そんな大学生活を過ごしていたある時、2001年の獅子座流星群、2002年のペルセウス流星群と、続けて流星群が地球に接近する機会がありました。そこで、最初は同じ天文学科の同級生と千葉で、翌年は高校の友達と地元鳥取に星を見に行ったんです。

実は天文学科に進みながらも、物理学への関心から入っているので、星座などについては全く知識もなく、星を見に行くのも初めての経験でした。しかし、実際に見てみると、すごく綺麗に見えたこともあり、とても感動しました。「うわー!」としか言いようが無い感覚でした。

そこで、興味本位から、天文学科の友人に流星群の仕組みを聞いてみると、宇宙空間にある数ミリから数センチ程度のチリの粒が地球の大気に飛び込み、激しく衝突することで気化して光を放つという説明をされたんです。その話を聞いて、「チリが原因なら、人工的にできるんじゃないの」と感じました。人工で流れ星を流せるなんてすごく面白い、やってみたいと。そんな風に盛り上がりつつも、そのままなんとなく話は妄想で終わってしまい、自分の中にとどめることになりました。

その後、天文学を研究しながらビジネスをしてという居心地の良さから、大学院の博士課程までは迷い無く進学したものの、そこまでいくと、やはり研究者に対する諦めの気持ちは強くなっていきました。かといって、就職についても具体的なイメージは持てていなかったのですが、知人からゴールドマン・サックスが人を募集しているという話を聞き、次第に関心を持つようになりました。

私が興味を持ったのは、戦略投資部という部署で、一般には「ハゲタカ」としても知られているものの、実際は様々な会社に投資をし、役員として中に入ることもしながら事業を立て直す仕事でした。元々、3年くらい働いて貯金を資本にして、何か理系の題材で実業をしたと考えており、さらには、その実業で成した資本をもとに、長期的には研究者向けのファンドを作りたいという思いがありました。そのため、ここにいたら起業するのにも、ファンドを作るのにも役に立つという手応えがあったんです。

そんな背景から、28歳のタイミングでゴールドマン・サックスへの就職を決めました。