心を掴んで揺さぶるエンターテイメントを。 諦めた役者の夢と、プロデューサーへの転身。

テレビ東京にて新規事業開発に取り組む鶴岡さん。ミュージカルを見た衝撃から役者を目指した大学時代。役者を諦めて自らの進路に悩んでいた時に見つけた、プロデューサーという働き方。「世の中に衝撃を与えるエンターテイメントを作りたい」と語る背景にはどんな思いがあるのでしょうか?

鶴岡 洋志

つるおか ひろし|人の心を掴んで揺れ動かす
株式会社テレビ東京コミュニケーションズ・株式会社テレビ東京コンテンツビジネス局を兼務し、新規事業開発に取り組む。

人の心を掴んで揺れ動かすことをしたい


千葉県松戸市に生まれました。子どもの頃から親の影響を強く受けて育ちました。両親の影響で、ロックバンドや映画、アニメといったサブカルチャーにハマりましたし、野球・サッカー・格闘技を中心にスポーツも好きになりました。両親が薬剤師で、理系の分野にも興味を持つようになりました。

中学卒業後は、両親に薦められた高校に進学しました。「自主自律」を掲げる学校で、他の学校に比べて、圧倒的に自由な校風でしたね。制服はなく私服で、学校の行事を開催するかどうかも生徒に任せるような学校でした。中学からバスケを始めて、高校生になってからは特に打ち込み毎日練習に明け暮れる日々でしたね。1・2年生の間はほとんどの時間を部活に費やしていました。勉強は物理が好きで、将来は大学に進学して、機械工学などを専攻したいと考えていました。

イベントごとに打ち込むタイプで、高3の時は文化祭委員でした。文化祭では、うちのクラスは学校の伝統で演劇をしました。演目を考えているうちに、『シンデレラストーリー』というミュージカルを見つけました。ミュージカルは、昔から好きだったのですが、比較的大人向きの作品が多いんです。シンデレラストーリーの脚本を読んでみると、圧倒的にポップでした。笑って感動して、とにかく最高で、子どもから大人まで楽しめる「THE エンターテイメント」という印象でしたね。実際に、DVDでシンデレラストーリーの公演を観てみると、「こんな世界があるんだ」と衝撃をうけました。

シンデレラストーリーをクラスの演目に決めて、主演をしながら、文化祭委員としてクラス全体の指揮も執り、小道具から照明まで全てに関わりました。クラスがかつてないほど団結し、ものづくりを通じて最高の環境を作れた感覚がありました。実際に文化祭で発表した際の手応えはもちろん、チームの一体感が出来たことに本当にやりがいを感じましたね。

文化祭の成功体験が後押しになり、文化祭を終えた頃から、役者という仕事について考え始めるようになりました。シンデレラストーリーの公演をDVDで見た時に、最後の観客のスタンディングオベーションに感動しました。演者さんがうらやましく、「こういう仕事ができたらいいな」と強烈に感じました。便利になります、効率的になります、ではなくて、人の心を掴んで揺れ動かすことを自分はしたい。そう思いました。

日大芸術学部(日芸)の受験なども考えたのですが、両親と相談し、今までやってきた理系の勉強を活かしつつ、新しいことに挑戦しようと考え、成蹊大学の理工学部に進学することに決めました。「大学では演劇に挑戦しよう、そして大成してやる」。そう思っていました。

大学と役者を両立する日々、悔しさとの葛藤


大学生活はとにかく忙しかったですね。授業や研究、大学の演劇部や小劇団の稽古に、さらにアルバイトで、毎日深夜に帰宅して朝5時に起きて大学に行くという生活でした。自由な校風で同級生が積極的に夢を語っていた高校に比べて、大学は刺激が少なく感じられて、「このまま留まっていたらダメだ」という危機感から、がむしゃらに動き回る日々を過ごしました。

役者として大成するための道は非常に不明瞭で、「どうしたらいいのか」という悩みはずっとありました。舞台俳優として生きていきたいと思い、劇団で活動をしていても、自分の実力に対する悔しさや活動環境に対する不満を感じる日々が続きましたね。演技することにやりがいを感じながらも、成功の道筋が見えてこない。「舞台で食べていくのは大変だ、映像でないと食べていけない」「マネジメントがいないとダメだから事務所に入ったほうがいい」といったアドバイスを受けたこともあり、大学4年生からは事務所に所属していました。

将来の進路については葛藤がありましたね。このまま卒業してフリーターをしながら役者をするか、就職活動をして企業に勤めるか。悩んだ結果、大学院に進学することに決めました。理系で研究が好きだったこともありますが、自分の挑戦の期間を延ばしたかったんです。

役者、研究、就職活動の先に見えたもの


大学院では理工学系の研究をしつつ、役者の活動を並行して進めていました。そんな生活を続けていると、二足のわらじではダメなんじゃないかという危機感も抱き始めます。日中、自分は研究室にいなければいけない。世の中には一日中芝居に打ち込んでいる人もいる。安全策をとりながら芝居を続ける自分は、この世界で生きていけない。

現実的な考えから就職活動を始めましたが、メーカーのエンジニア職や研究職は全て落ちました。自分でも分かるんです。面接の最初の数分で、「ああダメだな」と。大学時代に何をやってきたのか聞かれて、役者の話をしても1ミリも響かない。派手な業界に慣れている人が地味な仕事をできるのか、と懸念されることもありました。自分自身がそういった仕事に魅力を感じていないことにも気づかされましたね。

途中からダメもとでテレビなどのエンタメ業界に方向転換したのですが、選考を受けていく中で、「やっぱり自分はこっちだな」と感じました。エンターテイメントの業界にいないと自分はダメだ、と。ただ、エンタメ業界でやっていく自信は、正直ありませんでした。絵コンテも脚本もかけず、特別なスキルはない。ただでさえ狭き門なので、そもそも選考に通るかどうか、不安を感じていました。

そんな中で、あるメディア系の会社で働く先輩から、プロデューサーとしてお客さんやチームを動かす仕事をしているという話を聞き、「ああ、これだ!」と思いました。高校の文化祭で携わっていたような全体を統括する「プロデューサー」という立ち位置であれば、自分もエンターテイメントの業界で活躍できるかもしれないと感じましたね。自信を得て、選考に受かり、ご縁があったテレビ東京ブロードバンド(現:テレビ東京コミュニケーションズ)という、インターネット事業を扱うテレビ東京のグループ会社に入社が決まりました。

世の中に衝撃を与えるエンターテイメントを


入社後、最初は、テレビ番組に関連するモバイルサイトやECサイトの企画・運営に携わりました。正直、実際の仕事は、入社する前に抱いていたイメージと、全く違いましたね。テレビ番組をつくったり、番組起点のビジネス全体の「プロデュース」に携わったりすることは出来ず、自分の担当領域はあくまでも番組関連のデジタルコンテンツのみ。「どこにいけば面白いことができるんだろう?」と摸索していました。自分の担当する限られた範囲の中で、色々な企画を考えて提案し、何かを生み出すことに関われるよう、できることを続けました。

そうする中で、参加した社内公募のプロジェクトで、自分が提案した他社との共同事業の企画を立ち上げることができました。企画書を書いて、パートナー候補の企業にひたすら提案をして、協業の条件や契約を調整して、社内での決裁を通して。事業を立ち上げる工程では、クオリティ管理、ロードMAP作成、社内でのチーム編成などなど、事業全体の調整をして。地道な作業の繰り返しでしたが、自分がいる環境の中での「プロデュース」のやり方が分かったような気がしました。さらに、このプロジェクトをキッカケに、新規事業の担当になり、どんどん仕事のやりがいが増していきました。

現在は、テレビ東京コミュニケーションズとテレビ東京本体のコンテンツビジネス局を兼任し、新規事業を作ることをミッションに仕事をしています。就活生向けのサービスを作ったり、テレビ放送も含めたアイドル関連の事業を企画したり、他社と協業しながら、幅広い領域で事業を企画しています。

私がやっているのは、事業プロデューサーという肩書きで、プロジェクト全体を調整する仕事。自分の頭で考えて引き出しをたくさん作る努力をもちろんしていますが、ただ机に座って書いた企画書は面白くないので、色々な人と直接会って話すことを、大切にしています。たくさんの人と話をしていると、パズルのピースがはまる時があるんです。これまで触れてきたエンターテイメントや役者の経験が仕事のアイデアに繋がることも多く、充実感がありますね。

単なるビジネスではなく、飽くまでもエンターテイメントの領域にい続けたい。面白いものを世に出して、たくさんの人の心を動かしたいというのが働くモチベーションです。

私には、芸術的なセンスはありません。絵や演技と行った何か制作物を作れるわけではありません。ただ、仲間がいればそれができる。今後も全体をプロデュースする立ち位置で価値を発揮していきます。

将来は、世の中に衝撃を与えるようなエンターテイメントを生み出して、爪痕を残したいですね。これからも全力投球を続けていきます。

2016.01.26

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