本音で話してみませんか?僕が「心で繋がる世界」を目指す理由

「人の心と心が繋がるような世界」というビジョンを掲げ、様々な人があるテーマについて意見を語り合う「内省カフェ」という対話の場を運営するたけさん。企業に勤めながら、パラレルキャリアとして活動を行う目的は、「悲しいことを減らすため」と語っています。その背景にはどんな思いがあるのか、お話を伺いました。

たけ つぐとし

たけ つぐとし|「内省カフェ」運営
企業で働く傍ら、パラレルキャリアとして、様々な人があるテーマについて意見を語り合う
「内省カフェ」という対話の場を運営する。

内省カフェ

お客さんは喜ばないんじゃないか


小学生の頃からゲームが好きでした。
当時はファミコンばかりしていた気がします。

そんな背景もあり、コンピューターに馴染みがあり、
高校生頃からプログラミングに関心を持ち始めたんですよね。
ゲームを嫌いになってしまうのは嫌だったので、仕事にしようとは思いませんでしたが、
開発ができればなんだか儲けられるんじゃないかという、漠然とした思いがありましたね。

当時はあまりしっかり将来のことは考えていなかった気がします。

大学は理系に進学し、実際にプログラミングを学び、
法人用のシステムを作るプログラマーとして就職することに決めました。

最初は仕事に慣れるため、きれいなコードを書けるように努力していたのですが、
仕事を続けるうちに、コードの書き方を追求しても、
使ってくれるお客さんは喜ばないんじゃないかと思うようになったんです。

アートのようなプログラミングを目指すことは、役に立つことと違うんじゃないかと思ったんですよね。

そう考えるうちに、開発の世界だけ見ていてはいけないと思うようになり、
より現場に近い、システム営業の職種に転職することに決めました。

現場では何が起こっているんだろう?


システム営業に携わるようになってからは、取引先と直接コミュニケーションをとり、
顧客の課題の解決に繋がるようなシステムを提供できるよう、必死に努力しました。

ところが、ある時、物流関係の顧客の案件を担当した際に、
実際に納品したシステムを利用してもらうドライバーの方から、
そのシステムの機能について、

俺たちは計算が嫌いだからドライバーやってんだよ

と言われたんです。

僕たちが作っているシステムは、実際に使ってもらう現場の方にとって、
使いやすいものではなかったんですよ。
喜んでるのはマネジメント側だけだったんですよね。

求められていると思っていたものを作っていたのが、またギャップがあることに気付かされました。
その出来事をキッカケに、「現場では何が起こっているんだろう?」と疑問に思うようになったんです。

そんな折、偶然知り合いの方に食品物流の会社を紹介してもらいました。
それまでの仕事だったシステム関係とは全く関係がない領域だったので、
ためらいもありました。

でも、自ら感じたギャップを埋めるため、現場を自分の目で見てみたかったんです。
僕は、2回目の転職をすることを決めました。

結果、生まれたのは悲しみだった


転職してからは、食品物流のオペレーション部門に所属し、
仲卸業者として、工場から仕入れ、コンビニ等の小売りへ卸すまで、
工程全体の需給管理を行っていました。

当時は扱っていたある商品がかなり人気で、前年比1.5倍の売上が続いていたことがありました。
在庫を切らさないよう、工場への要求がどんどん増していったんですよね。
買い手側の方がパワーバランスが強かったこともあり、
ついには工場の生産ラインを夜も動かすことになりました。
なんとか供給を追いつかせようと必死だったんです。

そんな調整に身を削っていたある日、
朝、取引先から電話がかかってきました。確か、4時50分頃、早朝のことでした。
電話から聞こえた第一声は、

「事故が起きました」

でした。
話を聞いてみると、工場で夜も働く中で、機械を止めずに作業をしたことが原因で、
事故につながったとのことでした。

「やっぱり、こんなに働いたら人間無理だよな」

というのが、すごく正直な感想でした。
乾いた雑巾からコップ一杯の水を絞り出すような仕事に、

「本当にこれでいいのか?」

と思うようになったんです。
皆、それぞれの責務のため、最善を尽くそうとしていたのに、
その結果生まれたのは悲しみだったんですよ。

心と心が繋がる世界


それからは、自分が当事者として感じたような悲しみを、
なんとか減らすことができないか考えるようになりました。

色々な仕事に携わる中で見えて来たのは、皆、部分最適で動いているということでした。

だからこそ、正しいと思ってしていた行動が、負の結果につながってしまっていたんです。

ちょうどそんな風に考えるようになった頃、新聞で「対話の場」という、
あるテーマについて異なる背景を持つ人と話すことで、色々な意見を知り、気づきや共感を得るような取り組みを知りました。

記事を読んで関心を持った僕は、実際に参加してみることにしたんです。

「これは広まっていった方がいい」

それが、参加してみての感想でした。
本音で腹を割って話すことで、相手を知り、認め、共感を生んでいくような場は、
すごく意味があるものだと感じたんです。

そんな感動を得た僕は、自分でも対話の場を開くようになりました。
この分野を耕していきたいと思ったんですよね。

今は企業で働く傍ら、パラレルキャリアとして、「内省カフェ」という形で対話の場を運営しています。

まずは場作りですが、将来は、異なる利害を取り持ち、「合意形成」できるような、
インテグレーティブ・シンキング(統合思考)を持った人を養成していきたいと考えています。
色々な会社にそういう人が増えていったら、より良い社会になるんじゃないかと思うんです。

問題を0にすることは、残念ながら難しいと思います。
でも、少なくするためにできることがあると思うんですよね。

「人の心と心が繋がるような世界」にできたら、と思うんです。

2014.05.02

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