「仕事」と「暮らし」を見つめ直すキッカケがありました
自然栽培という農法を知っていますか? 作物自体が本来持っている生命力をいかした、肥料や農薬を使わない栽培方法です。 そんな自然栽培の農園を、ご夫婦で運営されている小島さんは、もともとITエンジニアでした。 自然栽培の農家になった背景にはどんなストーリーがあったのでしょうか?
小島 直子
こじま なおこ|無肥料自然栽培農家
埼玉県飯能市にて、農薬・肥料を使用しない自然栽培、
宅配をメインに、地域のマーケット等へも出店する、小島農園を運営。
小島農園HP
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自分には何かミッションがあると思っていた
20代は模索の時間でした。
なにか自分にしかない生き方があると思っていました。
大学4年生のとき、このまま社会の歯車に乗るのが嫌だと感じ、
就職せず、海外の大学院に留学したいと思いました。
語学留学したり準備したのですが、英語力と資金が間に合わず、見通しがつかないでいました。
そんなとき、青年海外協力隊のポスターが目に入りました。
大学で学んだコンピュータの技術で途上国に貢献することができる。まさにこれが天職だ!だと思いました。
2年間バングラデシュでコンピュータを教える仕事を行い、充実して任期を終えました。
帰国後は、せっかくだから培ったITの方面でやり切ろうと、
Webの開発会社にエンジニアとして就職することにしました。
大震災が起きた時、子供のそばにいてあげられなかった
もともと大学が工学部でプログラミングを学んでいたことや、
ものづくりが好きだったこともあり、仕事は楽しくて仕方なかったです。
チームリーダーになり、プロジェクト運営もして、とてもやりがいを感じていました。
その後、第一子が産まれ、大きな転機を迎えました。
仕事中心の生活から、暮らしを大切にするようになりました。
子供のために暮らしを大切にしながら、どう働くべきなのか?
朝7時には家を出なければいけないので、子供に「急いで!」とご飯を食べさせたり、
子供が泣いても出かけなくてはいけないことに心が痛んだり。
会社では、周りがまだ働く中、残業出来ないので早く帰るため、同僚にも申し訳なさを感じたり、
少しずつ仕事と子育ての両立に悩み始めていました。
そして、3.11の大震災があり、幼い子供が家にいるにもかかわらず、
家に帰れず、そばにいてあげられないという、とても辛い体験をしました。
暮らしを問い詰めた結果、そして夫を誘うこと5年、農業を始めることに決めました。
未来を担う子供たちに、「健やかないのち」を食べてほしい
小さい頃父が家庭菜園をやっていたこともあり、エンジニア時代も市民農園を借りて野菜作りをしていました。
そんな時、知り合いに紹介された本で自然栽培について知りました。
さらに固定種野菜という昔ながらの作物に出会い、
大切なお野菜が今、消えようとしていることに強い危機感を覚えました。
固定種野菜を自然栽培(農薬や肥料を使わない農法)で育てると、
作物が本来持っている生命力を最大限に引き出すことができます。
近くに同世代の先輩農家達が頑張っていることも知り、私たちにもできるのではと思いました。
次世代を担う子どもたちには、「健やかないのち」を食べてもらいたいと思っています。
健やかないのちとは、たとえば野草のように、雨風、日照り、虫にも負けず、毎年生え続けるような作物です。
だからこそ今後は、子育て世代のママたちに、本当の野菜のおいしさを伝えたいです。
それをきっかけに、今の食の問題などについて考えてもらえると嬉しいです。
栽培、販売だけでなく、体験イベントなど、様々な手段で提供していきたいですね。
2014.02.02