面白いことを世の中に発信していく！女子サッカーに燃え尽きた私の次なる挑戦。
フリーのライターとしてWEBメディアで執筆や編集、企画等を行う八木さん。学生時代は女子サッカーに打ち込み、二度の全国制覇も経験。なでしこリーグからのオファーもありました。そんな八木さんが就職、そしてフリーランサーになるには、どんなきっかけがあったのか？お話を伺いました。
八木 彩香
やぎ あやか|面白いことを記事として発信する
フリーライターとして、WEBメディアでの執筆や企画、編集に携わる。
女子サッカーにのめり込んでいく
私は東京の吉祥寺で三姉妹の末っ子として生まれました。勉強や自分の容姿で勝負するタイプだった姉たちとは対照的に、私は小さな頃から運動が得意でした。幼稚園生くらいの頃から空中逆上がりをするほどでしたね。そのため、スポーツも、何をやってもすぐにできてしまいました。
しかし、サッカーだけはそうはいきませんでした。手ではなく足を使うので、努力しなければ上手くならなかったんです。そして、サッカーの上手な男友達に誘われ、小学４年生の時からサッカーチームに入りました。
すると、すぐに熱中するようになり、中学生になってからも地元の女子サッカーチームに入ることにしました。正直、それまで男子に混ざってプレーしていたし、１０番をつけるほどの実力だったので、女子の中では負ける気がしませんでしたね。
ところが、実際に練習をしてみると、周りのレベルが高過ぎて全く通用しなかったんです。その現実にショックを受け、練習に行かなくなってしまいました。
ただ、しばらくすると、活躍できていない自分、練習をサボっている自分がすごく嫌で、自分を好きになるためには練習するしかないと気づいたんです。そして、練習に参加するようになり、徐々に試合にも出られるようになり、レギュラーとして全国大会にも出場できました。
高校も推薦で進学し、女子サッカーの名門だった十文字高校に通うことにしました。毎日サッカーに明け暮れる日々で、授業中は先生の話は聞かずに寝てばかりでしたね。ただ、負けず嫌いだったので勉強もしていて、授業を聞かないわりには常に成績は良く、先生からしたら嫌な生徒だったと思います。
全国大会で３位まで進み、U-１７の日本代表候補選手にも呼ばれ、サッカーでの結果も出していました。そして将来は、なでしこリーグでプレーしたいと思いながら、早稲田大学のスポーツ科学部に進学してサッカー部に入りました。
見えてしまった天井と、他の世界への興味
早稲田のサッカー部は強豪で、年代別の代表選手がゴロゴロいるし、各チームでキャプテンを務めていた人も多く、最初はレギュラーにはなれませんでした。それでも、試合に出るチャンスはあり、そこから徐々に実力を発揮していきました。
私のポジションはフォワード。パスをもらう時、自分への期待が不思議と伝わってきます。そして、その期待に応えるように点を決めた瞬間がたまらないんですよね。また、私は目立ちたがりで「面白いプレー」をすることが好きだったので、試合中に「股抜き」できた瞬間も快感でした。そうやって自分で考えて自由に動けることが、サッカーの好きなところでした。
ただ、次第に自分が目指したいのは、なでしこリーグではないと思うようになっていきました。レギュラーとして試合に出るようになった時、なでしこリーグに所属するチームと２回ほど試合をする機会がありました。結果は０−１で２回とも負けてしまいましたが、実際に日本代表のトップ選手たちと戦ったことで、その実力は肌で感じることができました。
この時、サッカーという分野での天井が見えてしまった気がしたんです。私は日本代表選手になるような選手ではありませんでしたが、それでも目指した先にある頂点のレベルに手が届きそうだと感じた時に、もしかしたら、世界にはサッカーよりも面白いことがあるのではないかと。
ただ、とにかく大学ではサッカーをやりきって、進路は４年生の最期の大会の後に考えようと思っていました。また、考える猶予を作ろうと思っていたので、１年留年することも決めていました。
サッカーより面白い世界を目指して就職することに
４年生の１月の引退まで、二度の全国選手権制覇を達成し、最後の大会では全国で準優勝だったものの、悔いなく過ごすことができました。そして、なでしこリーグからオファーをもらっていたのですが、私はやっぱり別の世界に行きたいと思い、辞退することにしました。
将来、指導者になることも考えて教員免許も取っていましたが、教育実習に行った時に、教師も違うと感じていました。ひとりでは４０人の生徒を受け持つのは難しいと思ってしまったんです。
元々、子どもも教えることも好きだったので、一人ひとりの生徒と向き合いたいと考えていました。ただ、実際に子どもたちと向き合い、仲良くなればなるほど負担は増えてしまい、４０人ともなると自分のバランスを崩してしまいます。すると、自分を守るためには生徒と距離を置かざるを得なくなってしまうんです。子どもが好きで教師を目指したはずなのに、それでは本末転倒になってしまうと感じたんです。
そして、就職を考えるようになり、広告業界かテレビ業界で働きたいと思い初めていました。たまたま広告業界で働く先輩から、自分が携わった企画の話や、クライアントと修羅場になった話を聞かせてもらう機会が多くて、みんなとにかく楽しそうに仕事をしているのが印象的だったんです。私の知らないところで何か面白いことが起きているんだと感じ、早く働きたいと思っていました。
また、昔からナイキのテレビCMが大好きだったことも影響していました。CMを見ているだけで呼吸が荒くなるくらい自分の感情をえぐられていて、それくらい面白いものを発信する仕事に興味もあったんです。
全国の舞台で活躍していたサッカーの道を蹴ってまで選んたことなので、もっと面白いことをしていないと過去の自分のがっかりされてしまうとも考えていました。
自分が目指す姿へ成長できないと感じて会社を辞める
ただ、テレビ局や広告代理店では採用されず、インターネット広告を扱う大手企業に就職することになりました。仕事の内容はあまり分かっていなかったのですが、広告を扱っていたし、とにかく早く働いてみたいという気持ちが強かったんです。
就職が決まってから卒業までの間は、自転車で日本一周の旅などしていました。そして、働くことへの期待を胸にして、社会人生活が始まりました。ところが、私がイメージしていた社会人生活とは、少し違う現実が待っていました。楽しそうに仕事をしている人が、思っていたよりも少なかったんです。月曜日には表情が暗くて、金曜日になると明るくなっている人もいて、不思議に感じていました。
また、運良く１ヶ月目には営業でかなりの結果を出してしまいました。ラッキーで結果が出てしまうことにあまり嬉しさを感じなかったし、ここに居続けても成長できない気がしてしまったんです。このままだと、過去の自分にがっかりされてしまうかもしれないと、危機感もありました。
そこで、入社２ヶ月で会社を辞める決意をしました。何をするかはあまり考えていませんでしたが、フリーで働こうと思っていました。企業だと、面白い企画を考えても承認まで時間がかかるし、新しいことはしづらい環境なので。それなら、自分でやりたいと思ったんです。
また、面白いことを発信する仕事がしたいと思っていたので、広告やWEB系の仕事をしたいと考えていました。ただ、私は広告の仕事をしてきたわけでも、デザインやプログラミングができるわけでもなく、唯一できることは、文章を書くことくらいでした。日本一周している時に書いていたブログでは、知らない人からの反響もあったので、多少自信もあったんです。
また、文章だったら、自分が考えたことをすぐに社会に発信でき、フィードバックも返ってくるので、成長に繋がると考えていました。そこで、フリーライターとして活動を始めたんです。
面白いことを社会に発信できる人に
初めはWEBメディアの違いも分からず、キュレーションサイトでのまとめ記事執筆から始めましたが、今では自分で書いた記事の寄稿や、広告代理店が関わるメディアでゴーストライターとしての仕事をしています。また、「TRiPORT（トリポート）」というサイトでは編集長として、企画・編集の仕事もさせてもらっています。
TRiPORTでは、自分たちでメディアとしてのKPIを決めたり、改善の企画を行ったりと、業務の幅も広くてやりがいがあります。個人的には、今後はライターとして執筆をするよりも、企画や編集の仕事を増やしていきたいと考えています。それこそ、ナイキのCMのように、多くの人のインサイトをえぐるような、面白くて大きな仕事をしたいんです。
今は、ありがたいことに仕事を依頼してもらえることも多くありますが、それは、私がまだ若くて、フリーランスで使いやすいから。サッカーで言えば、ディフェンスにつかれていなくてフリーだからパスを出してもらえている状態なんです。だけど、そうじゃなくて、どんな状況でも「八木なら絶対に決めてくれる」と信頼感を持ってパスをもらえるようになりたいと考えています。
そのため、今も出してもらったパスは絶対に外せませんね。期待に応えて「面白い」と思ってもらうことで、少しずつ信頼を作れると思っていますから。「面白い」というのは私の中でテーマで、その表現方法がサッカーから、発信者としてものを書くことに変わっただけなんです。
負けず嫌いな私は、過去の自分にも負けたくないので、成長を続けていきたいと考えています。そして、これからも過去の自分をがっかりさせないように、面白い人生を送ってきたいです。
2015.06.26
