第一に事業に取り組んでいました。新しくリリースしたサービスが順調で、数ヶ月間で売上が何倍にも伸び、どんどん人を雇わなければならない状況でした。

ですが、親会社、クライアント、インスタグラマー、社内メンバーなど様々な人と関わりながら事業を進める中で、経営層の中で注力したい領域にズレがでてくるようになりました。人間関係にも悩み、この会社で働き続けることは難しいと判断しました。

正直、辞めることはすごく悔しかったです。自分が決めたことを諦めなければいけないという状況に対する悔しさが大きかったですね。あまりに辛くて、人生で初めて体調を崩し、眠れなくなって、満足に食事もできなくなりました。

会社を辞めて別の会社に就職するか、自分で会社を立ち上げるかすごく悩みました。親会社や社長とも相談する中で、携わっていた写真撮影サービスの事業譲渡を提案されました。

悩みに悩んで、最終的にチャンスだと思いました。市場からのニーズも十分にあるし、インスタグラマーとの繋がりもある。今の時代にフィットしたサービスだったからです。

法人を立ち上げることにすごくプレッシャーを感じていたのですが、チャンスがあるのに挑戦しないのはもったいないと思いました。プレッシャーはずっと拭えませんでしたが、最低限の条件で起業して、クライアントや周りの人に迷惑をかけない、投資をもらわない、社員を雇わないんだったら、最悪潰してもいいぐらい楽に考えて、会社を立ち上げることにしました。

人生を楽しくしていく努力


現在は、SNSにアップする写真や動画を提供する株式会社GENIC LABを経営しています。今までの宣伝写真は、プロのカメラマンが白い背景の中に商品だけぽつんと置いて撮る綺麗な写真が主流でした。それを、私の会社ではフォロワー1万人以上を獲得しているインスタグラマーの方が撮影するんです。彼女たちが撮るのは、SNSで流れてきたときに目が止まるような、ユーザーに好かれる写真。自宅やスタジオで商品を撮影し、依頼してくださったメーカーさんはホームページや広告にその写真を使います。

インスタグラマーは自分のカメラスキルを趣味の領域だけでなく、仕事にできることに喜んでくれています。またメーカー側からは、センスが良い上に商品のターゲットに沿った新しいクリエイティブを納品してもらえて、マーケティングの幅が広がったとの声を頂いています。

両者にサービスの価値をわかってもらえて、それに伴って依頼も増えているので、とても楽しいですね。創業時のプレッシャーも消えて、売上も伸びているので、仲間を増やして拡大していくことにも関心があります。

今の理想は、目の前のことに全力で取り組んで、他にやりたいことが出てきた時に新たにチャレンジできるくらいの経験とスキルを蓄えることですね。もちろん今の仕事は楽しいし、一生懸命やります。でもいずれは結婚もしたいし、出産もしたいし、今と全然違うことがしたくなるかもしれない。その時に物怖じせずに挑戦できる環境を整えられたらいいなと思っています。

今の風潮って、24時間寝ずに働く人こそ起業家だとか、それぐらいの覚悟がないと会社なんて立ち上げちゃいけないみたいな考え方があると思います。自分が起業するときもそういうご指摘をいただくことがありました。私は、そういう考え方だけではなくて、色々な選択肢があったらいいのにと思うんです。

仕事だけに没頭せずプライベートを楽しみながら起業しても、成功する人は成功するし、長時間働いても成功しない人もいる。それって、自分の過ごし方次第だし、見え方で決めるべきじゃないと思うんですよね。私はメイクもネイルもしてプライベートも楽しみながらも、ちゃんと成功したよねって思ってもらえるような働き方をしていきたいです。


最終的な目標は、後悔せずに死ぬことです。やり残したこともなく、いい人たちに囲まれて、楽しかったと思いながら死にたい。それまでに挑戦したいことがまだまだありますね。週7日のうち週5日働かないといけないのなら、楽しみながら努力できることを見つけた方が良いって思うんです。自分が選んだ答えを正解にするように行動するべきだと思いながら、毎日を過ごしています。

2017.11.13

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