世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける。エンジニアとして社会で表現したいこと。

「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションを掲げ、ニュースアプリの開発・運営を行う、スマートニュース株式会社代表取締役の浜本さん。ゲーム好きの小学生時代に出会ったプログラミングは、人生にどんな影響を与えたのか?お話を伺いました。

浜本 階生

はまもと かいせい|ニュースアプリ「SmartNews」の開発
SmartNewsの開発・運営を行うスマートニュース株式会社の代表取締役社長共同CEOを務める。
【採用募集中】エンジニア、広告営業など、仲間を募集中です。

社会に対する自己表現としてプログラミングに熱中していく


私は栃木県宇都宮市で生まれました。内向的な性格で、自分が何を考えているかを人に伝えることが苦手でした。外でハツラツと遊ぶ子どもではなく、テレビゲームが大好きで、どうやって動いているのか興味を持ち、自らゲームブックやカードゲームを作ったりもしていましたね。

そして、小学3年生の時にプログラミングと初めて出会い、中学生になってからは技術の教科書を見て、自分でもコードを書くようになったんです。休み時間も放課後もパソコン室にこもっていました。

ゲームを作ってみんなに遊んでもらうと、プログラミングが持つ表現手段としての可能性の大きさを実感しましたね。自分で音楽を作り、グラフィックを描き、シナリオを構成し、それらをプログラムで結んでいくことで、ゲームという小さな世界の中であるものの、自分が思った通りの表現をすることができたんです。

また、表現したものが、周囲にインパクトを生んでいくのも印象的でした。プログラムは簡単にコピーできるので、気づけば学校中のパソコンに私が作ったゲームがインストールされ、休み時間になるとみんなが遊んでいたんです。今まで自己表現することが苦手だった私にとっては、強烈な体験でしたね。

プログラミングコンテストにも出るようになり、高校生になると、ゲームだけでなく、パソコンを便利に使うためのユーティリティツールも作るようになりました。プログラムをインターネット上で公開すると、数千、数万とダウンロードされ、その伝播力には驚きました。

そして、将来もプログラムでもの作りをしたいと考え、東京工業大学の情報工学科に進学しました。

仕事としてプログラミングに取り組むことで、自分の実力を知る


ただ、大学に入ってからは、プログラミングへの熱意は、中高生時代と比べて相対的に下がっていました。正直、それまで身につけたスキルがあれば、授業での課題は簡単にできてしまったんです。そのため、サークル活動など、他のことに目が向くようになっていきました。

また、将来に関しても、「プログラムができれば困らないだろう」と、あまり深く考えていませんでした。そして、アルバイト先だったソフトウェア開発会社で社員にならないかと誘われ、就職活動も大学院進学もしなくていいのは楽だと考え、就職することにしたんです。

ところが、正社員の仕事となると、それまでとは勝手が大きく違いました。システムが確実に動作する保証をしなければならないし、お客さんとの間にも責任が生まれるのです。

そして、技術的な意思決定をしようとしても、私は何も判断できませんでした。これまで自己流でプログラムを書いてきたため、基礎や本質の部分を体系的に理解しておらず、判断軸を持ち合わせていなかったんです。この時、自分の技術力の低さを実感しました。

さらに、大学を卒業する頃にはWebサービスが世の中の主流になっていたのですが、私はWebの知識はほとんどゼロでした。かなり焦りましたね。そこで、仕事以外の時間も使い、Web技術を独学で勉強していきました。

次第に、勉強した技術のアウトプットとして、Webサービスを世に出すようになりました。すると、自分で作ったものが周りに波及していく中高生時代の感覚を思い出し、やはり自分はプロダクトを作るのが好きだと気づきました。

自分のプロダクトで社会に価値を生み出すため独立を決意


その後も、仕事のかたわら、レストラン検索サービスの「EatSpot(イートスポット)」や、ブログを3Dで都市のように見立てて視覚化する「Blogopolis(ブロゴポリス)」などをリリースしていきました。評価もしてもらえ、様々なコンテストで賞をいただくようにもなりました。

次第に人脈も広がっていき、クックパッドの勉強会にスピーカーとして呼ばれることがありました。すると、懇親会の時に創業者の佐野陽光さんから、「自分の力でもっと面白いことをしようよ」と言ってもらえたんです。

元々、自分の手で何かを作って、世の中に価値を生みたいと思っていたので、佐野さんの言葉に後押しをされて、会社を辞めることを決めました。

そして、フリーランスエンジニアとなり、受託開発などを行いながら、自分のアイデアを固めていきました。これまで作ってきたサービスは、Web上の情報を収集・整理して、自分が使いやすい形で検索したり可視化するもの。そのアプローチの延長線上に何かがあると考え、技術開発を進めていきました。

また、具体的にどんなサービスを立ち上げるか、ビジネスパートナーである鈴木健と一緒に考えていきました。彼とは数年前に知り合い、その後も定期的に、私の考えるサービスにアドバイスをもらっていたんです。

そして、2人で試行錯誤や話し合いを重ねた結果、ソーシャルグラフを活用して情報の信頼性を指標化し、パーソナライズした「その人にとって良質な情報」を届けるためのニュースサービス「Crowsnest(クロウズネスト)」を立ち上げました。

失敗から導き出された3つの方針転換


しかし、Crowsnestは思うようにユーザー数が伸びませんでした。パーソナライズのコンセプトはユーザに伝わりにくく、毎日改善を加えても、成果は出ませんでした。そこで、サービス開始から半年程経った2012年3月、一縷の望みをかけて、アメリカ・テキサス州で行われるイベント「SXSW(South by Southwest)」にCrowsnestを出展しました。

しかし、結果は無残なもので、方針を大きく見直さなければならないことは明らかでした。そこで、2人で相談し、これまで作り上げてきた基盤技術は活かしつつ、大きく3つの方針を転換することに決めました。

1つ目は、パーソナライズよりも、情報の「発見」に重きを置くこと。2つ目は、パソコンではなくスマートフォンの世界にフォーカスすること。そして3つ目は、Webブラウザではなく、アプリに特化することでした。

そして2012年12月、スマートフォンアプリの「SmartNews(スマートニュース)」を正式にリリースしました。想像していた以上にダウンロード数は伸びていき、Crowsnestで半年間かけて積み上げた数字を、なんと1日で抜いてしまったんです。

良質な情報とは何か、考え続ける


その後も順調にサービスは成長していき、今では日米を中心として1,200万人以上の方にSmartNewsを利用いただいています。また、多くの媒体社とも良好な関係を築くことができています。

しかし、私たちのミッションである「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」の達成には、まだ遠いと感じています。

このミッションを達成するためには、そもそも「良質な情報」とは何か、その定義から始めなければなりません。これは難しい問題です。例えば保守派の人にとって、リベラルな主張は「質が低い」と感じるかもしれません。でも、その人に対してリベラルな立場に基づく情報が届かなければ、情報の「たこつぼ化」が発生してしまいます。

こうした問題を解く役割を果たすのは、人手の編集による取捨選択ではなく、アルゴリズムの力だと考えています。したがって、アルゴリズムを作るエンジニアには、強い倫理観が求められます。SmartNewsでは、エンジニアが社員の50%を超えていますが、メディアやジャーナリズムに関わってきたメンバーも多く、様々な視点から「良質な情報とは何か」を考え続けています。

現在はまだ、SmartNewsがジャーナリズムやニュースの定義を変えるようなレベルには到達していません。それを実現するには、もっと技術力が必要ですので、もっと多くの仲間を増やしていきたいですね。SmartNewsのプロダクトを通じて、世の中に大きな価値を生んでいけたらと思います。

2015.08.07

ライフストーリーをさがす
fbtw

お気に入りを利用するにはログインしてください

another life.にログイン(無料)すると、お気に入りの記事を保存して、マイページからいつでも見ることができます。

※携帯電話キャリアのアドレスの場合メールが届かない場合がございます

感想メッセージはanother life.編集部で確認いたします。掲載者の方に内容をお伝えする場合もございます。誹謗中傷や営業、勧誘、個人への問い合わせ等はお送りいたしませんのでご了承ください。また、返信をお約束するものでもございません。

共感や応援の気持ちをSNSでシェアしませんか?