スキルの学習を通じて、仕事に楽しさと誇りを。人生を楽しむために決めた、弁護士からの起業。

仕事に誇りを持ち、仕事を楽しむ人を増やすため、プロフェッショナルなスキルとしての「資格」のオンライン学習サービスを運営する鬼頭さん。学生時代に進路について悩みながらも、必死の勉強を経て司法試験に合格。弁護士として独立を目指していた鬼頭さんが、起業に至った背景とは?

鬼頭 政人

きとう まさと|オンライン資格勉強サービス運営
人気の資格講師の授業動画を、スマホやタブレット等のオンラインで、従来よりも圧倒的低価格で受けられる「資格スクエア」を運営する株式会社サイトビジットの代表取締役を務める。

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将来の進路を考える中で生まれた違和感


私は東京都大田区に生まれました。小さい頃からマイペースな性格で、公文や習字などの習い事を始めても、通い続けるのが苦痛で続かないようなタイプでした。一方、勉強自体は好きだったこともあり、小学4年生で試しに受けてみた塾のテストで非常に良い成績を残すことが出来、親から中学受験を薦められ、進学塾に通い始めることになったんです。学校の集団授業は苦手でしたが、地元の塾は個別指導で、先生とのうまもあっていたので、前向きに勉強をするようになりました。

そして、途中からは別の塾の「開成特別コース」に通っていたのですが、本当にものすごく頭の良い学生の集まりで、問題を見ている途中に解けてしまうような天才がいたんです。「こいつらやばいな」と、次元の違いに衝撃を受けましたね。結局、そのコースにいた30人は100%合格し、私も開成中学に進学することに決まりました。

その後、中高と将来を考えるようになると、漠然とですが、サラリーマンにはなりたくないという感覚がありました。元々、父親がある会社でサラリーマンだったのですが、突然解任になった姿を見て、「すごく仕事を頑張っていたのに、そんな仕打ちなのか」と感じてしまったんです。自分自身マイペースな性格だったこともあり、自分でコントロールできる仕事に就きたいという思いもありました。

親からは医者になればと言われることもありましたが、なんだか違和感がありましたね。4分の1が医者を目指すような学校だったこともあり、「成績が良いから医者になるの?」という疑問があったんです。皆一様に同じものを目指すのではなく、それぞれが自分の持っている力を分散して発揮した方がいいし、少なくとも自分が力を活かす場所は医者じゃないという感覚がありました。そして、大きい仕事をしたい・世界を股にかけて働きたいという思いから、外務省に行こうと考え、東京大学法学部への進学を決めました。

しかし、大学では全く勉強をせず、部活でボートに打ち込む日々を過ごしました。最初はテニスサークルにでも入ろうと思ったのですが、空気に馴染めず、人生で一回くらいスポーツに打ち込んでみるのもいいかなと思い、入部を決めたんです。いざ練習を始めてみると本当に辛く、100回以上辞めたいと思うことになりましたが。

また、部活の先輩の話を聞く中で、将来の進路への考え方が再び変わっていきました。思ったよりも日本のためにという感覚が薄く、これはちょっと違うなと感じてしまったんです。結局、引退まで部活に没頭したことで、法学部に入りながらも法律のことが全然分からない状況だったため、何か目標を持って勉強しようと弁護士を目指すことに決めました。正直、自信はありませんでしたが、ちょうどロースクールができたタイミングだったこともあり、やってみようという感覚でした。

ボート部での挫折と司法試験でのリベンジ


司法試験の合格という新しい目標を掲げながらも、部活の引退後は自分にとって空っぽの期間でした。というのも、ボート部ではクルーキャプテンという役職を務めさせてもらい、最後のインカレに向けて練習に打ち込んだのにもかかわらず、成果を出すことができなかったんです。そして、成果が出なかった敗因を自分自身理解していました。途中で自分たちがやっていることを信じられなくなり、迷ってしまった期間があったんですよね。自らが先導し、努力をしながらも成果に繋がらず、本当に強烈な悔しさを感じました。

だからこそ、法科大学院に進んでからはもう二度とあんな思いはしたくないという気持ちで、死ぬ程勉強に打ち込みました。正直、大学受験は学内でこの順位なら合格できるだろうという目安もあったのですが、今回ばかりは本気で取り組まないと落ちることも見えていたので、100%の全力で勉強をしました。費やす時間はもちろん、危機感・焦燥感から、とにかく必死に毎日を過ごしました。

そして、ロースクール2年目で無事司法試験に合格することができたんです。自分にとってはリベンジの意味合いが大きかったので、すごく嬉しかったですね。その後、福岡での司法修習を経て、東京の石井法律事務所という事務所で働き始めました。将来は自ら独立して事務所を持ちたいと考えていたので、中規模事務所で勉強をしたいという気持ちからの選択でした。

実際に弁護士として働き始めると、すごく自分に向いている仕事だなと感じましたね。文章を書くのも人と会うのも好きだったため、充実した感覚で打ち込むことができ、特に、ビジネス分野への関心があったため、民事再生等の案件に携わることが増えていきました。

29歳、新たな挑戦のために産業革新機構へ


弁護士として3年程働いたある時、同期で弁護士になりながら、産業革新機構という官民出資の投資ファンドに転職した友人から、今中途の採用をやっているから話を聞いてみないかと声をかけてもらったんです。弁護士の仕事が充実していたこともあり、最初は断ったのですが、家に帰って産業革新機構について調べてみると、「日本発の技術を世界に羽ばたかせる」というコンセプトに興味を抱くようになりました。ちょうど、リーマンショックの後で日本に元気が無かったこともあり、日本のためにという投資のスタンスにも惹かれる部分もありました。

そこで、ここに行ったら面白い仕事ができるかもしれないという期待のもと、投資やM&Aの経験は全く無いことへの不安を抱えながらも、面接を受けてみることにしたんです。すると、結果的になんとか内定をいただくことができ、29歳のタイミングで転職をすることに決めました。お世話になった事務所を辞める時は、申し訳なさすぎて泣きはらしましたが、産業革新機構は解散前提の時限組織であるため、短い期間でスキルを身につけて、弁護士として独立をしようと考えていました。そうすれば、最高のアドバイザーになれると。

そんな思いで飛び込んだ転職でしたが、始めは劣等感の塊でしたね。Wordしか使ったことがないような状態だったので、Power PointもExcelもさっぱり。「何も出来ないな俺」と思いながら、周りに助けられてなんとか仕事を進めていきました。

また、実際に投資業務に携わるようになってからは、投資判断・評価の難しさを痛感しました。私自身、事業運営も研究開発もしたことが無いので判断が難しく、最終的には経営者任せだなという感覚でしたね。その分、経営者はすごいなという尊敬の念は深まっていきました。

世の中へのインパクトの大きさで決めた、32歳の起業


事業投資の仕事を通じて同世代の経営者に会う機会が増えていくと、経営者の魅力をより強く感じるようになるとともに、「こいつらには負けたくないな」という負けん気のような感覚も抱くようになりました。それほど、組織の一員と経営者は全く違ったんです。

次第に、自ら独立して弁護士になるか、ビジネスを起こすか迷うようになり、最終的にはビジネスの方が世の中に大きな影響を与えられる感覚があったので、自ら起業することに決めました。32歳、結婚をして子どももいたので、正直、お金の不安はありました。ただ、嫁の存在も大きく、挑戦に踏み切る覚悟が決まりました。

そして、自ら立ち上げる事業の条件として、人のためになり、自分が得意で市場のトレンドとも合っている分野に挑戦しようと考えた結果、資格試験に注目するようになりました。もともと勉強が得意で私自身司法試験を経験していることに加え、市場は非常に旧態的で、改革の余地が大きく残っていると感じたんです。

また、資格試験の勉強をし易くしたり、試験を受けやすくすることは自分の経験と重ねても意味があることだと感じられました。私自身試験勉強の費用には悩みましたし、プロフェッショナルなスキルを身につけ易くなることは、優秀層が医者ばかり目指してしまう歪みの解決にも繋がるんじゃないかという感覚もありました。

そこで、株式会社サイトビジットを立ち上げ、人気の資格講師の授業動画を、スマホやタブレット等のオンラインで、従来よりも圧倒的低価格で受けられる「資格スクエア」というサービスをリリースしました。

最初は全てが新しいことだらけで、HTMLもSEOも知らないところからのスタート。一人で創業したこともあり、仲間集めにも非常に苦しみました。何も無い段階で人を集めることの難しさを痛感しながらも、紹介等を通じて徐々に人が増えていき、事業自体も少しずつ軌道にのっていきました。

プロフェッショナルなスキルで仕事を楽しみ、人生を楽しむ


サービスリリース以降、30代・40代の時間が無い社会人の方を中心に利用いていただいており、PCやスマートフォンを用いて仕事の後や電車の中で勉強をしている方もいらっしゃいます。実際に、行政書士や弁理士等の資格で合格者も出ており、少しずつ手応えも感じています。現在対応しているのは22種類の資格ですが、今後はこの幅を広げるのはもちろん、BtoB領域や海外にも展開していこうと考えています。

また、「勉強のやり方」の方程式を作ることにも力を入れています。資格であろうとなかろうと、学びの過程で勉強のできる人が無意識下に行っていることを体系化し、脳化学の分野からのアプローチも含めてシステム化していこうと考えているんです。

ただ、飽くまで対象としては、趣味ではなく、仕事につながるスキルを提供したいという思いが念頭にあります。プロフェッショナルなスキルがあることは仕事を楽しくすることに繋がるし、矜持(きょうじ)とでも呼ぶような仕事へのプライドを持つ人が増えることで、世の中に大きなインパクトをもたらすことができればと考えているんです。

あとは、私自身、非常にシンプルですが、人生を楽しみたいという気持ちが強いですね。正直、ボート部で迷ってしまったときは、ある種の悲壮感を抱いてしまったときもありました。でも全体としては満足いく大学生活を送れたしすごく楽しかった。そして、司法試験の勉強も、辛かったけれど楽しんで勉強できたことがよかったようにも思います。私にとっての「楽しい」は成長することなので、事業の成長も子どもの成長も私自身の成長も、全て追いかけて人生を楽しくしていきたいですね。

2015.08.12

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