バンド解散・レコード会社経営からMBAへ、人生からっぽは嫌なんです。

IT系スタートアップで働きながら、MBAに通い、プロのキックボクサーも兼ねる井上さん。学生時代から長い間情熱を傾けて来た音楽を離れ、次の一歩を踏み出そうとしています。冒険さながらの人生にはどんな背景があり、これから何を目指すのか、お話を伺いました。

井上 裕介

いのうえ ゆうすけ|MBA学生兼スタートアップ兼プロキックボクサー
青山学院大学 専門職大学院 国際マネジメント研究科MBAに在学しながら、株式会社スゴログにて勤務。
プロキックボクサーとしても活躍中(J-NETWORKフェザー級10位/REBELS-MUAYTHAIフェザー級8位)。

株式会社スゴログ
株式会社スゴログ(Facebook)

バンド漬けの学生時代


小さいころから、音楽に触れて育ちました。
ピアノを習ったり父親の影響でギターを弾いたり、特別上手かった訳ではありませんが、音楽が好きでしたね。

そんな背景もあり、高校生になってからは友達とバンドを始めました。
洋楽への憧れから英語の曲を演奏し、僕はベースの担当でした。

高校生活はとにかく音楽に打ち込み、将来は音楽で食べていこうと決めていたんです。
本気で音楽に打ち込むためにも、とにかく東京に出ようと考えていましたね。
それに、英語も勉強したいという気持ちがあったので、首都圏の大学に行くことに決めました。

大学に進学してからも、変わらず音楽漬けの毎日で、
自分たちの音楽活動をマネジメントするために、レコード会社まで作ったんです。

矢沢永吉の自伝に感銘をうけ、アーティストも裏側を知らなければという思いから、
CDの製作からイベントのプロデュースまで全部自分たちでやっていました。
最終的には自分たちだけではなく、他のアーティストたちのマネジメントまでやるようになっていきました。

周りが就職活動を始めても、どこかの企業で働く気は全くありませんでした。
音楽でやっていこうということしか考えていませんでしたね。

音楽への葛藤


卒業後も変わらずバンドの活動と、他のアーティストのマネジメントをしていました。

ところが、バンドのメンバーが体調を崩してしまったことをキッカケに、
バンドが解散してしまったんです。24歳のことでした。

今までずっとバンドに賭けてきたので、解散してからはどうしたらいいか分からなかったですよ。

ただ、その反面、今まで閉鎖された世界にいたからこそ、知らないことばかりでワクワクする気持ちもありました。
ハジケてしまって、終電から遊び始めることすらありましたね。

解散後も変わらず、アーティストのマネジメントは行っていました。
食べていくために並行でバイトしていたITベンチャーから、正社員にならないかという誘いももらったのですが、
悩んだ末お断りしました。

まだ音楽に対する未練があって諦めきれなかったんです。

その後、知人のつてでクラブの経営を手伝うことになりました。
どんどん新しいことをして、大きくしていきたいと思い張り切っていたのですが、
事業のフェーズや、一緒にやっていた人との方向性が合わず、半年で離れることになってしまいました。

この時には、さすがに音楽に対するモチベーションが下がっていました。
なんだか、このままやっていても、上手くいかないんじゃないかとまで考えたんです。

ちょうど第二新卒の時期だったこともあり、もう音楽は辞めて就職し直そうと思ったんですよね。
ITベンチャーの波もあったので、そこで一発当ててやろうというような意気込みで面接を受け、
ある会社に採用してもらえたんです。

今までずっとやってきていたレコード会社は委任して、自分は離れることに決めようと決め、
所属しているアーティストにも伝え、自分の中で、音楽と距離を置く予定でした。

ところが、あるアーティストから、

「もう一回だけ、一緒にやろう」

と言われたんです。

正直すごく悩みました。決めたはずの心が揺らいでいたんです。
結局、転職の話を断り、もう一度レコード会社でやり直そうと決意しました。

それが、自分にとっての答えでした。

音楽との別れ


最初こそ仕事が少なかったですが、
結局、僕に声をかけてくれたアーティストのブレイクとともに、
すごく忙しくなっていきました。

それまではバイトを並行していたのが、音楽専業でやれるようになったんです。

その後、大きな会場でイベントを打ったり、フェスに仕事で行ったり、
楽しい経験が沢山あり、多くの達成感がありました。

ただそれと同時に、上手くいかないことや難しい問題点もどんどん積み重なって
苦しい時期でもありました。
そんな中で、色々な課題が積み重なり、音楽業界自体に疲れてしまったんです。

これまでは、迷いながらも最終的に音楽の道を選んできました。
でも今回ばかりは違いました。

この状態で、もう10年、また音楽をやりたいとは思えなかったんですよ。

空っぽの人生なんか絶対嫌なんです。


ずっと自分の中心にあった音楽を離れてから、僕は社会の仕組みを学びたいと考え、
MBAの勉強をすることに決めました。
これまで、叩き上げでゼロから学んで来た経営を、しっかり勉強してみたいと思ったんです。

MBAを取ることなど意味が無いという人もいますが、僕はMBAスクールでの勉強を、とても価値のあるものだと思います。

ここでは仕事の仕方を教えてくれるわけではないですが、
自分のアイディアをいかに多くの人に伝えていくために必要なフレームワークを、
色々な属性の学生と議論しながら学べるんです。

今はMBAの勉強をしながら、ソーシャルメディアのマーケティングを行うスタートアップで働いています。
後は、いろいろなスタートアップ企画を練ったり手伝ったりもしています。

音楽業界で過ごした期間のブランクから、浦島太郎状態だったのですが、インターネットビジネスのことは
随分キャッチアップ出来ました。MBAでのインプットをすぐにアウトプット出来る環境は貴重です。

今後の話では、将来の選択肢が3つあるんです。

1つ目は、もう一度0から会社を立ち上げること。
2つは、自分の経験やMBAの知識を活かし、スタートアップに入り、上場まで導くこと。
3つ目は、大企業の大きな資源を利用して新規事業開発をすることです。

新しいものや仕組みを作ること、冒険することが好きなんですよ。

これまでは音楽という好きなことをずっと続けてきました。
好きを仕事にしたからこそ、失うものも多かったです。
今は、次に何をするか考えているんですよね。

最近、ダイエットのために始めたキックボクシングでプロになって試合に出ているんです。
ただでさえデビューが遅いし、まるでお金にならない競技なんです。
でも、自分が時間や労力を投資したことに対してのリターンて、お金だけじゃないと思うんですよね。

目標を決めてそれを達成すること。
減量して練習して目の前の相手に勝つことという小さなプロセスが何よりも大切で、
人生とはそういうことの積み重ねに意味があると思うんです。

まるで冒険のような人生ですが、やりたいことをし続けたいんですよね。
やりたくないことばっかりやって、お金だけあって空っぽの人生なんか絶対嫌なんですよ。

2014.05.26

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